暑邪とは?|中医学で見る「夏バテ・熱中症」の正体
中医学において「暑邪(しょじゃ)」は、六淫(ろくいん)に分類される夏の強い熱や湿気による外邪です。
暑邪は、陽性で上昇しやすく、熱性・乾燥性を持つ邪気として知られ、気を消耗させ、体内の水分(津液)を奪い、さまざまな不調を引き起こします。
現代的には「熱中症」や「夏バテ」に相当する症状がこれに該当します。
暑邪の性質と主な特徴
暑邪は以下のような性質を持っています。
特性 | 内容 |
---|---|
陽熱性 | 体温を上げ、のぼせ・発熱・口渇を起こす |
上昇性 | 頭部や胸部など上半身に症状が出やすい |
消耗性 | 気・津液(体液)を消耗し、疲労感・脱力感をもたらす |
湿と結びやすい | 湿邪と結びつくと、さらに重だるさや胃腸不調が強まる |
✅ 特に夏の高温多湿環境では、「暑+湿」の複合邪気となり、症状が重く出ることがあります。
暑邪による代表的な症状
影響部位 | 主な症状 |
---|---|
頭部・上半身 | のぼせ、発汗過多、頭痛、めまい、口の渇き |
消化器 | 食欲不振、胃もたれ、吐き気 |
全身 | 倦怠感、脱力感、無気力、イライラ |
津液不足 | 乾燥、便秘、尿量減少、口内の乾き |
✅「大量の汗をかいた後に、極度の疲労やめまい」がある場合、中医学的には気虚・津液損傷と判断されます。
暑邪が入りやすい人の体質
暑邪は、以下のような体質・状況で影響を受けやすくなります:
- 体内に熱がこもりやすい「陽盛タイプ」
- 汗をかきやすく、体力の回復が遅い「気虚タイプ」
- 水分代謝が弱く、むくみやすい「湿熱体質」
- 高温多湿の環境に長時間さらされる
- 冷房と屋外の温度差により自律神経が乱れている
暑邪対策に役立つ生活習慣・養生法
養生のポイント | 実践内容 |
---|---|
こまめな水分補給 | 常温〜やや冷たい水で津液を補う(甘味・酸味の飲料も◎) |
外出時は直射日光を避ける | 帽子や日傘、UVケアで陽気の過剰侵入を防ぐ |
クールダウンと温活のバランス | 冷房による冷えすぎに注意し、就寝時は腹巻や足湯を活用 |
食事で潤いを補う | 旬の果物や水分の多い野菜を取り入れる |
薬膳で整える暑邪対策|“清熱・生津”の食材
暑邪によって熱がこもり、体液が消耗しているときには、「清熱(熱を冷ます)」と「生津(潤いを生む)」の働きを持つ食材が有効です。
食材 | 効果 | 調理例 |
---|---|---|
緑豆 | 清熱・解毒・利水 | 緑豆スープ、緑豆粥 |
冬瓜 | 利尿・むくみ改善 | 冬瓜スープ、炒め物 |
キュウリ | 体の熱を冷まし、潤す | 酢の物、サラダ |
スイカ | 清熱・生津・解渇作用 | スイカジュース、塩を添えて補気も可 |
トマト | 胃を潤し、熱を鎮める | 冷製トマトスープ、サラダ |
✅ おすすめ薬膳レシピ:冬瓜と緑豆の夏バテ防止スープ
→ 体の熱を穏やかに冷ましながら、潤いと元気を補います。
鍼灸で整える暑邪のケア|熱と水分バランスを調整するツボ
ツボ | 所在 | 主な効果 |
---|---|---|
大椎(だいつい) | 首のつけ根・背骨の突起下 | 体表の熱を冷ます・免疫調整 |
合谷(ごうこく) | 手の甲・親指と人差し指の間 | 気を巡らせ、体の熱を調整 |
曲池(きょくち) | 肘の外側 | 清熱・発汗コントロール |
内関(ないかん) | 手首の内側 | 胃の不快感や吐き気に有効 |
足三里(あしさんり) | 膝の下、スネ外側 | 消化促進・体力回復に役立つ |
軽く押したり、温かいお灸を使って血流と気の巡りを整えるのがおすすめです。
まとめ|暑邪は“潤しながら冷ます”が基本
暑邪は、夏の高温によって体内の熱と水分バランスを乱す外邪。
のぼせ・口渇・疲労感などの症状が現れたら、無理せず体をクールダウンし、清熱・潤いを補う食事と生活習慣を心がけましょう。
冷たいものばかりを摂取して逆に内臓を冷やしすぎないよう、“潤しながら整える”という中医学的なバランス感覚が暑邪対策のポイントです。
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