燥邪とは?中医学における乾燥による不調の原因と対策|秋の咳・肌荒れ・便秘への養生法を解説

燥邪とは?|中医学で読み解く“秋の乾燥トラブル”の正体

中医学では「燥邪(そうじゃ)」は、秋に多く現れる乾燥性の邪気(六淫のひとつ)として知られています。

空気が乾いてくる秋の時期、特に肺や皮膚、喉、腸など“潤い”を必要とする部位に影響を及ぼしやすく、咳・鼻や喉の乾燥・肌荒れ・便秘などが起こりやすくなります。


燥邪の性質と主な特徴

燥邪の持つ性質は以下の通りです。

特性内容
乾燥性体内の潤い(津液)を消耗する
肺を傷つけやすい肺は“乾燥に弱い”とされ、咳や息切れが出やすい
上部に症状が出やすい鼻・喉・皮膚など上半身を中心に影響
大腸にも関連津液不足により便秘や硬便が出やすくなる

✅ 特に「肺」と「大腸」は燥邪の影響を受けやすい「表裏関係」にあるため、セットでケアが必要です。


燥邪による主な症状とは?

症状カテゴリ主な症状
呼吸器系乾いた咳、喉の痛み、声がれ、鼻の乾燥
皮膚乾燥、かゆみ、粉ふき、つっぱり感
消化器・排便便秘、硬便、腸の張り感
全身のどの渇き、軽い発熱、口や目の乾燥感
舌の所見舌苔が薄く、舌が乾燥気味になることが多い

燥邪にかかりやすい体質とは?

次のような体質の方は燥邪の影響を受けやすくなります:

  • 津液(体の潤い)が不足しがち(陰虚タイプ)
  • 肌や喉が乾きやすい人
  • もともと便秘がちの人
  • 呼吸器が弱く、咳が出やすい人
  • 冷暖房に長時間あたっている生活環境の人

燥邪対策の基本|“潤す養生”と“乾かしすぎない生活”

対策カテゴリ実践ポイント
室内環境加湿器の活用、濡れタオルでの湿度調整
スキンケア入浴後の保湿、保湿クリーム・オイルで皮膚を守る
呼吸器ケアマスクやのど飴で粘膜を潤す、深呼吸・鼻呼吸を意識
水分補給常温の水、白湯、潤いを補うお茶(麦門冬湯ベースなど)
睡眠と休息津液は夜間につくられるため、夜ふかし厳禁

薬膳で潤す!燥邪に強い体をつくる食材とレシピ

燥邪には、「潤肺(肺を潤す)」「生津(体液を生む)」作用のある食材が効果的です。

食材効果調理例
白きくらげ肺を潤し、乾いた咳を鎮めるスープ、甘煮
喉の渇きを和らげ、肺の熱を冷ます梨のコンポート
百合根(ゆりね)肺・心を潤し、不眠にも有効おかゆ、蒸し物
大根呼吸器の熱を冷まし、潤いを与えるおろし、煮物
ハチミツ潤肺・咳止め・美肌効果ハチミツレモン湯など

✅ おすすめレシピ:白きくらげと梨の潤肺スープ
→ 秋の乾いた空気に負けない潤い補給にぴったりです。


鍼灸で整える燥邪対策|潤いと巡りをサポートするツボ

ツボ所在主な作用
肺兪(はいゆ)背中の肩甲骨内側肺の働きを整え、咳を鎮める
列欠(れっけつ)手首の少し上呼吸器の乾燥・咳に対応
太渓(たいけい)内くるぶしとアキレス腱の間津液を補い、陰虚の乾燥に有効
中府(ちゅうふ)鎖骨の下、肩のやや内側肺の入口の働きを整える
足三里(あしさんり)膝下のスネ外側全身の調整と脾胃の補強

✅ お灸による温熱刺激や、深くゆっくりとした指圧で体内の水分バランスを整えるのがポイントです。


まとめ|燥邪には“潤すケア”を日常に

燥邪は、体から潤いを奪い、呼吸器や皮膚、腸に不調を起こします。
中医学では、肺・大腸を中心とした“潤いを守る養生”が重視されます。

秋の乾燥時期には、「加湿・保湿・潤いを補う食事」を意識し、早めのケアで燥邪をブロックしましょう。
薬膳・鍼灸・生活習慣を組み合わせて、秋も健やかに乗り切る体を整えていきましょう。

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