日本鍼灸大学 
はじめに：歴史から未来を考える
SDGsは現代に生まれた国際目標ですが、その根底にある「循環」や「調和」の思想は、実は古代から存在していました。
古代中国医学は「人と自然は一体」という視点に基づき、体や社会を循環するものとして捉えています。
五行思想や陰陽論は、単なる医学的な理論にとどまらず、社会や自然との共生を教える哲学でもあります。
現代社会が直面する環境問題や資源の浪費は、古代の知恵から学べる部分が多いのです。
さらに、古代人は「必要な分だけを取り、余分は自然に返す」という暮らしを実践していました。これは資源を浪費する現代にこそ必要な視点です。本記事では、古代中国医学の循環思想をひもとき、SDGsが掲げる循環型社会のヒントを探っていきます。
五行思想と資源循環
五行（木・火・土・金・水）は「互いに生み、互いに制する」関係を持ちます。
これは自然界における「資源の循環」と同じ構造です。
- 木が火を生み → 火が土を育て → 土が金属を生み → 金が水を生み → 水が木を育てる
👉 これは現代でいう「循環型社会」そのもの。廃棄物を資源に戻し、また新たに活用する仕組みに通じます。
陰陽論と社会バランス
陰陽は「対立しながらも調和する」関係です。
昼と夜、男と女、動と静――どちらか一方だけでは存在できません。
社会に置き換えると、経済成長と環境保護、個人の利益と公共の利益といった二項対立も、バランスが必要です。
👉 これはまさにSDGsが目指す「持続可能な発展」に通じます。
養生の知恵＝無駄を減らす暮らし
古代中国では「養生（ようじょう）」の知恵が重視されてきました。
- 季節の旬の食材を食べる
- 必要以上に消費しない
- 自然と調和して生活する
👉 これらは現代でいう「エシカル消費」「フードマイレージ削減」と同じ発想です。
医学と社会の共通項
古代中国医学は体を「小宇宙」として見立て、自然界の循環と同じ構造を持つと考えました。
体内の循環が滞ると病気になり、社会の循環が滞ると不平等や環境破壊が起こる。
👉 個人の健康も社会の健康も「循環」がカギだと説いているのです。
鍼灸師が発信できる循環の視点
現代の鍼灸師は、施術だけでなく「循環を大切にする生き方」を患者に伝える役割を担えます。
- 食生活を季節に合わせる
- 睡眠と活動のリズムを整える
- 身体も社会も「使いすぎず、巡らせる」ことを意識する
これらの実践は、個人の健康づくりと同時に、持続可能な社会の構築に貢献します。
まとめ：古代の知恵は未来を導く羅針盤
古代中国医学における五行や陰陽、養生の知恵は、現代のSDGs思想と驚くほど重なります。
- 五行＝資源の循環
- 陰陽＝社会のバランス
- 養生＝持続可能な暮らし
これらの教えは、個人の健康を守ると同時に、社会や環境を健全に保つための普遍的な知恵です。
鍼灸師が古代の視点を現代に翻訳して伝えることは、持続可能な未来づくりに直結します。
さらに、古代の哲学は「一人の体の調和が社会全体の調和につながる」という思想を示しています。つまり、養生や鍼灸の実践は自己管理にとどまらず、社会や環境を守る行動の一部でもあるのです。古代の知恵を現代の言葉に変えて伝えることが、鍼灸師にできる大切な役割といえるでしょう。普遍的なモデルと言えるでしょう。
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