はじめに:「舌を見るだけで健康状態がわかる」は本当?
「朝起きたら舌に白い苔がついていた」
「なんだか舌の色が赤っぽい…」
「先が割れてるのは体調が悪い証拠?」
こうした“舌の変化”は、実は中医学ではとても重要な診断材料です。
舌診(ぜっしん)とは、舌の色や形、苔(舌苔)の状態などから体の内側のバランスや不調を読み取る方法で、「中医学の鏡」とも呼ばれる診断法の一つです。
この記事では、舌診の基本的な考え方や読み方、セルフチェックの方法までを詳しくご紹介します。
1. 舌診とは?中医学の「望診」の中核を担う診断法
舌診とは、中医学における四診の1つ「望診」に含まれる重要な診察方法です。
舌は体の内側と密接に関係しており、特に:
- 気・血・津液(体液)の状態
- 臓腑(五臓六腑)のバランス
- 陰陽・寒熱・虚実の傾向
などを、“舌の表面に映し出す”と考えられています。
そのため、中医師や鍼灸師は、舌を見ただけでおおまかな証(体質や状態)を把握できるのです。
2. 舌の構造と見るべきポイント
舌診では、以下の3つの要素を中心に観察します。
✅ ① 舌質(舌の色・形・潤い)
舌の本体部分の観察。体の基本的な状態(寒熱・虚実など)を反映します。
舌の色 | 体の状態 |
---|---|
淡白(白っぽい) | 気虚・血虚・寒証 |
淡紅(うすい赤) | 健康な舌 |
紅(濃い赤) | 陽熱・熱証 |
紫(暗紫色) | 瘀血・血行不良 |
舌の形 | 体の状態 |
---|---|
むくみ(歯の跡がある) | 脾虚・水分代謝の低下 |
やせて乾燥している | 陰虚・津液不足 |
裂け目がある | 陰虚・慢性病の可能性 |
✅ ② 舌苔(ぜったい:舌の上にある苔のようなもの)
苔は胃腸の状態や病気の進行度合いを表します。
苔の色 | 意味 |
---|---|
白苔 | 寒証・外感風寒 |
黄苔 | 熱証・湿熱 |
黒苔 | 極度の寒 or 熱証(重症) |
| 苔の厚さ | 意味 |
| 薄い | 軽症・正常範囲
| 厚い | 内臓の機能低下、慢性病、湿・痰の停滞
| 苔の質感 | 意味 |
| 乾燥 | 津液不足、陰虚
| べたつく | 湿熱、痰湿
| 剥がれやすい・地図状 | 胃陰虚、消化器弱り
✅ ③ 舌の部位別の診断(舌地図)
舌は部位によって対応する臓器が異なります。
舌の部位 | 対応する臓器 |
---|---|
舌先 | 心・肺(精神・呼吸系) |
舌辺(舌の横) | 肝・胆(自律神経・感情) |
舌中央 | 脾・胃(消化器) |
舌根 | 腎・膀胱(泌尿器・生殖器) |
舌のある部位だけ赤い、苔が厚いなどは対応する臓器の不調のサインとされます。
3. 舌診セルフチェックのやり方(初心者向け)
ご自宅でも簡単に舌診を試すことができます。以下の手順で確認してみましょう。
✅ 舌診チェック方法
- 朝起きてすぐ、鏡で舌を出して観察(洗面・飲食前がおすすめ)
- 明るい自然光で見る(蛍光灯では色がわかりにくい)
- 舌の色、苔の色・厚さ、形、乾燥具合などを確認
※スマホで写真を撮って記録しておくと、変化が追いやすく便利です。
✅ 注意点
- 舌は食べ物や薬の影響を受けやすいため、朝の空腹時が最も自然
- コーヒーやカレーなどの濃い食事は色を変えてしまうことも
- 日によって若干変化するため、傾向を継続的に観察することが大切
4. 舌診から読み解く体の状態【よくある舌パターン】
舌の状態 | 考えられる体質・証 |
---|---|
白っぽくむくんで苔が厚い | 気虚・脾虚・痰湿体質 |
赤く乾燥して苔が少ない | 陰虚・津液不足・内熱 |
舌の辺縁が赤くイライラ | 肝火上炎・ストレス過多 |
舌の中央に苔が厚く黄色い | 胃熱・湿熱体質 |
舌の先端が赤い・尖っている | 心火旺盛・不眠・精神不安 |
舌が紫色・暗赤色 | 瘀血・血行不良 |
✅ まとめ:舌は「体の内側を映す鏡」
中医学の舌診は、体の内側の変化を反映する非常に優れた診断法です。
毎日の舌チェックを通じて、次のようなメリットがあります。
- 自分の体質(気虚・陰虚・痰湿など)を知るヒントに
- 胃腸の調子や睡眠の質の変化を捉えやすくなる
- 体調の崩れを早めに察知でき、セルフケアにつなげられる
舌診は中医学にしかない“身体からのメッセージの読み取り方”。
毎日の「健康観察ツール」として、ぜひ取り入れてみてください。
🔗 関連リンク
▶️ 漢方薬の選び方—証に応じた処方と体質別の使い分け
▶️ 四診とは?—望診・問診・聞診・切診の意味と使い方
▶️ 中医学の「証」とは?体質の見極め方と治療の考え方
▶️ 気虚タイプとは?—エネルギー不足体質の改善法
鍼灸関連記事はコチラ:
関連:鍼灸とは?鍼灸の基礎知識
関連:鍼灸師と助産師の他職種連携は可能か?
関連:ことわざ「お灸をすえる」とは?意味や使い方