東洋医学の診断や施術の根底には、「陰陽(いんよう)」と「五行(ごぎょう)」という古代中国の哲学的理論があります。
一見難しそうに感じるこれらの理論ですが、実はとてもシンプルで、日常の体調や性格の傾向にも深く関わっているのです。
この記事では、陰陽五行とは何か、そして経絡治療にどう活かされているのかを、初めての方でもわかるようにやさしく解説します。
陰陽とは?|すべてのバランスを形づくる2つのエネルギー
陰陽とは、宇宙や人間を構成する相反する2つの性質を意味します。
陰の性質 | 陽の性質 |
---|---|
冷・静・暗・内側・夜 | 熱・動・明・外側・昼 |
物質・形 | エネルギー・機能 |
女性的 | 男性的 |
この陰陽のバランスが崩れると、体調にも不調が現れます。
例:
- 陽が強すぎる → のぼせ、イライラ、不眠
- 陰が弱すぎる → 乾燥、疲れやすい、のどの渇き
陰陽の不均衡は、本治法の判断材料(虚実補瀉)にもつながる重要な概念です。
五行とは?|体と自然を5つの要素でとらえる
五行説では、万物は「木・火・土・金・水」という5つの性質の相互関係によって成り立っていると考えられます。
🌱 五行の対応表(五臓・季節・感情など)
五行 | 臓腑 | 季節 | 感情 | 色 | 対応経絡 |
---|---|---|---|---|---|
木 | 肝・胆 | 春 | 怒 | 青 | 肝経・胆経 |
火 | 心・小腸 | 夏 | 喜 | 赤 | 心経・小腸経 |
土 | 脾・胃 | 長夏 | 思 | 黄 | 脾経・胃経 |
金 | 肺・大腸 | 秋 | 悲 | 白 | 肺経・大腸経 |
水 | 腎・膀胱 | 冬 | 恐 | 黒 | 腎経・膀胱経 |
この理論により、「感情の偏りが体に影響を与える」「季節の変化で不調が起きる」ことの説明が可能になります。
五行の関係性|相生・相剋とは?
五行はただの分類ではなく、互いに生み出し、抑え合う力関係(相生・相剋)を持ちます。
🔄 相生(そうせい)=助け合う関係
- 木 → 火 → 土 → 金 → 水 → 木(循環)
例:肝(木)は心(火)を助ける → ストレスで心臓に負担がかかることがある
✋ 相剋(そうこく)=制御する関係
- 木は土を剋し、土は水を剋す…
例:肝(木)が脾(土)を剋す → ストレスが続くと胃腸の不調が起きやすい
このバランスの乱れを読み解くことが、経絡治療における体質判断や施術方針決定のカギとなります。
経絡治療における陰陽五行の活用例
📌 ケース①:怒りっぽく、眠れない(肝火上炎)
- 肝(木)の「火」が過剰になり、心(火)に影響 → 不眠・イライラ
- 対処:肝経(太衝)、心経(神門)に瀉法
📌 ケース②:甘いものがやめられず、疲れやすい(脾虚)
- 脾(土)の働きが低下し、食欲・消化力が乱れる
- 対処:足三里・三陰交に補法 → 胃腸機能を整える
▶ 本治法について → 本治法とは?経絡治療で体質を整える鍼灸の根本治療ガイド
陰陽五行を知ることで、自分の体質がわかる
陰陽五行は、単なる古代の哲学ではなく、自分自身の状態や、日常の「なんとなくの不調」を読み解くヒントでもあります。
例えば、
- 春に体調を崩しやすい → 肝のバランスが崩れやすい「木」のタイプ
- 甘いものがやめられない → 脾(土)の弱り
- 寒がり、トイレが近い → 腎(水)のエネルギー不足
こうした傾向を知ることで、セルフケアや養生法もより効果的に行えるようになります。
まとめ|陰陽五行は東洋医学の“体質地図”
陰陽五行の考え方は、東洋医学・経絡治療の基礎であり、体質診断の地図とも言えるものです。
この理論を知ることで、自分の症状に合った鍼灸治療やセルフケアがより納得できるものになります。
「自分の体に合った整え方を知りたい」「根本から体質を改善したい」という方にとって、陰陽五行の理解は第一歩です。
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