はじめに|肩甲挙筋のトリガーポイントと首こり・肩こりの関係
肩甲挙筋(Levator Scapulae)は、頚椎から肩甲骨の上角に付着する筋肉で、肩甲骨の動きを制御し、首や肩の安定性を保つ役割を担う。デスクワークや長時間のスマホ使用、ストレスによる筋緊張によってトリガーポイントが形成されやすい部位の一つ。
肩甲挙筋のトリガーポイントが発生すると、首から肩にかけての強いこり感、肩甲骨内側の痛み、後頭部や側頭部の関連痛 を引き起こす。特に、首を回す動作や肩をすくめる動作が困難になることが多く、肩こりの慢性化につながりやすい。
本記事では、肩甲挙筋のトリガーポイントの発生原因、関連痛パターン、鍼灸施術のポイントについて詳しく解説する。
1. 肩甲挙筋の構造とトリガーポイントの発生部位
肩甲挙筋の解剖学的特徴
肩甲挙筋は、頚椎(C1〜C4)から肩甲骨の上角に付着する細長い筋肉 で、首や肩の動きをサポートする。主な機能は以下の通り。
✅ 肩甲骨の挙上 → 肩をすくめる動作(ストレスを感じた時の姿勢)
✅ 頚椎の側屈・回旋 → 首を横に傾ける・回す動作
✅ 肩甲骨の安定化 → 姿勢維持に関与
トリガーポイントの発生部位
肩甲挙筋のトリガーポイントは、主に以下の3か所に形成される。
- 頚椎の付着部(C1〜C4) → 首のこり感、後頭部の痛み
- 筋腹中央(肩甲骨の内側上部) → 肩こりの主な原因となる部位
- 肩甲骨上角付近(停止部) → 肩甲骨の動きの制限を引き起こす
特に、肩甲骨の上角付近のトリガーポイントは、首を動かした際の違和感や痛みの原因となりやすい。
2. 肩甲挙筋のトリガーポイントと関連痛のパターン
肩甲挙筋の関連痛とは?
肩甲挙筋のトリガーポイントによる痛みは、首から肩にかけての局所的な痛み だけでなく、後頭部や側頭部にも広がる のが特徴。主な関連痛パターンは以下の通り。
✅ 首のこり・痛み → 特に首の付け根に張りを感じる
✅ 肩の強いこり感 → 片側の肩が重く感じる
✅ 肩甲骨内側の痛み → 姿勢を保つのが辛くなる
✅ 後頭部・側頭部の痛み → 緊張型頭痛を引き起こすことがある
特に、肩をすくめる動作や首を回す動作で痛みが強くなる場合、肩甲挙筋のトリガーポイントが関与している可能性が高い。
関連痛の診断ポイント
- 首を横に傾けたり、後ろに反らせた際に痛みが強くなる場合、肩甲挙筋の関与が疑われる。
- 肩をすくめた時に、肩甲骨の上角付近で痛みを感じる場合、トリガーポイントが形成されている可能性が高い。
- 後頭部や側頭部に痛みが広がる場合、肩甲挙筋の関連痛として頭痛が誘発されている可能性がある。
3. 鍼灸による肩甲挙筋トリガーポイントの施術法
施術の基本ステップ
- トリガーポイントの特定(触診・圧痛の確認)
- 経穴(ツボ)を活用した刺鍼
- 施術後のストレッチ・セルフケアの指導
鍼施術のポイント
🟢 頚椎付近への刺鍼
- 刺鍼ポイント: 風池(ふうち)、天柱(てんちゅう)、完骨(かんこつ)
- 施術方法: 短鍼(20〜30mm)を使用し、筋肉に対して浅く刺入。神経を刺激しすぎないよう注意する。
🟢 肩甲骨周囲へのアプローチ
- 刺鍼ポイント: 肩井(けんせい)、肩中兪(けんちゅうゆ)
- 施術方法: やや斜めの角度で中程度の深さ(30〜40mm)に刺入し、肩甲挙筋の緊張を緩める。
🟢 上肢への関連アプローチ
- 刺鍼ポイント: 曲池(きょくち)、合谷(ごうこく)
- 施術方法: 肩こりや首の痛みに関連する上肢のツボを併用し、全体の血流改善を図る。
適切な刺鍼技術とツボの選定により、肩甲挙筋のトリガーポイントを的確に解消し、首こりや肩こりの改善を促すことができる。
4. セルフケアと再発防止策
鍼施術後に適切なセルフケアを指導することで、症状の再発を防ぎ、長期的な改善を促進する。
✅ おすすめのセルフケア方法
- 肩甲挙筋ストレッチ
- 片手を頭に添え、反対側にゆっくり倒すストレッチを20秒×3セット
- 温熱療法(お灸やホットパック)
- 肩井や天柱にお灸を施し、血流を促進する
- フォームローラーを活用した筋膜リリース
- 肩甲骨周囲を軽くほぐし、筋緊張を緩和する
まとめ
肩甲挙筋のトリガーポイントは、首こり・肩こり・頭痛の大きな原因 となるため、適切な診断と施術が重要。
✅ 肩甲骨上角付近にトリガーポイントが形成されやすい
✅ 後頭部や側頭部に関連痛が広がることがある
✅ 鍼灸では、肩甲骨周囲・頚椎・上肢へのアプローチが有効
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