湿邪とは?|中医学で考える“梅雨の不調”の根本原因
中医学では、「湿邪(しつじゃ)」とは六淫(ろくいん)のひとつで、過剰な湿気が体内に侵入し、気血の流れや消化機能を妨げる邪気です。
特に梅雨〜夏の高温多湿の季節に強く現れやすく、現代的な症状としては「重だるさ」「むくみ」「消化不良」「頭のもやもや」などがあります。
湿邪の性質と体への影響
湿邪は次のような特徴を持っています:
性質 | 内容 |
---|---|
重濁性(じゅうだくせい) | 体を重だるくさせ、思考も鈍くなる |
粘滞性(ねんたいせい) | 気血水の流れを滞らせ、慢性化しやすい |
下向性 | 特に下半身(脚・腰・消化器)に症状が出やすい |
長引く性質 | いったん入ると、なかなか抜けにくい |
✅ 湿邪は外から入る「外湿」と、体内で発生する「内湿」に分類されます。
湿邪による主な症状と体のサイン
湿邪が体に侵入すると、以下のような症状が出ます:
分類 | 主な症状 |
---|---|
全身症状 | 倦怠感、体の重さ、頭がぼんやりする |
消化器 | 食欲不振、胃のつかえ、下痢、軟便、吐き気 |
下半身 | むくみ、関節の重だるさ、足の冷え |
精神面 | 集中力の低下、気分の落ち込み、眠気 |
舌の特徴 | 舌苔が厚くベタつく、白くて湿っている |
湿邪に弱い体質とは?入りやすい人の特徴
湿邪に影響されやすいのは、以下のような傾向がある人です:
- 甘いもの・油っこいものをよく食べる
- 冷たい飲み物をよく飲む
- 胃腸が弱い(脾虚タイプ)
- 水分代謝が悪く、むくみやすい
- 運動不足で汗をかかない
- 梅雨や夏に体調を崩しやすい
✅ 特に「脾(ひ)=消化器系」が弱い人は、湿をさばく力が低く、湿邪が体に溜まりやすくなります。
湿邪を防ぐ!日常の養生法と生活習慣
湿邪対策には「湿をためない・出す」ことが基本です。
生活習慣 | 内容 |
---|---|
朝起きたら白湯 | 胃腸を温め、湿を動かす |
軽めの運動・ストレッチ | 気の巡りを促進し、湿を排出 |
湿気対策(除湿・換気) | 室内環境を快適に保つことが第一歩 |
冷たい飲食を控える | 胃腸の機能を弱める原因に |
夜更かしを避ける | 脾の働きが低下すると湿が溜まりやすい |
✅ 入浴・足湯・よもぎ蒸しなどで“温めて巡らせる”のもおすすめです。
湿邪を除く薬膳|脾を助けて巡りを整える食材とレシピ
湿邪に対しては、「脾を補い、湿を排出する」食材が効果的です。
食材 | 効果 | 調理例 |
---|---|---|
はと麦 | 利湿・美肌・むくみ改善 | はと麦茶、お粥 |
大豆 | 健脾・利水・エネルギー補給 | 味噌汁、納豆、豆腐料理 |
生姜 | 温中散寒・気の巡りを助ける | 生姜湯、生姜炒め |
冬瓜 | 利水・清熱・むくみ改善 | 冬瓜スープ、蒸し料理 |
陳皮(みかんの皮) | 消化促進・気滞解消 | 陳皮茶、お粥に加える |
✅ おすすめレシピ:はと麦と冬瓜のむくみ取りスープ
→ 水分代謝を促進し、胃腸も優しく整えてくれます。
湿邪のケアに有効な鍼灸アプローチ
湿邪による重だるさや消化不良には、気の巡り・利湿・脾胃の強化を意識したツボ刺激が効果的です。
ツボ | 所在 | 主な作用 |
---|---|---|
中脘(ちゅうかん) | みぞおちとおへその間 | 胃の働きを整える |
足三里(あしさんり) | 膝の下、スネ外側 | 脾胃を補い、全身の活力を高める |
陰陵泉(いんりょうせん) | 膝の内側、骨の下 | 利水・むくみの排出 |
豊隆(ほうりゅう) | スネの中央、外側 | 痰湿を取り除く作用 |
三陰交(さんいんこう) | 内くるぶしから指4本上 | 女性の冷え・むくみにも◎ |
✅ 鍼灸院での施術に加え、自宅でお灸や指圧によるセルフケアも取り入れてみましょう。
まとめ|湿邪は“溜めない・巡らせる”が基本
湿邪は、梅雨〜夏に多く、倦怠感・むくみ・胃腸不調といった不調を引き起こします。
中医学では、湿邪をためない体づくりのために、「脾胃の強化」「水分代謝の改善」「気の巡り」が重視されます。
薬膳・鍼灸・生活習慣の3本柱を意識しながら、内側から健やかに整えていきましょう。
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