日本鍼灸大学 
はじめに｜トリガーポイント鍼治療の重要性
トリガーポイント鍼治療は、筋肉の緊張を緩め、血流を改善し、慢性痛を軽減する効果的なアプローチ方法。一般的な経絡治療とは異なり、筋肉内の硬結（しこり）を直接刺激し、痛みの原因にアプローチするのが特徴。
正確な刺鍼ポイントを見極めることができれば、局所筋収縮（Twitch Response）を誘発し、筋肉の異常収縮を解消できる。しかし、刺鍼の深さや角度を誤ると、効果が減少したり、患者に過度な痛みを与える可能性があるため、適切な技術が求められる。
本記事では、トリガーポイント鍼治療の基本的な考え方、施術の流れ、刺鍼のポイント、注意点について詳しく解説する。
1. トリガーポイント鍼治療の基本原理
トリガーポイント鍼治療とは？
トリガーポイント鍼治療は、筋肉内に形成されたトリガーポイントを直接刺激し、血流を促進しながら痛みを軽減する治療法。以下の3つの作用によって、症状の改善が期待できる。
✅ 局所筋収縮（Twitch Response）の誘発 → 筋肉の異常収縮をリセット
✅ 血流の促進 → 酸素供給を改善し、老廃物を排出
✅ 神経の過敏化を抑制 → 痛みの閾値を上げ、慢性痛を軽減
トリガーポイントと経絡治療の違い
| 項目 | トリガーポイント鍼治療 | 経絡治療（東洋医学） |
|---|---|---|
| 目的 | 筋肉の硬結を直接緩和 | 気血の流れを整える |
| 刺鍼ポイント | 筋肉のトリガーポイント | 経絡上の経穴 |
| 施術の効果 | 局所の血流促進・筋弛緩 | 体全体のバランス調整 |
トリガーポイント鍼治療では、筋膜・神経・血流の相互作用 を考慮しながら、ピンポイントで施術を行うことが重要。
2. 施術の流れ｜トリガーポイント鍼治療の実践手順
施術の基本ステップ
- 問診・触診 → 痛みの部位、関連痛の有無を確認
- トリガーポイントの特定 → 圧痛・硬結をチェック
- 刺鍼ポイントの選定 → 深さや角度を考慮しながら決定
- 刺鍼（Twitch Responseの誘発） → 局所的な筋収縮を引き出す
- 置鍼 or 微細な刺激 → 目的に応じて手技を選択
- 抜鍼・アフターケア → 筋膜リリースやストレッチを指導
効果的な施術のコツ
- Twitch Response（局所筋収縮）を狙う
- 筋肉がピクッと収縮することで、緊張がリセットされ、痛みの軽減につながる。
- 関連痛を意識した施術を行う
- トリガーポイントは局所の痛みだけでなく、遠隔部位の関連痛を引き起こすため、関連する筋肉にもアプローチする。
3. 効果的な刺鍼ポイントと技術
主なトリガーポイントと刺鍼ポイント
| 筋肉 | 刺鍼ポイント | 効果的なツボ |
|---|---|---|
| 僧帽筋 | 肩井（けんせい）・天柱（てんちゅう） | 頭痛・肩こりの改善 |
| 大腰筋 | 気海（きかい）・関元（かんげん） | 腰痛・姿勢改善 |
| 梨状筋 | 承扶（しょうふ）・環跳（かんちょう） | 坐骨神経痛の緩和 |
| 肩甲挙筋 | 風池（ふうち）・天柱（てんちゅう） | 首こり・肩こり |
| 広背筋 | 極泉（きょくせん）・肩貞（けんてい） | 肩関節の可動域改善 |
刺鍼時の注意点
✅ 深さと角度に注意する → トリガーポイントの深さに応じて刺鍼し、神経や血管を避ける
✅ Twitch Responseを引き出す → 軽い振動刺激を加えて、局所的な筋収縮を狙う
✅ 過剰な刺激は避ける → 強すぎる施術は筋肉の防御反応を引き起こすため、適度な刺激を意識
4. 施術時の注意点とリスク管理
トリガーポイント鍼治療のリスク
- 血管・神経への影響 → 解剖学的知識を活かし、安全な刺鍼ルートを選ぶ
- 施術後の倦怠感・好転反応 → 施術後に一時的な疲労感や筋肉痛を訴える患者がいるため、適切な説明を行う
- 過剰な刺激による筋肉の防御反応 → 刺鍼後に過度な痛みが出る場合は、刺激を調整する
施術後のケア
✅ ストレッチ指導 → 鍼治療の効果を持続させるためにセルフケアを指導
✅ 水分補給を促す → 老廃物の排出を促し、血流改善を助ける
まとめ
トリガーポイント鍼治療は、局所の筋肉の緊張を緩め、痛みを改善する強力な治療法 であり、適切な刺鍼技術が求められる。
✅ Twitch Responseを意識しながら施術を行う
✅ トリガーポイントだけでなく、関連痛にもアプローチする
✅ 過剰な刺激を避け、適切なリスク管理を徹底する
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