「冬になると毎年気分が落ち込む」
「朝起きられない」「やる気が出ない」「甘いものばかり食べたくなる」
——こうした症状、“冬季うつ(季節性情動障害:SAD)”の可能性があります。
現代医学では「日照不足によるセロトニン低下」が関与すると言われ、
東洋医学でも、“陽気不足”や“腎陽虚”の傾向と捉えられます。
この記事では、冬季うつの仕組みと、鍼灸師としてできるアプローチ、日常での養生法を解説します。
冬季うつとは?|現代医学的な背景
◆ 主な症状(SADの特徴)
症状 | 解説 |
---|---|
気分の落ち込み | 冬にだけ抑うつ症状が強まる |
過眠傾向 | 睡眠時間が長くなってもスッキリしない |
甘いもの・炭水化物への渇望 | セロトニン不足を補おうとする脳の反応 |
社交性の低下 | 外出や会話がおっくうになる |
意欲の減退 | 家事・仕事・趣味に対する関心の低下 |
◆ 原因とされる要素
- 日照不足 → メラトニン増加 → 眠気・だるさ
- セロトニン減少 → 抑うつ傾向
- 体内時計の乱れ → 睡眠・自律神経のバランス崩壊
東洋医学で見る「冬季うつ」の体質傾向
冬は「腎」の季節。
腎は生命力の源(精)を蓄える臓腑であり、気・血・陽の源でもあります。
冬季うつは、以下のタイプに多く見られます:
◆ 腎陽虚タイプ
- 手足の冷え・むくみ
- 下腹部の冷え・腰のだるさ
- 無気力・抑うつ・過眠傾向
→ “陽気”が不足し、活動力が出ない状態
◆ 脾腎両虚タイプ
- 冷え+消化力低下
- 甘いもの・パンなどの渇望
- 集中力低下・朝の起床困難
→ 腎の弱り+脾の弱り → 気血が全体的に足りない
鍼灸で整える冬季うつケアのポイント
◆ ① 腎陽を補い、全身に“熱と気”を巡らせる
ツボ名 | 主な作用 |
---|---|
命門(めいもん) | 腎陽の中心。体の芯から温める |
腎兪(じんゆ) | 腎の機能を高め、下半身の冷えに |
気海(きかい) | 気を補い、無気力・倦怠感の改善に |
関元(かんげん) | 腎精・元気の回復ポイント |
➡ 知熱灸や箱灸など、しっかり温熱を届ける手技が効果的です。
◆ ② 陽気の巡りと自律神経を整える
ツボ名 | 目的 |
---|---|
太陽・風池 | 首肩こり・頭重・眠気に |
神門・内関 | 精神的な緊張・不安感に |
百会 | 気分の沈みに/“引き上げ”の感覚を作る |
💡 “冷え+沈み”の症状に対して、「温めて上に巡らせる」意識が重要です。
冬季うつを防ぐセルフケアの提案
✅ 1. 朝の日光+運動習慣
- 朝カーテンを開け、自然光を浴びる(10〜30分)
- 軽い散歩・ラジオ体操などで体を動かす
→ セロトニン・体内時計・自律神経のリセットに◎
✅ 2. 「温める食」を日常に
食材 | 効果 |
---|---|
黒ごま・くるみ | 腎を補う |
生姜・にんにく | 陽気を助け、冷えを防ぐ |
羊肉・鶏肉・根菜 | 体を温め、脾胃を強化する |
➡ 温かい鍋・スープ・味噌汁などを中心に、「冷えない食生活」を心がける。
✅ 3. 睡眠の質を保つ工夫
- 就寝2時間前から照明を落とし、スマホを遠ざける
- 就寝前の白湯・お灸・アロマで“リラックススイッチ”をON
- 睡眠時間を確保しつつ、「起床リズム」を整える方を優先
まとめ|冬は「閉じて養う」時期。ゆっくり整えることが大切
冬のうつ症状は、自然のリズムに逆らおうとして無理を重ねた結果として現れることも多く、
「心が弱い」のではなく、「陽気が不足している」だけかもしれません。
鍼灸師としてできることは、
- 腎を温め、陽気を補う
- 体をめぐらせ、気血を上げる
- 心を落ち着け、“安心できる場”を提供する
こうしたアプローチで、
冬の“沈みがちな気分”にそっと光を灯すような施術が可能になります。
どうか、「温かさ」と「整い」を届けられる鍼灸師として、
冬のケアに臨んでみてください。
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