寒邪とは?中医学における冷え・痛み・巡りの悪さの原因と対策|冬の体調不良を防ぐ方法を解説

はじめに|寒邪とは?中医学で考える「冷えの根本原因」

中医学では「寒邪(かんじゃ)」とは、六淫(ろくいん)と呼ばれる自然由来の邪気のひとつで、体を内外から冷やし、気血の巡りを滞らせる邪気です。

寒さに長時間さらされたり、冷たい飲食をとりすぎたり、正気(免疫力・エネルギー)が弱まっている時に体に侵入しやすく、痛み・冷え・凝りをもたらします。


寒邪の性質と主な特徴

寒邪には以下のような特徴があります:

特性内容
凝滞性(ぎょうたいせい)気血の流れを停滞させる(→痛み・コリ)
収引性(しゅういんせい)筋肉や関節を縮こまらせ、こわばりを生じる
冷却性陽気を傷つけて体を冷やす(→冷え性・腹痛)

特に下半身、内臓、関節などの深部を冷やす力が強いのが寒邪の特徴です。


寒邪がもたらす症状と部位別の影響

寒邪は体内に侵入すると、以下のような症状を引き起こします。

影響部位症状例
筋肉・関節関節痛、肩こり、腰痛、首のこわばり
内臓下痢、腹痛、月経痛、頻尿
四肢手足の冷え、感覚の鈍さ、むくみ
全身無気力、寒気、疲れやすさ、動きの重さ

✅ 特に「冷えによる痛み(冷痛)」が特徴で、温めると楽になるケースが多く見られます。


寒邪が入りやすい体質と生活習慣

以下のような人は寒邪の影響を受けやすくなります:

  • 冷たい飲み物・生ものを好む
  • 冷房の効いた環境に長時間いる
  • 運動不足で血流が悪い
  • 陽虚(ようきょ)タイプ:エネルギーが足りず体が冷えやすい
  • 月経時に冷えやすい・下半身が冷たい

また、「睡眠不足」や「ストレスの蓄積」も寒邪に対する防御力(正気)を低下させる要因になります。


寒邪に対抗する生活養生|日常でできる対策法

養生のポイント実践内容
首・腰・足元を冷やさないスカーフ・腹巻・湯たんぽの活用
朝の白湯習慣内臓を温め、気の巡りを促す
適度な運動筋肉の収縮で熱を生み出し寒邪を排出
入浴・足湯体の芯まで温める(特に下半身)
睡眠・食事のリズムを整える正気を養い、邪気に負けない体を作る

薬膳で整える寒邪対策|体を内側から温める食材

寒邪による冷えや痛みには、体を温め、巡りを促す「温性・熱性」の食材を取り入れましょう。

食材効能調理例
生姜(しょうが)発汗・温中作用生姜湯、生姜焼き
羊肉補陽・強壮作用薬膳スープ、煮込み料理
にら温中・活血炒め物、餃子の具
シナモン(桂皮)陽気を高め、寒を散らす漢方茶、煮物に少量
黒豆腎を温める黒豆ごはん、スープ

おすすめレシピ例:羊肉と生姜の温活スープ
寒い時期にぴったりの補陽スープ。にらやクコの実を加えて滋養強壮にも。


鍼灸でのアプローチ|寒邪を散らすツボと施術

寒邪に対しては、体を温め、気血の流れを改善するツボを用います。

ツボ所在主な作用
命門(めいもん)腰の背骨中央腎陽を補い、冷えと無力感に
関元(かんげん)おへその下3寸下腹部の冷え・虚寒体質に有効
足三里(あしさんり)膝の下、スネ外側気を補い、消化・循環促進
太谿(たいけい)足首の内側、くるぶし後ろ腎の陽を補い、体を深部から温める

灸(もぐさ)を使う温熱療法との相性が非常に良く、セルフケアでもおすすめです。


まとめ|寒邪を恐れず、温めて整える

寒邪は、体を冷やし、巡りを滞らせる代表的な外邪。特に冬や冷房環境下で不調を感じやすい方は要注意です。

日頃から「冷えない・冷やさない・巡らせる」生活習慣を意識し、鍼灸や薬膳の力を借りて、寒邪に負けない体づくりを行いましょう。

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