はじめに|トリガーポイントとドライニードリングの違いを理解する重要性
トリガーポイント鍼治療とドライニードリング(Dry Needling)は、どちらも筋肉の硬結(しこり)や痛みを軽減するための鍼治療 であるが、アプローチの仕方や考え方には違いがある。
✅ トリガーポイント鍼治療 → 東洋医学の経絡・経穴と組み合わせて施術を行う
✅ ドライニードリング → 筋膜や筋肉のトリガーポイントにピンポイントで刺鍼する、西洋医学的な手法
鍼灸師としてトリガーポイント施術を行う際には、ドライニードリングの考え方を理解し、適切に使い分けることが重要。本記事では、両者の違い、施術方法、適応症、施術のメリット・デメリット について詳しく解説する。
1. トリガーポイント鍼治療とドライニードリングの基本的な違い
トリガーポイント鍼治療とは?
トリガーポイント鍼治療は、東洋医学の経絡・経穴の考えを取り入れながら、筋肉のトリガーポイントを刺激する方法。
特徴
- 経穴(ツボ)を活用しながら、トリガーポイントを治療
- 鍼の刺激により、筋肉の緊張緩和や血流促進を促す
- 痛みの局所だけでなく、全身のバランスも考慮 して施術を行う
主な適応症
✅ 慢性的な肩こり・腰痛
✅ 東洋医学的な経絡の不調と関連した症状
✅ 全身の気血の流れを整える施術が必要なケース
ドライニードリングとは?
ドライニードリング(Dry Needling)は、トリガーポイントを直接刺激し、筋肉の異常収縮を緩和する西洋医学的な治療法。
特徴
- トリガーポイントのみに焦点を当て、周囲の経穴は考慮しない
- 局所の筋緊張をターゲットにし、Twitch Response(局所筋収縮)を誘発
- 鍼の刺入と抜鍼を素早く行うことが多く、強めの刺激を加える
主な適応症
✅ スポーツ障害(筋肉の過緊張・可動域制限)
✅ 筋膜リリースを目的とした治療
✅ 筋肉由来の急性・慢性疼痛の改善
2. トリガーポイント鍼治療とドライニードリングの比較表
比較項目 | トリガーポイント鍼治療 | ドライニードリング |
---|---|---|
理論的背景 | 東洋医学(経絡・経穴)+西洋医学(筋膜・トリガーポイント) | 西洋医学(筋膜・トリガーポイント) |
施術対象 | トリガーポイント+経絡のバランス | トリガーポイントのみ |
施術手順 | 経穴を考慮しながら刺鍼 | 筋肉のトリガーポイントへ直接刺鍼 |
施術時間 | 置鍼(数分)+必要に応じて微細な刺激 | 即座に抜鍼し、局所筋収縮を促す |
施術の刺激 | 比較的マイルドな刺激 | 強めの刺激(局所筋収縮を狙う) |
適応症 | 慢性痛・全身のバランス調整 | 筋肉由来の痛み・スポーツ障害 |
施術後のケア | 気血の調整+ストレッチ | 筋膜リリース+ストレッチ |
ポイント:ドライニードリングは局所的なアプローチ、トリガーポイント鍼治療は全身のバランスも考慮した施術。
3. 施術の流れと刺鍼ポイント
トリガーポイント鍼治療の流れ
- 問診・触診 → 症状のある部位と経絡の流れを確認
- トリガーポイントと関連経穴を特定 → 経穴と筋の硬結をチェック
- 刺鍼(置鍼+軽い刺激) → 鍼を一定時間留め、血流を促進
- 抜鍼・アフターケア → 温熱療法・ストレッチの指導
✅ 主な刺鍼ポイント
- 肩こり・頭痛 → 肩井(けんせい)、風池(ふうち)
- 腰痛 → 腎兪(じんゆ)、志室(ししつ)
- 坐骨神経痛 → 承扶(しょうふ)、環跳(かんちょう)
ドライニードリングの流れ
- トリガーポイントの特定 → 筋肉の圧痛点・硬結を確認
- 刺鍼(素早い刺激) → 鍼を素早く入れて抜く(Twitch Responseを誘発)
- 抜鍼・ストレッチ指導 → 筋膜リリースやリハビリを併用
✅ 主な刺鍼ポイント
- 肩の可動域制限 → 棘上筋、棘下筋
- 腰痛・殿部の痛み → 大腰筋、梨状筋
- 膝痛・スポーツ障害 → 大腿四頭筋、ハムストリング
4. どちらを選ぶべきか?使い分けのポイント
✅ トリガーポイント鍼治療が適しているケース
- 慢性的な肩こり・腰痛など、全身のバランスが関与する症状
- 経絡・経穴の影響を考慮した施術を行いたい場合
- 患者が強い刺激を苦手とする場合
✅ ドライニードリングが適しているケース
- スポーツ障害など、筋肉の過緊張による可動域制限がある場合
- 局所のトリガーポイントをピンポイントで刺激したい場合
- 強い刺激を許容できる患者に対する施術
まとめ
トリガーポイント鍼治療とドライニードリングは、どちらも筋肉の緊張を緩めるための施術法だが、アプローチの違いを理解することが重要。
✅ トリガーポイント鍼治療は経絡・経穴を考慮し、全身のバランスを整える
✅ ドライニードリングはトリガーポイントに直接アプローチし、即効性を重視する
✅ 患者の症状や目的に応じて、適切に使い分けることが重要
関連リンク
🔗 痛みを最小限にするトリガーポイント鍼灸|患者が怖がらない打ち方
🔗 トリガーポイント鍼治療の基本|どこに刺す?施術の流れと注意点
🔗 鍼灸師のためのトリガーポイント完全ガイド|基礎・施術・応用まで徹底解説
🔗鍼灸の関連記事はコチラ
[鍼灸の基礎知識:日本鍼灸の進化と現代医療における役割]
[鍼灸と自律神経の関係|ストレス軽減と健康改善のメカニズム]