僧帽筋のトリガーポイント|肩こり・頭痛を改善する鍼施術法

はじめに|僧帽筋のトリガーポイントが肩こり・頭痛を引き起こす理由

僧帽筋は首・肩・背中を広く覆う大きな筋肉であり、姿勢の維持や肩甲骨の動きに関与している。デスクワークやスマートフォンの使用、精神的ストレスにより緊張しやすく、トリガーポイントが形成されやすい部位のひとつ。

特に、僧帽筋の上部線維にトリガーポイントができると、頭痛や首の痛みを引き起こすことが多い。中部線維や下部線維に発生すると、肩こりや肩甲骨周辺の痛みにつながる。僧帽筋のトリガーポイントを適切に施術することで、これらの症状を緩和し、患者のQOL(生活の質)を向上させることができる。

本記事では、僧帽筋のトリガーポイントの発生メカニズム、関連痛のパターン、鍼灸施術のポイントについて詳しく解説する。


1. 僧帽筋の構造とトリガーポイントの位置

僧帽筋の役割

僧帽筋は、上部線維・中部線維・下部線維 の3つに分かれ、それぞれ異なる機能を持つ。

  • 上部線維(後頭部から鎖骨外側に付着)
    • 頭を支え、肩をすくめる動作に関与。トリガーポイントができると、頭痛や首の痛みを引き起こす。
  • 中部線維(肩甲骨の内側に付着)
    • 肩甲骨を引き寄せ、姿勢を安定させる役割。トリガーポイントができると、肩甲骨周辺のこりや痛みが発生する。
  • 下部線維(胸椎の棘突起から肩甲骨の下角に付着)
    • 肩甲骨を下制し、肩の動きをサポート。トリガーポイントができると、背中の痛みや猫背の悪化を招く。

僧帽筋のトリガーポイントは、特に 上部線維の後頭部付近、中部線維の肩甲骨内側、下部線維の肩甲骨下角 に多く発生する。


2. 僧帽筋のトリガーポイントと関連痛のパターン

僧帽筋のトリガーポイントが形成されると、局所の痛みだけでなく、離れた部位に関連痛を引き起こす ことがある。

主な関連痛パターン

  • 上部線維のトリガーポイント → 側頭部・こめかみ・後頭部の頭痛
  • 中部線維のトリガーポイント → 肩甲骨の内側のこりや痛み
  • 下部線維のトリガーポイント → 背中の痛み・肩の可動域制限

特に、上部線維のトリガーポイントは緊張型頭痛の原因になりやすい。デスクワークの多い患者やストレスを抱えている人は、この部位に強いこりや圧痛を感じることが多い。


3. 鍼灸による僧帽筋トリガーポイントの施術法

施術の基本ステップ

  1. トリガーポイントの特定(触診・圧痛ポイントの確認)
  2. 適切な経穴を組み合わせた刺鍼
  3. 施術後の筋膜リリース・軽いストレッチ

鍼施術のポイント

🟢 上部線維のトリガーポイントへのアプローチ

  • 刺鍼ポイント: 肩井(けんせい)、風池(ふうち)、天柱(てんちゅう)
  • 施術方法: 短鍼(15~25mm)を使用し、やや斜め方向に刺入。Twitch Response(局所筋収縮)が起こることを確認し、筋緊張の緩和を促す。

🟢 中部線維のトリガーポイントへのアプローチ

  • 刺鍼ポイント: 肩中兪(けんちゅうゆ)、天宗(てんそう)
  • 施術方法: 中程度の深さで刺入し、数分間置鍼することで、肩甲骨周囲の筋緊張を和らげる。

🟢 下部線維のトリガーポイントへのアプローチ

  • 刺鍼ポイント: 肩外兪(けんがいゆ)、膏肓(こうこう)
  • 施術方法: 深鍼(30~50mm)を行い、背部の筋緊張を緩和する。特にデスクワークが多い患者では、肩甲骨周囲の動きをスムーズにすることが重要。

適切な刺鍼とツボの組み合わせを用いることで、僧帽筋のトリガーポイントを的確に緩和し、肩こりや頭痛の改善を促す。


4. セルフケアと再発防止策

鍼施術後に適切なセルフケアを指導することで、症状の再発を防ぎ、長期的な効果を維持することができる。

おすすめのセルフケア方法

  1. ストレッチ
    • 首をゆっくり横に倒し、僧帽筋を伸ばすストレッチを1回20秒×3セット
    • 肩を回して肩甲骨の可動域を広げる運動を1回10回×3セット
  2. 温熱療法(ホットパック・お灸)
    • 肩井や風池に温熱刺激を加えることで血流を促進し、筋肉の緊張を和らげる
  3. フォームローラーを活用した筋膜リリース
    • 肩甲骨周囲を重点的にほぐすことで、僧帽筋の負担を軽減する

まとめ

僧帽筋のトリガーポイントは、肩こり・頭痛の大きな原因となるため、適切な診断と施術が重要。

上部線維のトリガーポイントは、頭痛や首のこりと関連が深い
中部・下部線維のトリガーポイントは、肩甲骨や背中の痛みと関係がある
鍼灸施術では、トリガーポイントの位置を正確に特定し、適切な経穴を選択することが大切

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