東洋医学の診断法まとめ|脈診・舌診・腹診の基本と経絡治療への応用

経絡治療では、施術の前に体の状態を深く把握するための“診断”が行われます。
西洋医学でいう「検査」にあたるのが、東洋医学では「望・聞・問・切(ぼう・ぶん・もん・せつ)」という4つの診察法です。

なかでも、脈診・舌診・腹診は経絡治療の精度を左右する“核心”といえる技術です。
本記事では、それぞれの診察法の基本的な考え方と、実際にどのように施術方針に活かされるのかをわかりやすく解説します。


東洋医学の4つの診察法「四診」とは?

診察法内容
望診顔色・舌・皮膚・動作など“見る”診断
聞診声の質・呼吸音・体臭など“聞く”診断
問診症状や生活習慣などを“聞き出す”問診
切診脈診・腹診・皮膚の温度など“触れて知る”

脈診とは?|経絡治療の方向性を決定づける技術

脈診(みゃくしん)は、患者の手首にある橈骨動脈の脈を触れて、体の状態を読む方法です。

👇 読み取れる情報:

  • 気血の虚実(不足 or 滞り)
  • 陰陽のバランス
  • 五臓六腑の強弱
  • 体内の冷熱傾向

🪷 よくある脈状の例:

脈名状態意味
濇脈(しょくみゃく)ざらついた脈血の滞り(血瘀)
細脈(さいみゃく)糸のような細い脈血虚・気虚
弦脈(げんみゃく)ピンと張った脈肝気の高ぶり・ストレス
滑脈(かつみゃく)ツルツルした脈胃腸不調・湿邪

👉 本治法では、この脈診結果をもとに補法・瀉法の施術方針を決定します。


舌診とは?|体内の「地図」を見る診断法

舌診は、舌の形・色・苔(こけ)のつき方を見ることで、体内の状態を可視化する診断法です。

👅 見るポイント:

  • 舌全体の色(淡=虚弱、紅=熱)
  • 苔の状態(白苔=寒、黄苔=熱)
  • 舌の形(腫れ=水滞、裂け=陰虚)
  • 舌の動き(震え=気虚、舌尖赤=心火)

📌 舌診は「望診」に分類されますが、脈診と合わせて体質診断の根拠を補強する重要な資料です。


腹診とは?|“おなか”は東洋医学のデータベース

腹診は、お腹を軽く押して、硬さ・冷え・圧痛などを確認する診断法です。
東洋医学では「腹は五臓の鏡」とされており、腹部の反応を見れば、臓腑の虚実や気血の状態がわかるとされています。

🔍 よく見られる腹部の所見:

  • 肋骨下が硬い → 肝気鬱結
  • へその下が冷たい → 腎陽虚
  • みぞおちが張る → 胃気逆・ストレス
  • 下腹部に圧痛 → 血瘀、瘀血

施術前後に行うことで、経絡治療の効果測定としても使える重要な手法です。


診察結果はどう施術に活かされる?

経絡治療では、診断によって以下が明確になります:

  • ✅ どの経絡・臓腑に問題があるか(=施術の「本治法」の基準)
  • ✅ どのツボを選ぶか(本治・標治)
  • ✅ 補法か瀉法か(虚実判断)

つまり、診察は「施術の地図とコンパス」であり、ここがズレていると効果も半減してしまうのです。

▶ 経絡治療全体の流れはこちら → 経絡治療の施術フロー|初診からアフターケアまで解説


まとめ|「見て・聞いて・触れる」ことが東洋医学の診察力

西洋医学では検査値が重視されますが、東洋医学では五感を通じて、体が発しているサインを丁寧に読み取るのが特徴です。

脈診・舌診・腹診は、熟練が求められる技術であると同時に、“今の自分の体の状態”を知る最もシンプルで本質的な方法でもあります。

自分の体の声に耳を傾けたい方にこそ、経絡治療とその診察法の魅力を知っていただきたいと思います。


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