「赤ちゃんはかわいいのに、気持ちが沈んで涙が出る」
「誰にも頼れず、ひとりで抱え込んでいる感じがする」
「体が思うように動かず、気力もなくて苦しい」——
出産後にこうした状態が続く場合、それは「産後うつ」かもしれません。
産後うつはホルモンの変動や睡眠不足、育児ストレスなどが複合的に関係しており、決して“甘え”ではありません。
東洋医学では、産後うつは「気血(きけつ)の消耗」「血虚(けっきょ)」や「腎虚(じんきょ)」として捉えられます。
この記事では、東洋医学的に見る産後うつの原因と特徴、そして回復のための漢方・ツボ・食事などセルフケアのヒントをやさしく解説します。
東洋医学で見る「産後うつ」=気血の不足と冷え
出産は、大量の「血」と「気(エネルギー)」を失う大仕事。
東洋医学では、出産後の女性は“虚(きょ)”=エネルギーが足りない状態にあると考えます。
◆ 気血が不足するとどうなる?
- 不安感・焦燥感・涙もろさ
- 動悸・息切れ・顔色の悪さ
- 集中力の低下・物忘れ
- 冷え・倦怠感・不眠
これらはすべて、「血虚」「気虚」「腎虚」などと関係し、心と体が一緒に消耗しているサインです。
回復を助ける東洋的セルフケア①|漢方薬で“足りないもの”を補う
漢方名 | 主な作用 | 向いている状態 |
---|---|---|
加味帰脾湯(かみきひとう) | 不安・不眠・貧血・疲労感 | 気持ちの波が大きい・眠れない |
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 気力不足・胃腸虚弱・産後疲労 | 食欲がなく、気が出ないタイプ |
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) | 血と気をバランスよく補う | 産後の体力低下が長引いている |
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 血行改善・水分代謝・冷えに | むくみ・冷え性・月経トラブルもある場合に |
💡 ポイント:
産後はホルモンバランスも大きく揺れるため、自己判断ではなく、漢方専門医に相談するのが安心です。
東洋医学的セルフケア②|気血を巡らせるツボ刺激
ツボ名 | 効果 | 場所(目安) |
---|---|---|
三陰交(さんいんこう) | 血を補い、ホルモンバランスを整える | 内くるぶしから指4本分上の骨の内側 |
気海(きかい) | 元気を補い、疲れをやわらげる | おへそから指2本分下 |
神門(しんもん) | 不安・不眠・情緒の安定 | 手首の小指側のしわの上、くぼみ |
☞ やさしく指で押すか、湯たんぽやお灸で温めるのもおすすめです。
東洋医学的セルフケア③|産後の体をいたわる食習慣
✅ 積極的に摂りたいもの
- 温かい汁物(鶏団子スープ・根菜のお味噌汁)
- 黒い食材(黒ごま・黒豆・ひじき)→「腎」を補う
- 鉄分を含む食材(レバー・小松菜・ひじき)
❌ 避けたいもの
- 生野菜・冷たい飲み物(体を冷やす)
- 甘いパン・お菓子ばかりの食事(気を消耗)
💡 ポイント:
出産後は「栄養を足すこと」よりも、「体をあたため、消化を助けること」に重きを置くのが東洋医学の考え方です。
休むこと=回復のはじまりです
東洋医学では、「産後は骨休めの時期」とされています。
無理に動こうとせず、「横になる」「眠る」「温まる」ことこそが最大の治療になります。
✔ 家事をしない日があってもいい
✔ 泣いてばかりの自分を責めない
✔ 助けを求めるのは、弱さではなく“回復力”のあらわれ
まとめ|産後うつを「整える視点」で自分をいたわる
産後うつは、「心だけ」の問題ではなく、体の中からバランスが崩れている状態でもあります。
東洋医学では、心身をひとつのものとして見つめ、不足したエネルギーを補いながらゆっくり整えていくという考え方をします。
- 気血を補う漢方や食材
- 血行を促すツボ刺激や温め
- 家族や専門家に頼り、回復に専念する時間
そんなやさしいケアを少しずつ積み重ねることで、
「また笑えるようになる自分」と出会える日がきっときます。
あなたは、ちゃんと回復の道を歩んでいます。
今は、しっかり“自分を養う時間”を大切にしてくださいね。
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