はじめに:「未病」という視点
「未病(みびょう)」とは、病気と健康のあいだの状態を指します。
明確な病気ではないけれど、なんとなく不調がある――これをケアすることが東洋医学の大きな役割です。
現代医療は「病気になってから治す」ことを中心に発展してきましたが、生活習慣病や高齢化社会の進展により「病気になる前に予防する」ことの重要性が増しています。
この「未病を治す」という考え方は、実はSDGsの理念と深くつながっているのです。
未病ケアとSDGsの共通点
- 持続可能性の確保
病気が重症化する前にケアすることは、医療費や社会保障費の削減につながります。
👉 これはSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」に直結。 - 格差の縮小
誰でも取り組めるセルフケアや鍼灸の習慣は、医療アクセスが限られる人への支援になります。
👉 目標10「人や国の不平等をなくそう」にも貢献。 - 教育的価値
生活習慣改善や養生法を広めることは、未来世代への健康教育でもあります。
👉 目標4「質の高い教育をみんなに」に重なる取り組みです。
鍼灸による未病ケアの実際
- 肩こり・腰痛の早期ケア → 慢性化を防ぎ、労働生産性を守る
- 自律神経の安定 → 睡眠改善やストレス緩和につながる
- 冷えや血行不良の改善 → 生活習慣病リスクを減らす
- 免疫力のサポート → 感染症予防や体調維持に寄与
これらはすべて「病気にならないためのケア」であり、まさに未病を治す実践です。
予防医療の社会的効果
- 医療費削減:生活習慣病や慢性疾患を未然に防ぐことで社会全体の医療費を抑制
- 高齢者の自立支援:健康寿命を延ばすことで介護負担を軽減
- 労働生産性の維持:働き盛り世代の不調を予防し、経済活動を支える
👉 個人の健康だけでなく、社会や経済にも大きなメリットがあります。
患者さんに伝える「未病」視点
鍼灸師が患者に未病の概念を伝える際は、難しい言葉より「生活の小さな工夫」を提示することが効果的です。
- 季節ごとの養生法
- 簡単なツボ押し
- 睡眠や食事のアドバイス
「ちょっとした心がけが未来の健康を守る」と伝えることで、患者も主体的に健康づくりに関われるようになります。
未病ケアと他職種連携
- 医師と連携して生活習慣病リスクを持つ患者をフォロー
- 栄養士や運動指導者と協力し、生活改善プログラムを構築
- 学校や企業での健康教育に参加し、広く未病の考えを伝える
👉 これはSDGs目標17「パートナーシップ」にもつながる活動です。
まとめ:「未病を治す」は未来を守る医療
東洋医学が大切にしてきた「未病を治す」という考え方は、まさにSDGs時代に必要な予防医療の基盤です。
- 病気を未然に防ぐことで、健康寿命を延ばし社会の負担を軽減
- 誰もが取り組めるセルフケアや鍼灸習慣で格差を縮小
- 教育や連携活動を通じて、未来世代に健康をつなげる
未病ケアは「個人の健康」と「社会の持続可能性」を同時に実現する取り組みです。
鍼灸師がこの考えを広めることは、まさにSDGsそのものの実践といえるでしょう。
さらに、未病の概念を社会全体に広めることで「医療=治すもの」という一方的な発想から、「医療=守るもの・育むもの」へと価値観がシフトします。これは医療費削減や介護負担軽減だけでなく、人々の生活の質向上にも直結します。未病を治す発想は、患者一人ひとりの未来と、社会全体の持続可能性を同時に支える大切な柱なのです。
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