はじめに
足は「第二の心臓」と呼ばれるほど全身の健康と密接に関わっています。歩行や姿勢保持だけでなく、経絡の要所としても重要で、鍼灸臨床では腰痛・自律神経失調・婦人科疾患など幅広く用いられます。足部の骨格は 足根骨・中足骨・趾骨 から成り、その形態とランドマークを正確に把握することでツボ取穴の精度が高まります。本記事では、足部の解剖学的特徴、骨学的ランドマーク、主要ツボとの対応、臨床応用を詳しく解説します。
足部の骨格構造
足根骨(Tarsal bones)
- 踵骨(Calcaneus):アキレス腱付着部。崑崙(BL60)、太谿(KI3)の基準。
- 距骨(Talus):足関節の中心。申脈(BL62)の基準。
- 舟状骨(Navicular):内側に位置。照海(KI6)の基準。
- 立方骨(Cuboid):外側に位置。臨床では腓骨筋腱と関連。
- 内側・中間・外側楔状骨(Cuneiform bones):中足骨と連結。
中足骨(Metatarsal bones)
- 第1〜5中足骨。特に基部と骨頭がツボ取穴の基準に。
- 第1中足骨基部:太白(SP3)、太衝(LR3)の基準。
趾骨(Phalanges)
- 母趾は基節骨・末節骨の2つ。他は基節骨・中節骨・末節骨の3つで構成。
- 爪甲角を基準に井穴を取穴。
主要ランドマークと触診
内果(Malleolus medialis)
- 内くるぶし。太谿(KI3)、照海(KI6)、三陰交(SP6)の基準。
外果(Malleolus lateralis)
- 外くるぶし。崑崙(BL60)、申脈(BL62)、丘墟(GB40)の基準。
舟状骨粗面
- 内側足弓中央の突出。照海(KI6)の取穴基準。
第1・第2中足骨間
- 太衝(LR3)の基準。肝経の要穴で全身調整に用いる。
踵骨隆起
- アキレス腱付着部。失眠(EX-LE10)の圧痛点として活用。
足部と関連する代表的なツボ
足関節周囲
- 太谿(KI3):内果とアキレス腱の間。腎経要穴。
- 崑崙(BL60):外果とアキレス腱の間。腰痛・坐骨神経痛に。
- 申脈(BL62):外果下方の陥凹。安神・不眠に有効。
- 照海(KI6):内果下方、舟状骨粗面下縁。婦人科疾患に。
足背・中足骨基部
- 太白(SP3):第1中足骨頭後内側。脾経要穴。
- 太衝(LR3):第1・第2中足骨間の陥凹。肝経要穴。
- 丘墟(GB40):外果前下方。胆経要穴。
足底
- 湧泉(KI1):足底前1/3、足指を屈曲したときの陥凹。意識回復・自律神経調整に。
爪甲角部(井穴)
- 厲兌(ST45)、隠白(SP1)、大敦(LR1)など。臓腑調整に応用。
臨床応用
1. 腰痛・坐骨神経痛
- 崑崙(BL60)、太谿(KI3)、申脈(BL62)。踵骨・外果・内果を基準に。
2. 婦人科疾患・不妊症
- 三陰交(SP6)、照海(KI6)、太衝(LR3)。内果・舟状骨・中足骨間を正確に触診。
3. 不眠・精神疾患
- 湧泉(KI1)、申脈(BL62)。踵骨・距骨を基準にすることで安定した取穴。
4. 消化器疾患・全身調整
- 太白(SP3)、太衝(LR3)。中足骨頭・間隙を利用して確実に取穴。
学び方のステップ
- 足関節を触る:内果・外果・舟状骨粗面を確認。
- 中足骨を追う:第1〜5中足骨を触り、骨頭と基部を区別。
- ツボを重ねる:太衝・太白・崑崙・太谿を骨学基準でプロット。
- 臨床ケースとリンク:腰痛患者、不眠患者、婦人科疾患患者を想定して選穴。
まとめ
足根骨・中足骨・趾骨は、足部経穴を正確に取穴するための「足の地図」です。内果・外果・舟状骨・中足骨間などの骨学的ランドマークを基準にすることで、太衝・太白・湧泉・崑崙・申脈など頻用ツボを正確に導けます。臨床では、腰痛・婦人科疾患・不眠・消化器疾患など幅広い領域で応用でき、足部解剖の理解が施術の精度を大きく高めます。
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