日本鍼灸大学 
はじめに：冷えやすく、疲れやすい…それは「陽虚」かもしれません
✔ 手足が常に冷たい
✔ トイレが近く、むくみやすい
✔ 朝起きるのがつらく、日中もだるい
✔ 冬に体調を崩しやすい
✔ お腹や腰が冷えると不調が出る
こうした症状に心当たりがあれば、あなたは「陽虚（ようきょ）体質」かもしれません。
中医学では、「陽＝体を温め、動かす力」と考えられており、陽虚は体のエネルギーの冷え込み＝“冷え体質”とされています。
この記事では、陽虚の原因、チェックリスト、改善のための食事・生活養生・漢方・鍼灸までを詳しく解説します。
1. 陽虚とは？中医学でいう“体の冷えとエネルギー不足”
✅ 「陽」とは何か？
中医学では、「陽」は体を温め、活動を促すエネルギー。
「陰」が潤いなら、「陽」は熱や代謝に相当します。
✅ 陽虚の状態とは？
陽気が不足すると、次のような症状が現れます：
- 冷え（手足・お腹・腰）
- 疲れやすさ・無気力
- むくみ・下痢
- 冬に体調を崩しやすい
- 温めると調子が良くなる
2. 陽虚体質チェックリスト（10項目）
5つ以上当てはまる方は陽虚体質の可能性が高いです。
| チェック項目 |
|---|
| 手足が冷たい・体が温まりにくい |
| トイレが近い、尿が透明に近い |
| むくみやすく、体が重だるい |
| 寒いとお腹や腰が痛くなる |
| 冷たい飲食で下痢・腹痛が起こる |
| 口数が少なく、声が小さい |
| 朝が特につらく、寝ても疲れが取れない |
| 顔色が白っぽく、ツヤがない |
| 寒がりで、暑さには比較的強い |
| 温かい飲み物や食事で体調が良くなる |
3. 陽虚の主な原因
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 先天的体質（元々の虚弱） | 生まれつき陽気が不足している |
| 長期の疲労・過労 | 陽気が消耗し、体が冷えやすくなる |
| 冷たい食べ物・飲み物の摂りすぎ | 胃腸の陽気が傷つく |
| 冷房・薄着による冷えの蓄積 | 外からの冷えが内臓に影響 |
| 加齢による腎陽の低下 | 特に更年期以降に増える傾向あり |
4. 陽虚体質のための生活養生法
✅ 食事で「陽気」を補い、体を温める
| おすすめ食材 | 効果 |
|---|---|
| しょうが、ねぎ、にんにく | 体を温め、冷えを追い出す |
| 羊肉、鶏肉、鹿肉 | 補陽作用があり、特に冬に◎ |
| シナモン（桂皮）、八角、クローブ | 中薬にも使われる温性スパイス |
| 黒ごま、くるみ、山芋 | 腎を補い、腰や下半身の冷えを改善 |
| ごぼう、にんじん、れんこん | 土の中で育つ根菜は“温養”に効果的 |
➡️ 食材は基本温かくして食べること。冷たい飲み物・生野菜・冷菓は控えめに。
✅ 日常生活でできる陽気アップのコツ
- 腹巻き・レッグウォーマー・首元の保温を習慣に
- 寝起きや就寝前に白湯を1杯飲む
- 冷房の効いた室内では必ずひざ掛けを使用
- 寒い時期はぬるめの湯船で20分の入浴を
✅ 運動で“陽気”を巡らせる
- 軽い筋トレ、ウォーキング、ラジオ体操がおすすめ
- 汗をかきすぎない程度に、定期的に体を動かすことが大切
- 朝の軽いストレッチは陽気を起こすスイッチに
5. 陽虚タイプにおすすめの漢方と鍼灸
🌿 漢方薬（補陽剤）
| 処方 | 対応症状 | 備考 |
|---|---|---|
| 八味地黄丸（はちみじおうがん） | 腰痛、足腰の冷え、頻尿 | 腎陽虚の基本処方 |
| 真武湯（しんぶとう） | むくみ、冷え、下痢 | 胃腸と腎陽を温める |
| 人参湯 | 胃腸虚弱、冷えによる食欲不振 | 温中補陽、消化器の冷えに対応 |
| 桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん） | 血行不良、月経不順 | 陽気を巡らせつつ血を調整 |
※ 自己判断は避け、専門家の診断で「証」に合った処方を選ぶことが重要です。
🪡 鍼灸
| ツボ | 効果 |
|---|---|
| 命門（めいもん） | 腎陽を補う中心的なツボ |
| 関元（かんげん） | 下腹部を温め、陽気を養う |
| 足三里（あしさんり） | 体力・免疫力UPに定番のツボ |
| 太渓（たいけい） | 冷えと疲労の改善に |
鍼灸では、「陽気を補う」「経絡を温める」ことを目的とし、冷えの根本改善にアプローチします。
✅ まとめ：陽虚タイプは“温めて補う”ことがカギ
陽虚体質は、体を温めるエネルギーが不足して冷えやすくなっている状態です。
温かい食事、十分な睡眠、適度な運動、冷え対策を意識することで、陽気を育てる生活ができます。
特に、慢性的な冷えや体力不足に悩む人は、「冷えをがまんする」のではなく、体質改善を意識したケアを。
“体の芯から温まる”ことで、本来の元気を取り戻していきましょう。
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