企業経営において、サステナビリティやESG対応は、すでに「付加価値」ではなく前提条件になりつつあります。
一方で、その実務を担う現場では、静かに限界が近づいていることが明らかになりました。
2026年1月28日、エスプールブルードットグリーンが実施した調査によると、サステナビリティ・環境経営・CSR関連部門の担当者の約9割が業務負担や疲労感を実感していると回答しています。
この結果は、サステナビリティ対応そのものが「持続可能ではない形」で運用されている現場が少なくないことを示しています。
業務は増え続けるが、体制は追いついていない
調査では、サステナビリティ対応に専任で従事する人員が2~3人以下という企業が全体の7割以上を占めていました。
「兼任対応」や「実質1人で担当」というケースも珍しくありません。
その一方で、直近1年間の業務量については、
- 「かなり増えた」
- 「やや増えた」
と回答した担当者が約8割に達しています。
法規制やガイドラインの改訂、評価基準の高度化、情報開示要請の拡大などにより、対応すべきテーマは年々増加しています。しかし、人員や体制は大きく変わらないまま、業務だけが積み重なっているのが実情です。
疲労の原因は「忙しさ」ではなく「変化と不確実性」
業務負担を感じる理由として多く挙げられたのは、
- 求められる内容が頻繁に変わり、対応が追いつかない
- 人員や専門知識が不足している
- 報告・提出物が多すぎる
といった声でした。
特徴的なのは、単純な業務量の多さではなく、
「何が正解か分からない状態で、走り続けなければならない」
という構造が負担になっている点です。
サステナビリティ領域は、国際ルールや世界情勢の影響を強く受けます。昨日までの正解が、今日には変わっていることも珍しくありません。
精神的な疲労が蓄積しやすい理由
精神面での負担としては、
- 国際ルールや世界動向に振り回され、社内の方向性が定まらない
- 情報収集や用語解釈に時間がかかる
- 中長期施策が多く、成果を実感しにくい
といった回答が多く見られました。
サステナビリティ対応は、短期的な成果が数字で見えにくく、「やっている意味が実感しづらい」仕事でもあります。
この成果の見えにくさが、担当者の心理的消耗をさらに強めていると考えられます。
情報は増えているが、判断は簡単ではない
調査では、サステナビリティ関連の情報や営業が「増えた」と感じている担当者が8割以上に達しました。
しかし、有益だと感じられている情報源は、
- 参加者が限定された勉強会・情報交換会
- セミナー・ウェビナー
- 専門性の高いメディア
など、実務に直結し、整理された情報に限られています。
情報が多いこと自体が価値になる時代は終わり、
「自分たちの業務にどう使えるか」がより強く問われている状況だと言えるでしょう。
個人の頑張りではなく、仕組みが求められている
今後、業務負担を軽減するために必要な支援としては、
- 業務プロセスの効率化
- AI・デジタルツールの導入
- 社内教育・研修
が上位に挙げられました。
また、外部支援としては、データ収集・分析、算定や開示物作成、社内体制づくりの支援など、属人化しやすい業務を仕組みで支える支援が求められています。
ここから見えてくるのは、
「真面目で責任感のある担当者ほど疲れていく」という、構造的な問題です。
鍼灸師にも通じる「専門職の疲れ方」
この調査は企業のサステナビリティ担当者を対象としたものですが、
専門性が高く、正解が一つではない仕事という点では、鍼灸師の仕事とも共通しています。
- 専門知識のアップデートが常に求められる
- 患者ごとに正解が異なる
- 成果がすぐに可視化されにくい
- 個人に負担が集中しやすい
こうした条件が重なると、「正しいことをしているはずなのに、なぜか疲れていく」という状態に陥りやすくなります。
サステナビリティとは、本来「理想を追い求め続けること」ではなく、
無理なく続けられる形に整えることです。
これは企業経営だけでなく、鍼灸臨床や院運営においても同じではないでしょうか。
自分の身体や働き方をすり減らしながら続ける医療は、決して持続可能とは言えません。
まとめ
サステナビリティ担当者の疲労は、個人の問題ではなく構造の問題です。
そしてその構造は、専門職全般に共通する課題でもあります。
「正しいことを、正しい形で、続けるためにどう設計するか」。
その問いを持つこと自体が、これからのサステナビリティの第一歩なのかもしれません。
参照リンク
・株式会社エスプールブルードットグリーン 公式サイト
https://www.spool.co.jp/
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