SOAPカルテを学生・新人鍼灸師が習得するために|現場で活きる記録練習法

はじめに

鍼灸学校では一応「SOAP」という言葉は習うけれど、実際の現場ではどう書けばいいのかがわからない──。
これは多くの鍼灸学生・新人鍼灸師が抱える共通の悩みです。

SOAPカルテは単なる「記録の型」ではなく、施術者の思考過程を整理し、第三者にも伝わる形で残す技術です。
この記事では、これから現場に出る・出たばかりの鍼灸師のために、SOAP式カルテの書き方と練習法を具体的に解説します。


なぜSOAPが必要なのか? 新人こそ身につけたい理由

✅ 判断の根拠が見えるようになる

「とりあえず鍼を打つ」から、「この理由でこの施術をした」に変わる。

✅ 施術の振り返りができる

患者の変化が記録で可視化され、次の一手が見えてくる。

✅ 先輩や他スタッフと情報共有ができる

カルテを読めば「なぜそうしたのか」が理解でき、連携しやすい。


各項目をどう書く? 学生・新人向けチェックリスト

項目書く内容よくあるミス改善のヒント
S患者が言ったこと「なんとなく痛い」とだけ書く「どこが・いつから・どうなると・どんなふうに」まで聞く
O観察・診察所見脈や舌を省略、姿勢を記録しない「視診・触診・舌・脈・姿勢」を毎回意識する
A病態評価・証立て「肩こり」で終わる「なぜ肩こりが起きてるか?」まで踏み込む
P施術・通院計画・養生「また施術を行った」で終わる「何のために何をしたか」を明記、次回の予定も記録

SOAP式カルテの練習方法(現場で役立つ3ステップ)

ステップ①:先に「SとO」をしっかり書く

最初のうちは、評価(A)や計画(P)を難しく感じるもの。
まずは患者の言葉(S)と自分が見た事実(O)を丁寧に記録することから始めましょう。


ステップ②:「A」に1行でも自分の判断を書く

いきなり証立てを完璧にしようとせず、
「肩こりの原因は肩甲挙筋の緊張と姿勢の崩れ」など、自分なりの考察を1文でも書いてみる


ステップ③:「P」に“次回”の視点を入れる

「施術内容」を記すだけでなく、
「次回何を確認するか(例:夜間の眠り・肩の可動域など)」まで含めて書く習慣をつけましょう。


よくある初心者の不安とその解消法

「証が立てられません…」

→無理に八綱・臓腑にこだわらなくてもOK。
「冷えている」「ストレスが強い」など状態の傾向が評価になっていきます。


「書きすぎて時間が足りません…」

毎回全部を書こうとしないこと。
SとOは前回との変化を中心に、AとPは特に重要な変化・判断に絞ると良いでしょう。


「他の人のカルテが読めない/自分のも読まれにくい」

読みやすいカルテは「文ではなく項目で書く」こと。
「主訴:〇〇」「圧痛:〇〇」「評価:〇〇」など区切ると理解されやすくなります。


模擬カルテ記入例(学生実習レベル)

  • S:「2日前から右腰が重い。特に長時間立っていると辛い」
  • O: 腰部圧痛(L3〜L5)、舌質淡紅・苔薄白、脈は沈でやや弱
  • A: 腰部の筋緊張と冷えが原因と考えられる。軽度の腎陽虚傾向
  • P: 腎兪・命門に温灸+軽い手技、週1回施術を2回行い様子を確認。保温と腹巻を指導

まとめ

SOAP式カルテは、「書く技術」でありながら「考える力を育てる訓練」でもあります。
新人のうちは“完璧さ”よりも、「観察して、考えて、記録する」プロセスを反復することが何より大切です。

カルテを書くことを恐れず、「書きながら学ぶ」ことで、自信を持って現場に立てるようになります。

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▶️ SOAP記録でよくあるミスとその対処法
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