「肩こりが取れない」「冷え性がつらい」「眠りが浅い」──そんな慢性的な不調に悩む方に注目されているのが、経絡治療における“本治法(ほんちほう)”です。
これは単なる対症療法ではなく、体の内側から不調の原因に働きかける“根本的な鍼灸治療”であり、東洋医学の理論に基づいて構築された体系的な施術法です。
本記事では、本治法の定義や施術の仕組み、脈診の意味、対応する症状例、そして標治法との違いまでを丁寧に解説します。
本治法とは?|症状の“原因”に働きかける根本アプローチ
本治法は、症状が現れている部位そのものではなく、“なぜそれが起きたのか”という体の全体バランスに注目する治療法です。
経絡治療においては、私たちの体を流れる「気・血・水」が、十二経脈という経絡を通じて全身を巡っています。この流れに乱れが生じると、臓腑の働きが弱まり、様々な不調が起こります。
本治法では、この「流れの乱れ=体質の偏り」を見極め、体の内側から正常な状態へと戻していくことを目的としています。
▶ 経絡治療全体の解説はこちら → 経絡治療とは?本治法と標治法で整える鍼灸の根本療法ガイド
脈診とは?|本治法の柱となる診断法
本治法を行う前には、必ず脈診(みゃくしん)という東洋医学独特の診断法が行われます。患者の手首に指を当てて、脈の速さ・深さ・強さ・リズムを確認し、体内の気血の状態や臓腑の働き、陰陽のバランスを読み取ります。
たとえば、
- 脈が細く弱ければ「気虚(ききょ)」の状態
- 脈が強く跳ねるなら「実証」や「熱」の傾向
- 浅く不規則であれば「気滞(きたい)」や「血瘀(けつお)」
といったように、現れている症状の背後にある“体質のサイン”を把握することが可能です。
▶ 関連記事 → 脈診とは?経絡治療に欠かせない診断技術の基本と見方
ツボの選定と施術法|“補瀉”で気血を整える
脈診で体質を判断したあとは、経絡上にある特定のツボ(経穴)を選定し、鍼で「補瀉(ほしゃ)」を行います。
- 補法(ほほう):気が不足している経絡に、鍼を打ってエネルギーを補う
- 瀉法(しゃほう):気が滞っている経絡に、余分なエネルギーを抜いて流れをよくする
この施術は、ごく浅い刺鍼(触れる程度)で行われることが多く、痛みもほとんどありません。
使用されるツボは、たとえば「太渓」「太衝」「合谷」「三陰交」など体質に応じて決定されます。
本治法が向いている症状例|体質から整えることで改善するケース
本治法は、以下のような“原因のはっきりしにくい慢性不調”に対して、高い効果が期待されています。
- 慢性的な冷え性・むくみ
- 不眠、眠りが浅い
- 慢性疲労、だるさ
- 自律神経の乱れ(動悸・焦り・めまいなど)
- 生理不順やPMS、更年期症状
- 花粉症・アレルギー体質
これらは、「その症状を抑える」だけでは根本的に治らず、体質そのものを整える必要があるという共通点を持っています。
標治法との違いは?|本治法の目的は“再発しない体づくり”
標治法が「今ある痛みや症状」に直接アプローチするのに対し、本治法は「なぜその症状が出るのか?」という原因の根本改善を目指す点が最大の違いです。
たとえば、肩こりであっても、その原因が「肝血の不足」や「ストレスによる気滞」であれば、本治法を使わなければ真の改善にはつながりません。
▶ 詳しくはこちら → 標治法とは?つらい症状にすぐ効く鍼灸の対処法
まとめ|本治法で「自然に整う」体をつくる
本治法は、表面的な症状を追いかけるのではなく、「身体が本来持っている力」を引き出し、自然に整う状態を作るための鍼灸治療です。
毎日の不調が当たり前になっている方こそ、自分の体の声に耳を傾け、本治法による根本改善の第一歩を踏み出してみてください。
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