血虚体質とは?中医学で考える“血の不足”による不調と鍼灸による改善法

血虚体質とは?——“血の足りなさ”が引き起こす不調と不安

中医学では「血(けつ)」は体の栄養や潤いを与える大切な構成要素と考えられています。
その血が不足した状態が「血虚(けっきょ)」です。

血虚体質は、栄養の巡りが足りず、身体や精神に不調が出やすい状態
特に、女性やダイエット中の方、虚弱体質、疲労が溜まりやすい人に多く見られます。


✅ 血虚体質の主な症状

症状カテゴリ具体的な不調の例
外見的特徴顔色が青白い、唇の色が薄い、髪がパサつく
神経・精神系不眠、夢が多い、記憶力の低下、不安感
循環器系めまい、動悸、立ちくらみ
月経関連月経量が少ない、生理が遅れる、不妊傾向
皮膚・筋肉爪が割れやすい、しびれやこむら返りが起きやすい

✅ 血虚の原因とは?中医学の考え方

原因内容
脾胃の虚弱食べ物からの栄養(気血)の生成が不十分になる
長期のストレス・不眠精神の消耗で血が足りなくなる
慢性疾患や出血大量の血の消耗(月経過多・出産後など)
ダイエットや偏食血の源となる栄養が不足する
加齢気血の生成力が徐々に低下していく

脾(ひ)=消化器系の機能が弱い方や、精神活動が盛んな方に多く見られる傾向があります。


✅ 鍼灸での血虚体質ケア

鍼灸では、血の生成と巡りを助け、精神と身体を同時に養うことを目的とします。

🎯 主なアプローチ

  1. 脾・肝・心の経絡を補う
     → 血の生成・蓄積・運搬を担う臓腑を整える
  2. 精神安定と睡眠改善
     → 心血を養い、安心感を取り戻す
  3. 自律神経の調整
     → 鍼で交感神経優位を抑え、リラックス促進

🌿 血虚に有効なツボ(経穴)

ツボ名効果位置
三陰交(さんいんこう)血を養い、月経・冷えにも効果内くるぶしから指4本上、すねの内側
足三里(あしさんり)脾胃の機能を高め、血の生成を助ける膝の外側下、脛の筋肉のくぼみ
膻中(だんちゅう)心を落ち着かせ、動悸や不安感を緩和胸の中央、両乳頭の間
太衝(たいしょう)肝の経絡に働きかけ、血の巡りをよくする足の甲、親指と人差し指の間のくぼみ

お灸や温灸も効果的で、血を補いつつ体をやさしく温める施術が適しています。


🍠 血虚体質におすすめの薬膳食材

血虚は「養血(ようけつ)」=血を補う食材を中心に取り入れます。

食材働き
黒ごま・黒豆腎・肝を補い、血や精を養う
レバー(鶏・豚)血の生成に直接働く、鉄分豊富
にんじん・ほうれん草ビタミン・鉄・葉酸を含み造血作用がある
ナツメ・クコの実血を補い、心を落ち着ける
もち米・山芋消化器を補い、気血を生み出す基盤作りに

🌿 甘味と温性の食材を組み合わせて、消化にやさしく、心身を穏やかに保つ食事を心がけましょう。


🧘 血虚体質の生活養生法

方法解説
早寝早起き血を消耗する夜更かしを避ける
瞑想や呼吸法心を落ち着け、心血の消耗を防ぐ
軽い運動血流促進と自律神経の安定に
温める生活寒さによる血行不良を避ける
バランスの取れた食事過剰なダイエットや偏食は禁物

✅ まとめ:血虚体質は“血を養い心を落ち着ける”ことが基本

血虚体質は、「体の中の栄養と潤いが足りない」状態
放置すれば、不眠・情緒不安・婦人科のトラブルなどにつながる恐れもあります。

鍼灸は、血の生成と流れを改善し、心と体を同時に整える有効な手段です。
あわせて、薬膳や生活養生で身体を優しくいたわることが、改善への近道になります。

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