鍼灸だけでうつ病を治せるとは確認されていません。鍼を使う施術について、抑うつ症状が軽くなる可能性を示す研究はありますが、結果の確かさには限界があります。治療中の方が鍼灸を希望する場合は主治医に伝え、診療や治療を続けながら検討してください。気分の落ち込みが続く、生活に支障がある、自分を傷つけたいと感じるときは、鍼灸の効果を待たずに医療機関や相談窓口につながってください。
うつ病への鍼灸について、研究でわかること
鍼灸には、細い鍼を使う施術と、熱を使うお灸があります。2018年のコクランレビューは、鍼を用いる施術64件を検討しました。お灸は対象外です。通常のケアや施術を受けない場合と比べ、鍼で抑うつ症状が軽くなる可能性が示されました。一方、エビデンスの確実性は多くが低いか非常に低いと評価されています。薬に鍼を加えた場合の効果も、研究結果から確かだとは判断できません。
この研究を根拠に、特定のツボがうつ病に効く、鍼灸が薬や心理療法の代わりになる、鍼とお灸に同じ効果がある、とはいえません。旧記事にあった「自律神経やホルモンバランスを整える」「セロトニンの分泌を促す」といった作用も、個人の治療効果として断定できません。
鍼灸を受けたいときに相談すること
うつ病の治療には、心理療法や薬などがあり、本人の状態に応じて医療者と相談して選びます。鍼灸を試したい場合は、現在の症状と受けている治療を主治医に伝えてください。薬の中止や変更は自己判断で行わず、処方した医療者に相談してください。
施術先には、うつ病で治療中であること、体調、服薬状況、以前に鍼やお灸で気分が悪くなった経験などを伝えましょう。鍼は不適切な施術や衛生管理によって感染などの問題が起こり得ます。施術中に痛みや気分の悪さを感じたら、その場で伝えて中止を相談してください。家庭でのツボ押し・お灸の注意点は、うつ病とツボ押し・お灸の記事に分けて説明しています。
つらいときは施術の予約より相談を優先
落ち込みや楽しめなさが続く、眠れない・食べられない、仕事や家事が難しいなどの変化があれば、かかりつけ医、精神科、心療内科などに相談してください。症状が2週間未満でも、つらさが強ければ相談できます。症状と治療の基本はうつ病の基礎と相談先をご覧ください。
「死にたい」「消えたい」と感じるときは、一人で抱えず、身近な人や医療者にすぐ伝えてください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」でも電話・SNSなどの相談先を探せます。今すぐ自分を傷つけそうな差し迫った危険があるときは119番に連絡してください。
よくある質問
鍼灸を受ければ抗うつ薬をやめられますか?
やめられるとはいえません。鍼灸を希望するときも、薬の中止や変更は主治医に相談してください。
うつ病に効くツボは決まっていますか?
特定のツボを刺激すればうつ病が治る、という根拠は確認できません。研究で扱われた鍼の施術を、家庭でのツボ押しやお灸の効果に置き換えることもできません。
鍼灸を受けながら日常でできることはありますか?
休息、食事、人とのつながりなど、できる範囲で生活を支える工夫があります。無理なく取り組む方法はうつ病のセルフケア総覧で紹介しています。






