内因化した邪気とは?|外邪が「慢性化」する中医学の見方
中医学では、本来「外から侵入する邪気(六淫)」が、体内で処理しきれずに長期間とどまると、体の中に“内在する邪気”として残り、慢性不調の原因になると考えられます。
この状態を「内湿(ないしつ)」「内熱(ないねつ)」「内風(ないふう)」などと表現し、慢性的な疲れ・不眠・皮膚炎・めまい・冷え・むくみ・生理不順など、幅広い体調不良に関係しています。
内湿(ないしつ)とは?|体にたまった湿気が原因の不調
特徴と症状:
- 体が重だるい、疲れが抜けない
- むくみやすい、下痢しやすい
- 舌が大きく、歯型がついている
- 頭や胃が重く感じる
- 湿疹、帯下(おりもの)、にきび
原因:
- 油っこい食事、冷たい飲食物のとりすぎ
- 運動不足、ストレスでの気滞
- 脾胃の機能低下(=水分代謝の悪化)
養生のポイント:
- 消化を助ける食材(ハトムギ、陳皮、大根)
- 水分代謝を整える(軽い運動・入浴)
- 甘いもの・乳製品・冷たい飲み物を控える
内熱(ないねつ)とは?|体内にこもった熱の蓄積
特徴と症状:
- 口内炎、ニキビ、便秘
- イライラ、顔が赤い、のぼせる
- 口が苦い、眠りが浅い・夢を多く見る
- 舌が赤く、苔が黄色く厚い
原因:
- ストレス、怒りの感情(肝火)
- 辛い・脂っこい食事、飲酒の習慣
- 夜ふかし、スマホやPCの見過ぎによる“陰液の消耗”
養生のポイント:
- 清熱作用のある食材(緑豆、トマト、セロリ)
- 十分な睡眠で陰液を補う
- アルコールや辛味の強い食材を控える
内風(ないふう)とは?|体内で風のように起こる揺らぎや痙攣
特徴と症状:
- めまい、ふらつき、耳鳴り
- 手足のしびれ、ふるえ、こむら返り
- 高血圧による頭痛、脳卒中後遺症
- 突然の筋肉のひきつれ、震え
原因:
- 肝の不調(肝風内動)
- 血虚、陰虚(=潤い不足による興奮状態)
- 慢性疲労、ストレス、脱水
養生のポイント:
- 血を補う食材(ナツメ、黒ごま、レバー)
- 気血の巡りを整えるツボ押し(太衝・風池など)
- 急な運動を避け、穏やかな養生を重視
内湿・内熱・内風の見分け方|舌・便・気分も重要な指標
内邪の種類 | 舌の特徴 | 排泄物 | 気分・情緒 |
---|---|---|---|
内湿 | 白くべたつく苔、歯型舌 | 粘り・下痢・浮腫み | 重だるさ、集中力低下 |
内熱 | 赤い舌、黄色い苔 | 便秘・尿が濃い | イライラ、焦り |
内風 | 赤く乾燥した舌、動きが多い | しびれ、震え、ふらつき | 神経過敏、不安感 |
✅ これらの特徴を組み合わせて「証」を立て、体質に合った養生を行うのが中医学的アプローチです。
薬膳とツボで整える「内邪」対策
薬膳の一例:
| 内湿 | はと麦粥、陳皮と大根のスープ |
| 内熱 | 緑豆とトマトの冷製スープ、セロリと豆腐の炒め物 |
| 内風 | 黒ごま粥、ナツメと桂枝のスープ、百合根入りおかゆ |
鍼灸の主なツボ:
| 内湿 | 陰陵泉・足三里・中脘 |
| 内熱 | 曲池・大椎・太衝 |
| 内風 | 風池・太衝・合谷・懸鐘 |
まとめ|“体に残る邪気”を放置しないのが体調管理の鍵
六淫が外から入る「外邪」だとすれば、内湿・内熱・内風は、体質や生活習慣から生まれる“内なる邪気”です。
日々の積み重ねによって現れるこれらの内邪は、慢性不調の根っことなる原因です。
「なんとなく調子が悪い」「病院では異常がない」といった場合こそ、中医学的視点で体内のバランスを見直し、薬膳・鍼灸・生活養生でじっくり調整していくことが大切です。
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