東洋医学では、私たちの体を構成し、健康を支える3つの要素として「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という概念があります。
これらのバランスが保たれているとき、私たちは元気で快適に過ごせます。
しかし、どれかが不足したり、滞ったりすると、「なんとなく不調」や病気の原因になると考えられています。
この記事では、気・血・水それぞれの役割と、経絡治療での診断・施術への応用方法をわかりやすく解説します。
気とは?|生命エネルギーの源
「気」は、東洋医学における生命活動のエネルギーであり、以下のような働きを担っています。
🌬 気の主な役割
- 臓腑の働きを活発にする(推動作用)
- 病気から身を守る(防御作用=衛気)
- 血や水を動かし、循環させる
- 精神活動や意志力の基盤
📉 気の乱れによる症状
状態 | 説明 | 主な症状例 |
---|---|---|
気虚(ききょ) | 気が不足 | 倦怠感、息切れ、風邪をひきやすい |
気滞(きたい) | 気の巡りが悪い | イライラ、腹部膨満感、生理痛 |
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血とは?|全身をめぐる栄養と潤いの源
「血」は、現代でいう“血液”に近い概念ですが、それだけではなく体と心を養う存在です。
🩸 血の主な役割
- 身体各部に栄養と潤いを与える
- 筋肉・皮膚・臓腑を滋養する
- 精神の安定を支える(「血は神の母」)
📉 血の乱れによる症状
状態 | 説明 | 主な症状例 |
---|---|---|
血虚(けっきょ) | 血が不足 | 顔色が悪い、めまい、不眠、生理不順 |
瘀血(おけつ) | 血の流れが悪い | 刺すような痛み、しこり、月経困難症 |
水とは?|体液・リンパ・体の潤滑システム
「水(すい)」とは、血液以外の体液全般(リンパ液・関節液・消化液など)を指すと考えられます。
💧 水の主な役割
- 体を潤す(皮膚・粘膜・内臓)
- 関節の動きをスムーズにする
- 代謝や排泄をサポート
📉 水の乱れによる症状
状態 | 説明 | 主な症状例 |
---|---|---|
水滞(すいたい) | 水が滞っている | むくみ、めまい、痰、下痢 |
津液不足 | 潤いが足りない | 口や目の乾き、便秘、関節のきしみ感 |
経絡治療における活用例|気血水は体質診断の“三本柱”
経絡治療では、問診・脈診・舌診・腹診などを通じて、どの要素が乱れているかを見極め、施術方針を決定します。
📌 例1:気虚タイプの肩こり(40代女性)
- 脈診:細く弱い → 気虚と判断
- 施術:足三里・中脘に補法で気を補う
📌 例2:血瘀タイプの生理痛(30代女性)
- 舌診:暗紅舌+瘀点 → 瘀血あり
- 施術:太衝・血海に瀉法で血の流れを改善
📌 例3:水滞によるめまい(50代男性)
- 問診:朝起きたときにふらつく、むくみやすい
- 施術:陰陵泉・豊隆に瀉法+お灸で水の巡りを良くする
気・血・水タイプ別セルフケアのヒント
タイプ | 意識したい生活習慣 |
---|---|
気虚 | 十分な睡眠、消化にやさしい温かい食事、無理をしない |
気滞 | ストレッチ・深呼吸・アロマなどで気を巡らせる |
血虚 | 鉄分・タンパク質を含む食事、十分な休息 |
瘀血 | 有酸素運動、冷え対策、入浴で血行促進 |
水滞 | 適度な運動、塩分控えめ、水分のとりすぎに注意 |
まとめ|気・血・水のバランスが体と心を支えている
気・血・水の理論は、症状を“体質”という視点から見直すためのカギです。
西洋医学で「異常なし」と言われた不調も、東洋医学では「気虚」「血瘀」「水滞」として明確に捉えられます。
経絡治療では、この3つのバランスを見極めたうえで、鍼灸によって整えていくことで、自然治癒力を最大限に引き出します。
体質に合った施術こそが、本当に再発しない体をつくる近道なのです。
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