はじめに
SOAPカルテの「P(Plan:計画)」は、主訴・所見・評価をふまえて、どのような施術を行うか、今後どのような流れで治療を進めていくかを記録する部分です。
このPが曖昧だと、「なんとなく施術している」「効果の判定ができない」という状況になりかねません。
本記事では、鍼灸院でのPの基本的な書き方から、症状別の実践例までを紹介します。
施術計画(P)に書くべき項目
Pには、以下のような内容を含めて記録します。
項目 | 内容 | 例 |
---|---|---|
使用手技 | 鍼、灸、指圧、温灸、低周波など | 鍼+灸頭鍼、温灸 |
使用経穴 | 選穴と補瀉法など | 肝兪・太衝・三陰交 |
通院頻度・次回予定 | 施術間隔、目安の治療回数 | 週1回を3回継続予定 |
生活指導 | 食事・睡眠・運動・姿勢など | 冷え対策として足湯指導 |
経過の評価予定 | 次回何を確認するか | 肩の可動域と睡眠状態を再確認 |
よくある記載ミスと改善例
❌ NG例:「次回も様子を見ながら施術する」
このような書き方では、何をするのか・何を評価するのかが曖昧になってしまいます。
✅ 改善例:
「肩井・天宗に鍼+温灸。デスクワークによる筋緊張が強いため、肩甲間部にも手技療法追加。次回は1週間後、肩の挙上可動域と夜間痛の有無を再確認予定」
このように、具体的な部位・手技・目的・評価指標まで記録するのが理想です。
症状別|施術計画(P)の記入例
✅ 肩こりの場合
- 評価(A): 筋緊張性の肩こり、精神的ストレスが誘因。肝鬱気滞の傾向
- P: 肩井・天宗・太衝に鍼+温灸。ストレッチ指導を追加。施術は週1回、3回継続。緊張時の深呼吸も併用指導。
✅ 腰痛(寒湿タイプ)の場合
- 評価(A): 腰部の寒冷感あり。腎陽虚と寒湿の影響
- P: 腎兪・命門・大腸兪に温灸+中程度の補法。日常の保温指導(湯たんぽ使用)。施術頻度は週2回、全4回で評価予定。
✅ 不眠症の場合
- 評価(A): 肝火上炎による心神不安。夜間の思考過多と焦燥感
- P: 神門・内関・三陰交に鍼+耳鍼。スマホ制限・就寝1時間前の入浴を指導。週1回、5回継続を目安に評価。
Pを書く際の3つのポイント
1. 目的を明確にする
「肩に鍼を打つ」ではなく「肩こりを軽減するため、緊張部に刺激を加える」など、何のための施術かを意識して書く。
2. 施術内容は“見て再現できる”ように書く
複数の施術者が見ても内容がイメージできるように、部位・手技・補瀉法・刺激量の目安なども簡潔に記載。
3. 生活指導は“行動に落とし込む”
「養生指導を行った」だけでなく、「毎晩、足湯を10分行うよう指導」など、実行できるレベルで記載することが重要。
まとめ
P(計画)は、「評価に基づいた、根拠のある施術方針」を記す項目です。
ここを具体的に記録することで、患者にも安心感が生まれ、スタッフ間の共有もスムーズになります。
症状別・患者別に“なぜその施術なのか”“どんな生活をしてもらうのか”を明文化する習慣を持つことで、一貫性ある臨床と継続性のあるケアが可能になります。
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