マイクロカレントとは?微弱電流療法の仕組み・効果・低周波との違いをわかりやすく解説

マイクロカレントとは?

マイクロカレントとは、マイクロアンペア(μA)単位の非常に弱い電流を体に流す微弱電流療法の一種です。人が刺激として感じることはほとんどなく、筋肉を収縮させたり、強い電気刺激を与えたりしない点が大きな特徴です。
この微弱電流は、人の体内を流れている生体電流に近い強さとされており、体が本来持つ回復環境を妨げにくい形で作用すると考えられています。

マイクロカレント療法は、低周波治療のように「筋肉を動かす」「強い刺激で痛みを抑える」ことを目的とするものではなく、ケガや炎症後の回復をサポートする補助的なアプローチとして用いられることが多い療法です。
そのため、スポーツ医療やリハビリテーション、コンディショニング分野を中心に、近年では美容分野にも応用が広がり、鍼灸師が臨床で活用することも多いです。

マイクロカレントの仕組み

生体電流と損傷電流の考え方

人体は、ケガや炎症が起こった際に、損傷部位の周囲で微弱な電気的変化が生じることが知られています。
これは一般に「損傷電流」と呼ばれ、組織修復に関与していると考えられています。

マイクロカレントは、この体内で自然に発生する電気的環境に近い刺激を再現することを目的としており、
強制的に筋肉や神経を動かすのではなく、生理的な反応を妨げにくい形で作用する点が特徴です。

筋肉・神経を興奮させない微弱刺激

低周波治療などと異なり、マイクロカレントは筋収縮を起こすほどの電流を流しません。
そのため、

  • 施術中にピリピリ感を感じにくい
  • 急性期のケガや炎症がある部位にも使用されることがある

といった特性があります。

この「刺激感の少なさ」が、医療・スポーツ現場でのコンディショニングや回復サポートに用いられる理由の一つです。

マイクロカレントに期待される効果

※以下は一般的に説明されている作用や活用目的であり、効果の現れ方には個人差があります。

痛みの軽減を目的とした使用

マイクロカレントは、強い刺激を伴わないため、痛みを抱えている部位に対して比較的穏やかに使用されることがあります。

  • 外傷後の違和感
  • 慢性的な筋・関節周囲の不快感
  • 炎症が落ち着くまでの補助的ケア

などに対し、回復環境を整える一手段として使用されるケースがあります。

組織修復・回復サポート

スポーツ医療やリハビリテーション分野では、

  • 捻挫
  • 打撲
  • 筋肉や腱への負担がかかった後

といった場面で、回復を妨げない補助的アプローチとしてマイクロカレントが活用されることがあります。

これは、微弱電流が細胞レベルの活動に影響を与える可能性が示唆されているためで、
治療の主役というより、回復を支える一要素として位置づけられています。

血流や循環環境への影響

マイクロカレントは直接的に筋肉を動かすわけではありませんが、
施術環境によっては局所の循環を意識したケアとして使用されることがあります。

血流やリンパの流れが滞ると、回復に時間がかかることがあるため、
そのような状態を考慮したコンディショニングの一環として取り入れられる場合があります。

美容分野でのマイクロカレント活用

近年では、美容機器にもマイクロカレントが応用されています。
主に顔や皮膚表面に使用され、

  • 肌のハリや引き締め感
  • フェイスラインのケア
  • 肌コンディションを整える目的

などで利用されています。

ただし、美容分野におけるマイクロカレントは医療行為ではなく、あくまで美容的ケアの一環であり、
効果の感じ方や持続性には個人差がある点を理解することが重要です。

マイクロカレントと低周波治療の違い

項目マイクロカレント低周波治療
電流の強さ非常に弱い比較的強い
刺激の感覚ほぼ感じないピリピリ感じる
主な作用回復環境のサポート筋収縮・鎮痛
使用目的コンディショニング・補助療法痛み緩和・筋緊張改善

どちらが優れているというより、目的や症状によって使い分けられる療法です。

使用時の注意点

マイクロカレントは比較的安全性が高いとされていますが、以下の場合は注意が必要です。

  • ペースメーカーなどの医療機器を使用している場合
  • 心疾患・重篤な持病がある場合
  • 妊娠中
  • 皮膚トラブルや強い炎症がある部位

これらに該当する場合は、必ず医師や専門家に相談した上で使用判断を行う必要があります

鍼灸師がマイクロカレントを活用する理由

鍼灸治療は、生体の反応を引き出しながら体のバランスを整える施術であり、刺激量の調整が重要な治療法です。マイクロカレントは刺激が非常に弱いため、鍼刺激と併用しても過度な負担をかけにくく、急性期や刺激に敏感な患者への対応幅を広げる手段として活用できます。
鍼灸治療を補完する物理療法の一つとして、症状や状態に応じた選択肢を増やせる点が、鍼灸師にとっての導入意義と言えるでしょう。

まとめ

マイクロカレントは、

  • 人体の生体電流に近い微弱な電流を用いる
  • 強い刺激を与えず、回復環境を整えることを目的とした療法
  • 医療・スポーツ・美容など幅広い分野で活用されている

という特徴を持っています。

即効性や万能性を期待するものではなく、体の自然な回復過程をサポートする補助的なアプローチとして理解することが重要です。

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