梅雨時の気分の重さは「湿邪」のせい?東洋医学で整える巡りと鍼灸ケアのコツ

「梅雨の時期になると、なんだかやる気が出ない」
「体が重くて、気分まで沈んでくる」
「雨が続くと、心もどんよりしてしまう」

そんな声が臨床の現場で増えるのが、まさに梅雨の季節です。
東洋医学では、この時期特有の不調を「湿邪(しつじゃ)」と捉え、体内の“巡りの停滞”が心にも影響すると考えます。

この記事では、梅雨とうつ症状の関係を東洋的にひも解き、
鍼灸師としてできるケアと患者さんへのセルフケア提案をわかりやすくまとめます。


梅雨時のうつ症状に多い訴えと背景

主な訴え東洋医学的解釈
体が重い・むくむ湿邪の停滞による「気の巡りの低下」
食欲不振・胃のもたれ脾虚+湿邪が脾を傷める
だるさ・無気力感気虚+湿の重だるさ → やる気低下
頭がぼーっとする・集中できない湿が上焦に停滞し、「脳霧」状態に

☞ この時期のうつ症状は、「気の低下」「水分代謝の悪化」「脾の機能低下」と密接に関係しています。


「湿邪(しつじゃ)」とは?|東洋医学的な梅雨の捉え方

◆ 湿邪の性質とは

  • 重くて粘る(重濁性):体も心も“重だるく”感じる
  • 停滞しやすい(着滞性):巡りが悪くなり、気分まで沈む
  • 下にたまりやすい:下半身のむくみやだるさに出やすい
  • 脾を傷めやすい:消化力が落ち、元気の源が不足する

☞ 梅雨時の「なんとなく気分が重い」「やる気が出ない」は、湿邪による“巡りの停滞”のサインなのです。


鍼灸でできる「湿と心」のケア

◆ ① 湿をさばく基本穴

ツボ位置主な作用
陰陵泉(いんりょうせん)脛骨内側・膝下脾の働きを助け、湿を排出
豊隆(ほうりゅう)脛骨外側・膝と足首の中間胃経の“痰湿”排出の要穴
足三里(あしさんり)脛骨外側・膝下3寸胃腸を整え、気を補う

➡「足の湿は、足で抜く」——下半身にたまった湿邪を、やさしく動かす施術を。


◆ ② 自律神経と“心の重さ”に働きかける

ツボ主な作用
神門・内関心の巡りを整え、不安感や焦燥感を緩和
太衝肝の気を巡らせ、イライラや停滞感を改善
中脘・脾兪胃脾の機能を高め、気の生成を助ける

💡 **湿を抜くだけでなく、「気を補い、巡らせる」**ことで心の明るさも取り戻せます。


鍼灸師が提案できる生活アドバイス

✅ 1. 湿をためない食習慣

推奨理由
温かい汁物(味噌汁・スープ)胃腸を温め、湿を流す
ハトムギ・はと麦茶利水・美肌・むくみ解消に
生姜・紫蘇・ねぎ発汗を促し、気の巡りを助ける
発酵食品(納豆・ぬか漬け)脾を助け、消化をサポート

❌ 避けたい:冷たいもの・乳製品の取りすぎ・甘すぎるお菓子・生野菜過多


✅ 2. 日常で「湿をさばく」習慣

  • 朝、白湯を飲む
  • 湯船にゆっくり浸かる(重だるさの排出)
  • 部屋の換気・除湿を心がける
  • スマホの見すぎは湿をためる→“情報の湿”にも注意

➡ 東洋医学では「湿」は外にも内にもある。情報のとりすぎ=心の湿邪と考える視点も。


まとめ|湿をさばけば、心も軽くなる

梅雨は心身ともに停滞しやすく、
いつも以上に“不調を感じやすい季節”です。

鍼灸師としては、

  • 湿を巡らせる
  • 胃腸を整える
  • 呼吸と気を軽くする

この3つの柱で、心と体の“重さ”を解放する施術が求められます。

「湿を抜く=気を通す」
「巡れば、心は自然と上を向く」
——そんな施術の意識を持ちながら、
この時期を元気に過ごせる体づくりを支えていきましょう。


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