日本鍼灸大学 
はじめに：東洋医学の三要素「気・血・水」
東洋医学では、人の体を「気・血・水」という3つの要素で捉えます。
- 気：生命活動のエネルギー
- 血：栄養や酸素を運ぶもの
- 水：体を潤し、機能を調えるもの
これらがバランスよく巡ることで、体は健やかに保たれると考えられています。
実はこの「調和の思想」は、持続可能性を重視するSDGsと大きく共鳴しているのです。
近年、地球規模でエネルギーや資源の不均衡、環境破壊が深刻化しています。これは体の中で「気・血・水」が乱れたときに不調が現れるのと同じ構図です。東洋医学の健康観を社会や環境問題に当てはめると、SDGsの目指す世界像と驚くほど重なります。本記事では、体のバランスを守る「気・血・水」の考え方から、持続可能な社会づくりのヒントを探っていきます。
気＝エネルギーと持続可能性
気は生きる力そのもの。
- 体を動かす
- 免疫を保つ
- 精神を安定させる
👉 SDGsでいえば「エネルギー（目標7）」に近い存在です。
エネルギーの浪費が社会を不安定にするように、気の不足も体調不良を招きます。
血＝公平に届ける仕組み
血は全身に栄養を運ぶネットワークです。
循環が滞れば、局所的な不調が現れます。
👉 これは「資源や福祉を公平に届ける社会（目標10：不平等の是正）」に通じます。
必要な場所に必要な資源を行き渡らせる仕組みは、人の体にも社会にも共通して重要です。
水＝循環と環境の調和
水は体を潤し、老廃物を流す役割を持ちます。
体の水分が滞るとむくみや不調が出ます。
👉 社会に置き換えれば「循環型社会」や「水資源管理（目標6）」にあたります。
水が巡ることで人も社会も清らかに保たれるのです。
気・血・水のアンバランス＝社会の不均衡
- 気不足 → エネルギー危機、心身の疲労
- 血不足 → 医療や教育の不平等
- 水滞 → 廃棄物問題、環境破壊
体の不調と社会課題は驚くほど似ています。
つまり「気・血・水の調和を整える」ことは、SDGs的に言えば「環境・社会・経済の調和」と同じ概念なのです。
鍼灸による気・血・水の調整
鍼灸はツボ刺激で気・血・水の巡りを改善します。
- 気を補う → 慢性疲労の回復
- 血を整える → 貧血や冷えの改善
- 水を流す → むくみ・頭重感の緩和
このアプローチは、まさに「持続可能な健康」を実現する具体的な手段です。
患者さんへの伝え方
「気・血・水」の考え方は難しそうに思われがちですが、日常生活に結びつけると理解されやすいです。
- 気＝元気の“気” → 睡眠や食事で補う
- 血＝血色の“血” → 栄養バランスを意識
- 水＝水分の“水” → 水分補給や代謝の促進
こうした説明は、健康教育にも役立ち、SDGs的視点も自然に伝えられます。
まとめ：気・血・水＝持続可能な社会モデル
東洋医学の三要素「気・血・水」は、体の健康を支える基盤であると同時に、SDGsの思想とも共通しています。
- 気＝エネルギーを大切にする
- 血＝資源や恩恵を公平に届ける
- 水＝循環を保ち、環境を守る
体の健康と社会の持続可能性は、どちらも「調和とバランス」によって成り立ちます。
鍼灸師がこの考えを伝えることで、患者の健康を守るだけでなく、社会全体に持続可能な価値観を広めることができるのです。
さらに、この思想は「個人の体」と「社会・地球」の両方を重ねて考える視点を与えてくれます。患者にとってはセルフケアの指針となり、社会にとっては資源の使い方や環境保全の意識を高めるきっかけとなります。つまり、気・血・水の調和は健康づくりだけでなく、持続可能な未来を築くための普遍的なモデルと言えるでしょう。
関連：鍼灸の基礎知識：日本鍼灸の進化と現代医療における役割
関連：鍼灸師のための開業手続き完全ガイド｜保健所・税務署への申請方法
関連：鍼灸とSDGsの意外な関係｜サステナブルな医療を考える
