はじめに|災害時の「心と体」に鍼灸師ができること
地震や台風、豪雨などの自然災害が発生した際、避難生活や過酷な現場でのストレス・疲労・不調に苦しむ被災者は少なくありません。
そうした状況で、鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師による“ケアの専門家としての支援”が注目されています。
身体の痛みだけでなく、心のケア(リラックス、安眠、安心感の提供)という側面でも、鍼灸マッサージの役割は大きいのです。
災害支援における多職種連携とDMAT
大規模災害発生時には、迅速な医療支援体制が求められます。その中核を担うのが、以下のような多職種で構成される支援チームです。
🔹 DMAT(災害派遣医療チーム)とは?
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)は、医師・看護師・救急救命士などから構成される緊急対応型の医療チームであり、災害発生直後に現地へ出動し、命を守る初期医療を担います。
このような救急チームとの“縦横の連携”が不可欠な中、鍼灸マッサージ師も医療職の一員として“補完的ケア”の担い手として加わる流れが、東日本大震災以降、加速しています。
鍼灸マッサージによる災害支援の実例と課題
東日本大震災をきっかけに、個人レベル・団体レベルでの鍼灸マッサージ支援活動が全国で活発化しました。
避難所での主な支援内容:
- 肩こり・腰痛・冷え・不眠への対応
- ストレスや不安感の軽減(リラックス・安眠)
- 高齢者・障がい者・持病を持つ人へのケア
こうした支援は高く評価されている一方で、指揮命令系統や受け入れ体制の整備不足という課題も浮上しています。
それに対応するための動きが次の項目です。
DSAMの設立|鍼灸マッサージ支援の「統合窓口」へ
2018年12月、鍼灸マッサージにおける災害時支援の体制強化を目的として、「災害支援鍼灸マッサージ合同委員会(DSAM)」が設立されました。
🔹 DSAMとは?
- Disaster Support Acupuncture Masseur Joint Committee
- 日本鍼灸師会と全日本鍼灸マッサージ師会による合同組織
- 目的:災害支援活動の一本化、他医療職との公平な連携、情報共有の効率化
さらに、日本鍼灸師会・全日本鍼灸マッサージ師会はそれぞれ、国際医療NGO「AMDA」と協定を締結し、災害時の正式な連携体制を整えています。
まとめ|“支える医療”としての鍼灸の可能性
災害時の医療支援は、命を守る“治療”だけでなく、心身を回復させる“ケア”の領域も不可欠です。
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師は、まさにそのケア領域を担う専門職として、多職種連携の中で重要な役割を果たしています。
今後の災害時には、単なる「民間療法」ではなく、医療の一翼を担う存在としての鍼灸師のプレゼンスがより問われるでしょう。
鍼灸の持つ“触れる医療”“癒す力”が、避難所や支援現場において、多くの人々の心と体を支えることが期待されています。
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