「スマホばかり見て、寝不足だとわかっているのにやめられない」
「SNSを見たあと、なんだか気分が沈む」
「通知に追われて疲れてしまう」——
こうしたSNS疲れ(ソーシャルメディア・ファティーグ)による心身の不調は、今や思春期世代にとって“新しい時代のストレス”となっています。
この記事では、
- SNSとうつの関係性
- 鍼灸臨床で現れる若者の特徴
- 東洋医学的な理解とケアのヒント
をお伝えし、鍼灸師として「寄り添い、整える視点」を育むための一助になれば幸いです。
なぜSNSが思春期の心を疲れさせるのか?
◆ 情報過多と「比較疲れ」
- 他人のキラキラした投稿を見て、自分と比較して自己否定
- 常に誰かの評価・反応(いいね・コメント)に振り回される
◆ 休む時間がなくなる「常時接続ストレス」
- SNS通知やLINEに反応し続けることで、脳が休まらない
- 夜中のスクロールがやめられず、睡眠障害やイライラに
◆ “つながり”の過剰と孤独の矛盾
- オンラインでつながっていても、本音を言えず孤独を感じる
- 「グループLINEの空気がこわい」「既読スルーが気になる」など、見えない緊張が続く
☞ こうした蓄積が、「SNS疲れ → 不安感 → 無気力・うつ症状」とつながっていきます。
鍼灸臨床で見られる若者のサイン
実際の施術現場では、SNS疲れによる不調が**「体の症状」として現れる**ことも多いです。
身体症状 | 背景にある可能性 |
---|---|
慢性的な首こり・肩こり | スマホ姿勢・緊張持続・睡眠不足 |
胃の不快感・食欲不振 | 情報過多による脳疲労・自律神経乱れ |
過眠・眠れない | 寝る直前までのブルーライトと緊張 |
呼吸が浅い・胸苦しい | 常時緊張+SNS空間での“気疲れ” |
☞ 見た目には元気そうでも、「話すと涙が出てくる」ケースも珍しくありません。
東洋医学で見る「SNSうつタイプ」の見立て
◆ 肝気鬱結(かんきうっけつ)
- 情報ストレスによる感情の抑圧
- イライラ・ため息・お腹の張り・月経不順などを伴う
◆ 心脾両虚(しんぴりょうきょ)
- 思い悩みすぎて気血が不足
- 集中できない・不安感・食欲低下・倦怠感
◆ 陽気不足・瘀血タイプ
- 睡眠不足+冷え+運動不足
- 身体が重い・むくみ・顔色が悪い・生理痛が強い
鍼灸でのアプローチ|整える視点と対応のヒント
◆ ① 刺激の強さを“最小限”に調整
- 刺さない鍼、てい鍼、お灸のみでも◎
- 若者には「やさしい施術=信頼」につながる
◆ ② 呼吸と副交感神経にアプローチ
ツボ名 | 効果 |
---|---|
神門・内関 | 不安・動悸・イライラに |
太衝・行間 | 肝気の巡りを整える(肝気鬱結に対応) |
三陰交・足三里 | 血を補い、冷え・疲労感を緩和 |
💡 呼吸を誘導するような触れ方(息を合わせる、ペースをゆっくり)を意識することも大切です。
◆ ③ 「スマホを持つ手」にもアプローチを
- 肘〜手首の張り・熱感をチェック
- 労宮・合谷へのお灸や軽い刺激が好反応を示すことも
→ 実は、手をゆるめるだけで“頭のこわばり”もゆるむケースが多くあります。
鍼灸学生・若手鍼灸師へのアドバイス
- SNSやスマホ依存は現代特有の“生活の一部”
- 否定せず、「それを前提にどうサポートするか?」を考える視点が大切
- 「体の不調から整えて、心の休息につなげる」
→ それが、鍼灸師ができる確かな一歩です
まとめ|“デジタル時代の疲れ”に、鍼灸のやさしさを
SNSに疲れた心は、休むきっかけも見失いやすいものです。
そんなとき、鍼灸という“非言語のケア”は、
「もうがんばらなくていいよ」
「そのままでいて大丈夫だよ」
と、静かにメッセージを届ける力を持っています。
ぜひ、
- 情報にさらされすぎた若者の“呼吸”を整える
- 五感で安心できる場所をつくる
- スマホ疲れの先にある「自分を感じる時間」を提供する
そんな鍼灸師の在り方を、一緒に育てていきましょう。
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