トリガーポイントとドライニードリングの違い|鍼灸師が知るべきポイント

はじめに|トリガーポイントとドライニードリングの違いを理解する重要性

トリガーポイント鍼治療とドライニードリング(Dry Needling)は、どちらも筋肉の硬結(しこり)や痛みを軽減するための鍼治療 であるが、アプローチの仕方や考え方には違いがある。

トリガーポイント鍼治療 → 東洋医学の経絡・経穴と組み合わせて施術を行う
ドライニードリング → 筋膜や筋肉のトリガーポイントにピンポイントで刺鍼する、西洋医学的な手法

鍼灸師としてトリガーポイント施術を行う際には、ドライニードリングの考え方を理解し、適切に使い分けることが重要。本記事では、両者の違い、施術方法、適応症、施術のメリット・デメリット について詳しく解説する。


1. トリガーポイント鍼治療とドライニードリングの基本的な違い

トリガーポイント鍼治療とは?

トリガーポイント鍼治療は、東洋医学の経絡・経穴の考えを取り入れながら、筋肉のトリガーポイントを刺激する方法

特徴

  • 経穴(ツボ)を活用しながら、トリガーポイントを治療
  • 鍼の刺激により、筋肉の緊張緩和や血流促進を促す
  • 痛みの局所だけでなく、全身のバランスも考慮 して施術を行う

主な適応症
慢性的な肩こり・腰痛
東洋医学的な経絡の不調と関連した症状
全身の気血の流れを整える施術が必要なケース

ドライニードリングとは?

ドライニードリング(Dry Needling)は、トリガーポイントを直接刺激し、筋肉の異常収縮を緩和する西洋医学的な治療法

特徴

  • トリガーポイントのみに焦点を当て、周囲の経穴は考慮しない
  • 局所の筋緊張をターゲットにし、Twitch Response(局所筋収縮)を誘発
  • 鍼の刺入と抜鍼を素早く行うことが多く、強めの刺激を加える

主な適応症
スポーツ障害(筋肉の過緊張・可動域制限)
筋膜リリースを目的とした治療
筋肉由来の急性・慢性疼痛の改善


2. トリガーポイント鍼治療とドライニードリングの比較表

比較項目トリガーポイント鍼治療ドライニードリング
理論的背景東洋医学(経絡・経穴)+西洋医学(筋膜・トリガーポイント)西洋医学(筋膜・トリガーポイント)
施術対象トリガーポイント+経絡のバランストリガーポイントのみ
施術手順経穴を考慮しながら刺鍼筋肉のトリガーポイントへ直接刺鍼
施術時間置鍼(数分)+必要に応じて微細な刺激即座に抜鍼し、局所筋収縮を促す
施術の刺激比較的マイルドな刺激強めの刺激(局所筋収縮を狙う)
適応症慢性痛・全身のバランス調整筋肉由来の痛み・スポーツ障害
施術後のケア気血の調整+ストレッチ筋膜リリース+ストレッチ

ポイント:ドライニードリングは局所的なアプローチ、トリガーポイント鍼治療は全身のバランスも考慮した施術。


3. 施術の流れと刺鍼ポイント

トリガーポイント鍼治療の流れ

  1. 問診・触診 → 症状のある部位と経絡の流れを確認
  2. トリガーポイントと関連経穴を特定 → 経穴と筋の硬結をチェック
  3. 刺鍼(置鍼+軽い刺激) → 鍼を一定時間留め、血流を促進
  4. 抜鍼・アフターケア → 温熱療法・ストレッチの指導

主な刺鍼ポイント

  • 肩こり・頭痛 → 肩井(けんせい)、風池(ふうち)
  • 腰痛 → 腎兪(じんゆ)、志室(ししつ)
  • 坐骨神経痛 → 承扶(しょうふ)、環跳(かんちょう)

ドライニードリングの流れ

  1. トリガーポイントの特定 → 筋肉の圧痛点・硬結を確認
  2. 刺鍼(素早い刺激) → 鍼を素早く入れて抜く(Twitch Responseを誘発)
  3. 抜鍼・ストレッチ指導 → 筋膜リリースやリハビリを併用

主な刺鍼ポイント

  • 肩の可動域制限 → 棘上筋、棘下筋
  • 腰痛・殿部の痛み → 大腰筋、梨状筋
  • 膝痛・スポーツ障害 → 大腿四頭筋、ハムストリング

4. どちらを選ぶべきか?使い分けのポイント

トリガーポイント鍼治療が適しているケース

  • 慢性的な肩こり・腰痛など、全身のバランスが関与する症状
  • 経絡・経穴の影響を考慮した施術を行いたい場合
  • 患者が強い刺激を苦手とする場合

ドライニードリングが適しているケース

  • スポーツ障害など、筋肉の過緊張による可動域制限がある場合
  • 局所のトリガーポイントをピンポイントで刺激したい場合
  • 強い刺激を許容できる患者に対する施術

まとめ

トリガーポイント鍼治療とドライニードリングは、どちらも筋肉の緊張を緩めるための施術法だが、アプローチの違いを理解することが重要。

トリガーポイント鍼治療は経絡・経穴を考慮し、全身のバランスを整える
ドライニードリングはトリガーポイントに直接アプローチし、即効性を重視する
患者の症状や目的に応じて、適切に使い分けることが重要

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