「夏になると疲れが取れない」
「なんとなく気持ちが沈む」「何もやる気が起きない」
——こうした“うつっぽい”状態、実は東洋医学でいう“気虚(ききょ)”が関係していることがあります。
高温多湿な夏は、体力の消耗が激しく、冷房や冷飲食による脾胃の弱り(=気の消耗)が起きやすい季節。
この記事では、夏バテとうつ症状の関係を東洋医学的に解説し、鍼灸でできるケアと患者さんへのアドバイスをまとめていきます。
夏に「気虚」になりやすい理由とは?
◆ 気虚とは?
東洋医学における「気虚」は、
→ エネルギー(気)の不足状態であり、以下のような症状が見られます:
症状 | 解説 |
---|---|
倦怠感・疲れやすい | 気が足りず、体がだるくなる |
無気力・やる気が出ない | 精神活動に必要な気も不足 |
胃もたれ・食欲不振 | 気を作る“脾胃”の弱化 |
朝起きられない・眠っても疲れが取れない | 回復力そのものの低下 |
☞ 気虚の状態が長引くと、軽いうつ症状と非常によく似た状態になります。
現代の夏バテ症状=「気虚+内湿+冷え」のトリプルパンチ
◆ 主な原因と影響
原因 | 東洋医学的影響 |
---|---|
冷たい飲み物・アイスの過剰摂取 | 脾胃の機能低下 → 気の生成力ダウン |
冷房による冷え | 陽気が奪われ、倦怠感・胃腸虚弱へ |
発汗過多・水分補給の偏り | 気陰両虚になり、心身がバテる |
睡眠の質低下(暑さ・生活リズムの乱れ) | 気血の回復ができず、不調が慢性化 |
☞ 「やる気が出ない」「気分が落ち込む」ときは、うつではなく“気が足りていない”だけということも多いのです。
鍼灸師ができる「夏の気虚ケア」アプローチ
◆ ① 脾胃を元気にするケア(気の源を立て直す)
ツボ名 | 作用 |
---|---|
足三里(あしさんり) | 胃腸の機能回復・全身の気を補う |
中脘(ちゅうかん) | 胃の働きを整える・食欲不振に |
脾兪・胃兪 | 背部から脾胃の気を補う |
気海(きかい) | 下腹部の気を集め、疲労感を回復 |
➡ 刺激はやさしく、温灸やてい鍼を使うと安心感を与えやすいです。
◆ ② 自律神経を整え、「心の疲労」もケア
ツボ | 目的 |
---|---|
神門・内関 | 精神の安定・不眠や不安に |
太衝 | イライラ・気分の沈み・感情の停滞に |
➡「気を補う+心をゆるめる」セットで、“心身の巡り”を両面から整えるのが夏の鍼灸施術の基本。
食事と生活養生のアドバイス
✅ 1. 脾胃にやさしい食材をとる
食材 | 理由 |
---|---|
白米・おかゆ | 消化によく、気を補う |
山芋・かぼちゃ・豆腐 | 胃腸の働きを助ける |
梅干し・しそ | 胃を動かし、気の巡りを助ける |
温かい汁物 | 冷えた内臓をリセットし、代謝を促す |
💡「冷たい・生・油っこい」はなるべく避けるよう伝えましょう。
✅ 2. 睡眠・入浴・軽運動のすすめ
- 就寝1時間前はスマホを見ない
- 湯船に浸かって体内の湿気と冷えを抜く
- 早朝か夕方に軽く体を動かす
- 深い呼吸を意識して、“気”を動かす習慣に
☞ 「気は動くことで生まれる」ため、無理のない範囲で“少しずつ動く”提案が◎
まとめ|「うつっぽさ」は“気が足りない”だけかもしれない
夏は、心と体のエネルギーが消耗しやすい季節。
やる気が出ない、気持ちが沈む——その背景には、
「気虚」という東洋医学的な“エネルギー不足”が隠れていることも多いのです。
- 鍼灸で気を補い、胃腸と心のバランスを整える
- 冷えと湿を抜き、内側から元気をつける
- 小さな養生習慣を通じて「自分で回復できる感覚」を思い出してもらう
そんな丁寧な関わりが、夏の心身をそっと支える力になります。
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