「心の不調はあるけれど、できれば薬は最小限にしたい」
「体のだるさや冷えもあって、なんとなく元気が出ない」
——そんなときに、漢方薬という選択肢が注目されています。
漢方は、西洋医学とは異なる視点から、“心と体のバランスを整える”ことを目的とした治療法です。
うつ病やうつ状態のケアにおいても、「気の巡り」や「エネルギー不足」といった視点から、体全体をサポートしてくれます。
この記事では、東洋医学のうつ病の見立て方、代表的な漢方処方、選び方と使い方のコツ、医師との連携ポイントをわかりやすく紹介します。
漢方で見る「うつ状態」とは?
東洋医学では、うつ病の状態を気・血・水(き・けつ・すい)のバランスの乱れと捉えます。
中でも以下の3タイプが代表的です。
◆ 気虚(ききょ)タイプ
- 気力が出ない、疲れやすい、無気力
- 朝起きられない、声に張りがない
- 対応処方:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、人参養栄湯 など
◆ 気滞(きたい)タイプ
- イライラしやすい、ため息が多い
- お腹が張る、食欲が不安定
- 対応処方:加味逍遙散(かみしょうようさん)、半夏厚朴湯 など
◆ 血虚(けっきょ)・瘀血(おけつ)タイプ
- 不安、不眠、集中力の低下
- 肌が乾燥しやすい、月経不順あり
- 対応処方:帰脾湯(きひとう)、抑肝散加陳皮半夏 など
☞ ※ 複数のタイプが混在しているケースもあります。体質・症状の変化によって処方は変わるため、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
代表的な“うつ傾向”に使われる漢方薬
処方名 | 主な作用 | 特徴的な症状・適応 |
---|---|---|
加味逍遙散(かみしょうようさん) | 気の巡りを良くし、イライラや緊張を緩和 | PMS・更年期・不眠・ストレス過多 |
抑肝散(よくかんさん) | 情緒の安定・興奮の抑制 | 不眠・怒りっぽさ・認知症ケアにも使われる |
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | 抑うつ・焦燥感・不安 | 動悸・不安神経症・パニック傾向にも対応 |
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) | のどの詰まり・息苦しさ・不安感 | 緊張型うつ・会話がつらい人に |
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 気力回復・胃腸の働きを高める | 慢性疲労・食欲不振・元気が出ない |
帰脾湯(きひとう) | 不安・不眠・胃腸虚弱 | 頭が重い・夢をよく見る・涙もろい |
漢方薬の選び方と使用時の注意点
✅ 市販の漢方薬でもOK?
- ドラッグストアで買える第2類医薬品の漢方薬も多くあります。
- ただし、同じ処方でもメーカーや量が違うことがあるため要注意。
→ 漢方専門薬局や医師に相談するのがベストです。
✅ 保険適用になる?
- 病院(内科・心療内科など)で処方される場合、保険適用となることが多いです。
- ただし、すべての漢方が対象ではないため、処方前に確認しましょう。
✅ 飲み方・飲むタイミング
- 食間(食後2時間後)に飲むのが基本。
- 苦みが気になる場合はお湯に溶かして、ゆっくり飲むと◎。
「漢方だけ」に頼るのはNG? 医療との併用が基本
漢方薬は、あくまでもうつ病治療の補助的なアプローチです。
- 抗うつ薬との相互作用がある漢方も一部存在
- 特定の病気や妊娠中は使えないものも
☞ 必ず主治医に「漢方を使ってみたい」と相談し、医療との併用・連携を前提にしましょう。
まとめ
漢方薬は、うつ病の回復において**「心と体のバランスを整えるサポート役」**として活用できる選択肢のひとつです。
- 気力が出ないときは「補う漢方」
- イライラや不安には「巡らせる漢方」
- 不眠や緊張感には「落ち着ける漢方」
こうした“自分の状態に寄り添った処方”を使うことで、薬だけでは届かない部分がケアされることもあります。
ただし、漢方も薬のひとつ。
自己判断ではなく、専門家のアドバイスを受けながら、あなたに合った方法を見つけてください。
無理なく、自然に、体の声に耳をすませながら——
東洋の知恵が、あなたの心にそっと寄り添ってくれますように。
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