はじめに:まちづくりと医療の意外な関係
SDGs目標11は「住み続けられるまちづくりを」。災害に強く、環境にやさしく、誰もが安心して暮らせるまちをつくることを目的としています。
一見すると建築や都市開発の話に思えますが、実は「医療・福祉の充実」も欠かせない要素です。
人が安心して暮らすためには、身近に健康を支える存在が必要です。地域に根差した鍼灸院は、そのまちの「健康インフラ」として大きな役割を果たせます。
地域における鍼灸院の役割
鍼灸院は病院と比べて小規模ですが、柔軟性と身近さを強みとしています。
- 誰でも立ち寄れる身近な医療拠点
軽い不調や未病の段階で相談できる存在。 - 高齢者ケアの受け皿
歩行困難な方に訪問施術を行い、自宅で安心して暮らせる環境を支える。 - 地域住民同士の交流の場
待合室や健康教室を通じて、人と人がつながる場になる。 - 地域包括ケアシステムの一員
医師・看護師・介護職と連携してチーム医療に参加する。
こうした活動はすべて「誰もが安心して暮らせるまちづくり」につながります。
高齢化社会とまちづくり
日本の多くの地域は急速に高齢化が進んでいます。
「住み慣れたまちで最期まで暮らしたい」という声は多いですが、現実には医療や介護の不足から施設入所を余儀なくされることも少なくありません。
ここで鍼灸師は、在宅ケアや介護予防を通じて高齢者の自立を支えます。
- 鍼灸による慢性痛緩和で活動量を維持
- 認知症予防を目的としたツボ刺激や体操指導
- 転倒防止のための筋力・バランス改善プログラム
これらは「地域包括ケアシステム」の中でも期待される役割です。
鍼灸院が地域に貢献できる実践例
- 健康講座や公開セミナーの開催
「季節の養生法」「シニア向けセルフケア」などを公民館や集会所で実施。
→ 地域住民が健康知識を共有でき、交流の場にもなる。 - 自治体・福祉施設との連携
介護予防教室や高齢者サロンに参加し、専門知識を活かした施術や講話を行う。 - 災害時の支援拠点
避難所などでの健康管理、肩こりや腰痛のケアは被災者にとって大きな助けとなる。 - 地域イベントへの参加
まちづくりイベントや祭りで「ツボ体験ブース」を出すなど、地域とのつながりを強める。
鍼灸と防災・レジリエンス
まちづくりには「災害に強いまちづくり」という視点も含まれます。
災害時には避難生活による体調不良(エコノミークラス症候群、冷え、ストレスなど)が問題になります。
鍼灸師が避難所で施術や体操指導を行えば、被災者の健康悪化を防ぎ、心の支えにもなります。
このように「防災と健康支援の専門家」として関わることも、SDGs目標11に合致します。
世界から見た鍼灸と地域社会
WHOは「伝統医療を地域医療の一部として活用すること」を推奨しています。特に鍼灸は、医師不足や高齢化が進む国々で重要な役割を果たしています。
日本でも同じように、地域医療の担い手として鍼灸師が再評価されつつあります。
つまり鍼灸師は、地域社会を持続可能にするための「世界基準の医療資源」として位置づけられるのです。
鍼灸院経営にとってのメリット
地域貢献と聞くと「ボランティア的で経営にはつながらない」と感じるかもしれません。
しかし実際には以下のようなメリットがあります。
- 地域での認知度が高まり、新規患者の来院につながる
- 行政や企業と連携する機会が増え、新しい収益源になる
- 「地域に必要とされる院」として長期的に経営が安定する
まちづくりに関わることは、社会的意義だけでなく鍼灸院の持続可能性にも直結します。
まとめ:まちに愛される鍼灸院が未来をつくる
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、地域医療を担う鍼灸師にとって重要なテーマです。
- 身近な医療拠点として地域住民を支える
- 高齢者ケアや介護予防で安心して暮らせる環境を実現
- 災害時には避難所で健康支援を行う
- 地域イベントや自治体との連携でまちづくりに参加
こうした活動は「社会のため」だけでなく、「院のため」にもなる取り組みです。
地域に根差した鍼灸師こそが、持続可能なまちづくりの担い手といえるでしょう。
関連:鍼灸の基礎知識:日本鍼灸の進化と現代医療における役割
関連:鍼灸師のための開業手続き完全ガイド|保健所・税務署への申請方法
関連:鍼灸とSDGsの意外な関係|サステナブルな医療を考える