1.アトピーとは?

アトピーとは、正式にはアトピー性皮膚炎と呼ばれる、慢性的に症状の増悪と寛解を繰り返す皮膚の炎症性疾患です。主な特徴は強いかゆみを伴う湿疹で、皮膚の赤み、ブツブツ、乾燥、ジュクジュクした状態などがみられます。
アトピー性皮膚炎は一時的な皮膚トラブルではなく、皮膚の構造的な弱さ(バリア機能低下)や体質、生活環境などが複合的に関与する慢性疾患と考えられています。感染症ではないため、他人にうつる病気ではありません。
2.アトピーの原因とは?
アトピーの原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症・悪化します。
① 皮膚バリア機能の低下
健康な皮膚は角質層が外部刺激や水分蒸散を防ぐ「バリア」の役割を果たしています。アトピーの方はこのバリア機能が弱く、水分が失われやすく、刺激物やアレルゲンが侵入しやすい状態になっています。
② 体質(アトピー素因)
アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患を起こしやすい体質(アトピー素因)と関連があります。家族にアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などがある場合、発症しやすい傾向が知られています。
③ 環境・生活要因
ハウスダスト、ダニ、花粉、汗、衣類の刺激、乾燥、睡眠不足、精神的ストレスなども、アトピーの症状を悪化させる因子とされています。
3.アトピーの主な症状
アトピー性皮膚炎の症状は年齢によって出やすい部位が変わりますが、共通して以下の特徴があります。
- 強いかゆみを伴う湿疹
- 赤み、ブツブツ、ジュクジュクした皮疹
- 皮膚の乾燥や粉をふいたような状態
- 慢性化による皮膚の肥厚・ごわつき
かゆみが強いため、掻くことで皮膚がさらに傷つき、炎症が悪化するという悪循環に陥りやすい点も特徴です。
4.アトピーと皮膚バリア機能の関係
近年、アトピー性皮膚炎の病態として特に重視されているのが皮膚バリア機能の破綻です。
角質層の水分保持力が低下すると、外部刺激に対する防御力が弱まり、炎症反応が起こりやすくなります。
このため、現在の治療では炎症を抑えることと同時に、皮膚バリアを補うケアが重要視されています。
5.アトピーの治療と日常ケア
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の程度に応じて段階的に行われます。
医学的治療の基本
- 外用薬(ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏など)
- 保湿剤によるスキンケア
- 重症例では内服薬や生物学的製剤
これらは、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに基づいて行われています。
日常生活でのケア
- 毎日の保湿を習慣化する
- 汗や汚れを早めに洗い流す
- 刺激の少ない衣類・洗剤を選ぶ
- 十分な睡眠と生活リズムを整える
アトピーは短期間で完治を目指す病気ではなく、長期的に症状をコントロールしていく視点が大切です。
6.まとめ
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能低下や体質、生活環境が複雑に関係する慢性の皮膚疾患です。
正しい知識を持ち、医療機関での治療と日常ケアを組み合わせることで、症状の安定を目指すことが可能です。
皮膚だけでなく、生活全体を見直す視点を持つことが、アトピーと向き合う第一歩となります。
温度とあわせて湿度を「数値で管理する」意識が、予防医学的にも重要なポイントといえるでしょう。
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