はじめに|梨状筋のトリガーポイントと坐骨神経痛の関係
梨状筋(Piriformis)は、仙骨から大腿骨の大転子に向かって走行する深層筋であり、股関節の外旋や安定化に重要な役割を果たす。日常生活の中で長時間座る姿勢や運動不足が続くと、梨状筋が過緊張し、トリガーポイントが形成されやすくなる。
特に、梨状筋のすぐ下を坐骨神経が走行しているため、トリガーポイントが発生すると坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛のような症状を引き起こすことがある。 この状態は「梨状筋症候群」とも呼ばれ、お尻の痛みや太もも・ふくらはぎへの放散痛を伴うことが特徴。
本記事では、梨状筋のトリガーポイントがもたらす影響、関連痛のパターン、鍼灸施術のポイントについて詳しく解説する。
1. 梨状筋の構造とトリガーポイントの発生部位
梨状筋の解剖学的特徴
梨状筋は、仙骨の前面から始まり、大腿骨の大転子に停止する扁平な筋肉。股関節の外旋や内転、股関節の安定化に関与し、歩行時のバランスを保つ重要な役割を持つ。
✅ 主な機能
- 股関節の外旋 → つま先を外側に向ける動作
- 股関節の安定化 → 立位や歩行時の姿勢を保持
- 坐骨神経の保護 → 梨状筋の下を走る坐骨神経のクッションとして機能
トリガーポイントの発生部位
梨状筋のトリガーポイントは、主に以下の部位に形成される。
- 仙骨の外側付近(起始部)
- 股関節の後面(大転子付近)
- 坐骨神経の直上(筋腹中央)
特に、梨状筋の中央部にトリガーポイントが形成されると、坐骨神経の圧迫を引き起こしやすい。
2. 梨状筋のトリガーポイントと関連痛のパターン
梨状筋の関連痛とは?
梨状筋のトリガーポイントによる痛みは、局所的なものだけでなく、坐骨神経を介して下肢に広がる のが特徴。主な関連痛パターンは以下の通り。
✅ 臀部の痛み → お尻の奥に鈍痛や圧痛を感じる
✅ 太もも裏の痛み(坐骨神経痛様の症状) → 座っていると太もも裏がしびれる
✅ ふくらはぎの違和感 → 長時間の歩行後に重だるい痛みが出る
特に、梨状筋症候群では「座ると悪化し、立つと楽になる」傾向がある。
関連痛の診断ポイント
- 長時間の座位で臀部に痛みが出る場合、梨状筋が関与している可能性が高い。
- 股関節を内旋させた際に痛みが強まる場合、トリガーポイントの存在を示唆する。
- 臀部を押したときに、坐骨神経に沿った放散痛が出る場合、梨状筋が神経を圧迫している可能性がある。
3. 鍼灸による梨状筋トリガーポイントの施術法
施術の基本ステップ
- トリガーポイントの特定(触診・圧痛の確認)
- 経穴(ツボ)を活用した刺鍼
- 施術後のストレッチ・セルフケアの指導
鍼施術のポイント
🟢 深層部への刺鍼(臀部からのアプローチ)
- 刺鍼ポイント: 承扶(しょうふ)、環跳(かんちょう)、臀中(でんちゅう)
- 施術方法: 深部の梨状筋にアプローチするため、長鍼(50mm以上)を使用し、やや内側に向かって刺入。坐骨神経に過度な刺激を与えないよう注意が必要。
🟢 仙骨周囲からのアプローチ
- 刺鍼ポイント: 八髎(はちりょう)、次髎(じりょう)
- 施術方法: 仙骨周辺の緊張を緩和し、梨状筋の負担を軽減する。臀部全体の筋肉の柔軟性を高めることで、坐骨神経の圧迫を解消。
🟢 下肢へのアプローチ
- 刺鍼ポイント: 委中(いちゅう)、陽陵泉(ようりょうせん)
- 施術方法: 坐骨神経痛が下肢まで広がっている場合、経絡を意識して下肢にもアプローチし、神経の興奮を抑える。
適切な刺鍼技術とツボの選定により、梨状筋のトリガーポイントを的確に緩和し、坐骨神経痛の症状を改善することができる。
4. セルフケアと再発防止策
鍼施術後に適切なセルフケアを指導することで、症状の再発を防ぎ、長期的な改善を促進する。
✅ おすすめのセルフケア方法
- 梨状筋ストレッチ
- 仰向けで片足を反対の膝の上に乗せ、股関節を軽く外旋させながらストレッチ(左右20秒×3セット)
- 温熱療法(お灸やホットパック)
- 環跳や承扶にお灸を施し、血流を促進する
- フォームローラーを活用した筋膜リリース
- お尻の下にフォームローラーを置き、痛みの出る部位を中心にほぐす
まとめ
梨状筋のトリガーポイントは、坐骨神経痛や股関節の違和感の原因 となるため、適切な診断と施術が重要。
✅ 臀部の深部にトリガーポイントが形成される
✅ 関連痛が坐骨神経に沿って広がることが多い
✅ 鍼灸では、臀部・仙骨・下肢へのアプローチが有効
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