経絡治療において、本治法(ほんちほう)と標治法(ひょうちほう)は、鍼灸施術を支える2つの柱です。
どちらも重要な治療法ですが、その目的・アプローチ・効果の出方には明確な違いがあります。
さらに、これらを効果的に組み合わせた「標本同治(ひょうほんどうち)」という実践方法も、経絡治療ならではの特徴です。
本記事では、本治法と標治法の違いを整理しつつ、使い分け方や組み合わせる意義、施術例までを詳しくご紹介します。
本治法とは?|“体質改善”を目的とした根本治療
本治法は、気・血・水のバランスや五臓六腑の機能低下など、体の根本原因を整える治療法です。
脈診・舌診・腹診を通して、体全体の状態を把握し、手足の経絡上にある経穴(ツボ)に鍼を施して、自然治癒力を高め、体質を整えていくのが目的です。
▶ 詳しくはこちら → 本治法とは?経絡治療で体質を整える鍼灸の根本治療ガイド
標治法とは?|“今ある症状”に対応する対症治療
標治法は、明確に症状が出ている部位(肩、腰、頭など)に対して、局所的なアプローチで症状を緩和する施術です。
例えば肩こりには「肩井」、頭痛には「百会」や「太陽」など、痛みや違和感のある場所に鍼灸を行うことで、即効的な効果が期待できます。
▶ 詳しくはこちら → 標治法とは?経絡治療で今ある症状に効かせる鍼灸の対症アプローチ
本治法と標治法の違い一覧表
項目 | 本治法 | 標治法 |
---|---|---|
対象 | 体質・根本原因 | 局所症状・急性の痛み |
目的 | 気血の調整・自然治癒力の回復 | 症状の緩和・即効性 |
診断法 | 脈診・舌診・腹診 | 主訴と患部の状態 |
使用するツボ | 手足の経絡上の基本穴 | 症状部位周辺の局所穴 |
効果の出方 | 中長期的・根本改善 | 即時的・一時的な緩和 |
適応例 | 冷え性、不眠、自律神経失調、慢性疲労 | 肩こり、ぎっくり腰、偏頭痛、眼精疲労 |
標本同治とは?|東洋医学の柔軟な治療哲学
「標本同治(ひょうほんどうち)」とは、本治法(根本治療)と標治法(対症治療)を同時に行うことを意味します。
これは「標(現れている症状)も治し、本(体の本質的な原因)も治す」という、東洋医学ならではの包括的な考え方です。
🔍 施術例:肩こり+不眠の患者さんの場合
- 本治法: 肝虚証と判断され、太衝・太渓などのツボに補法を実施(気血の巡りを整える)
- 標治法: 肩井・天柱など肩周辺に刺鍼し、筋緊張と血行を改善
このように、根本+局所に同時アプローチすることで、施術直後の楽さと長期的な体質改善が両立します。
どちらを優先すべき?|選択のポイント
- ✅ 急性症状が強い場合(例:ぎっくり腰、頭痛) → まず標治法を優先し、痛みを緩和
- ✅ 慢性不調や体質の崩れがある場合 → 本治法を中心に施術し、必要に応じて標治法を併用
多くの臨床では、最初の数回は標治法を多めに、その後は本治法をメインに切り替えるという流れが一般的です。
まとめ|標本同治で“つらい今”も“未来の健康”も整える
本治法と標治法は、それぞれ異なる役割を持つ鍼灸のアプローチです。
経絡治療ではこれを「分けて考える」のではなく、状態に応じて「併用していく」ことが最も重要です。
「とりあえず痛みを取りたい」も、「体質から変えたい」も、両方に応える──
それが、経絡治療が多くの人に選ばれる理由のひとつです。
日常の不調を見つめ直す第一歩として、「標本同治」の考え方をぜひ知ってください。
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