「なんとなく不調が続く」「病院では異常がないけどつらい」──そんな悩みを抱える方に注目されているのが、経絡治療(けいらくちりょう)です。
経絡治療とは、東洋医学に基づいた鍼灸治療の一種で、体を巡る“気”の流れ=経絡(けいらく)を整え、体全体のバランスを回復させる根本的な療法です。
この記事では、経絡治療の基本から、本治法・標治法の違い、診断法や施術の流れ、体質改善につながる理由までをわかりやすく解説します。
経絡治療とは?|気の流れを整える東洋医学の鍼灸
東洋医学では、人の体は気・血・水という3つの要素で構成され、それらが「経絡」と呼ばれる通り道を通じて体を巡っています。
この経絡が滞ると、臓腑の働きに乱れが生じ、肩こりや不眠、冷え性など様々な不調が現れます。
経絡治療では、脈診や舌診などで体質やバランスの乱れを診断し、適切なツボに鍼や灸を施して気の流れを整え、自然治癒力を引き出すのが特徴です。
▶ 経絡とは?→ 経絡とツボの基本|十二経脈・奇経八脈をやさしく解説
本治法とは?|体の内側から整える「根本療法」
本治法(ほんちほう)は、経絡治療の中心にある考え方で、「症状の原因」に焦点を当てて施術を行います。
例えば不眠や倦怠感、冷えなどは、単に一時的な問題ではなく、気や血の不足、臓腑の虚実バランスの崩れに起因していることが多くあります。
本治法では、脈診によって体質を見極め、五臓六腑に対応した経穴に鍼を施すことで、体の内側から整えていきます。
▶ 詳しくはこちら → 本治法とは?経絡治療における根本治療の考え方と効果
標治法とは?|今ある不調をピンポイントで緩和
標治法(ひょうちほう)は、肩こりや腰痛など「今まさに感じている不調」に対して、直接ツボを刺激することで即効性を狙う治療法です。
たとえば首や肩のコリには、局所の経絡にある「肩井」「天柱」などのツボに刺鍼し、血流を促し緊張を緩和します。
▶ 詳しくはこちら → 標治法とは?つらい症状にすぐ効く鍼灸の対処法
「標本同治」|本治法と標治法の併用がもたらす効果
経絡治療では、本治法で体質を整えながら、標治法で症状を軽減するという「標本同治(ひょうほんどうち)」のアプローチが基本です。
たとえば、「肩こり+不眠」の場合、標治法で肩の緊張をゆるめつつ、本治法で肝経の弱りを補うような施術が行われます。
▶ 解説記事 → 本治法と標治法の違いと組み合わせ方|標本同治とは?
診断と施術の流れ|経絡治療の施術ステップ
- 問診:ライフスタイル、症状の経緯、体調変化を丁寧にヒアリング
- 診断:脈診・舌診・腹診による体質チェック
- 治療方針決定:本治法・標治法のバランスを設計
- 施術:個々の体質に合わせた経穴に対し鍼灸施術
- アフターケア:生活指導やセルフケアアドバイス
▶ 診断法の詳細 → 東洋医学の診断法まとめ|脈診・舌診・腹診の見方
経絡治療が向いている人とは?
- 慢性疲労・冷え・不眠などが続いている
- 自律神経の乱れが気になる
- 「異常なし」と言われたけど不調がある
- 薬に頼らず、自然な方法で改善したい
- 根本から体質を見直したい
まとめ|経絡治療で“治る力”を呼び覚ます
経絡治療は、単に「症状を取る治療」ではなく、「なぜその症状が起きているのか?」という体の内側からのサインを読み解き、全体のバランスを整える医療です。
本治法と標治法を的確に使い分けることで、つらい症状の緩和と体質改善が同時に進み、日々の生活がより快適なものへと変わっていきます。
不調を“体の声”ととらえ、自然に整える手段として、ぜひ経絡治療を取り入れてみてください。
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