問診とは?—中医学における体質・証を見極める質問のポイントと診断の進め方を解説

はじめに:中医学の問診は“体と心”の全体像を探る対話

「今日はどんな症状がありますか?」
「夜は眠れていますか? 食欲は?」
「便の状態や冷えの有無はどうですか?」

中医学における「問診(もんしん)」は、単なる症状の確認にとどまらず、体の内外すべてのバランスを把握するための対話です。

  • ✔ 体質や証(気虚、陰虚、瘀血など)の判断
  • ✔ 現在の症状の背景にある原因の探求
  • ✔ 五臓六腑や気血津液の状態の確認
  • ✔ 生活習慣や感情の乱れも視野に入れる

この記事では、中医学における問診の目的や進め方、具体的な質問項目について、わかりやすく解説します。


1. 中医学における問診の目的と特徴

中医学では「証(しょう)を導き出すための情報収集」として、問診が重要な役割を果たします。
西洋医学のように「症状=病名」と直結するのではなく、全体的なバランスを見て証を組み立てるための対話が求められます。

✅ 問診で探るのはこんな情報

  • 自覚症状の内容とその経過
  • 気血津液(エネルギー・血液・体液)の状態
  • 陰陽・虚実・寒熱の傾向
  • 五臓六腑の機能状態
  • 生活習慣・食事・睡眠・感情の状態

2. 中医学の問診項目一覧【カテゴリ別】

問診では、次のような項目に沿って質問が行われます。
鍼灸院・漢方薬局などでもよく聞かれる項目ばかりです。

✅ ① 主訴と症状の詳細

  • いつから? どこが? どんなふうに?
  • 増悪・緩和要因(天候・食事・ストレスなど)
  • 症状の変動(時間帯・月経周期など)

✅ ② 全身状態

項目質問の例
エネルギー疲れやすい/元気がない/無気力
体温感覚冷えやすい/ほてる/汗をかきやすい
喉の渇き水をよく飲む?/冷たいのが好き?
発汗傾向無汗/寝汗/異常な発汗
食欲食欲旺盛/食欲低下/もたれやすい
便通便秘/軟便/日によって変わる
尿頻尿/色が濃い/むくみ
睡眠入眠しにくい/途中で目が覚める/夢が多い
精神状態イライラ/不安感/憂うつ/緊張しやすい

✅ ③ 女性特有の項目(婦人科的問診)

  • 月経周期・期間・量・色・痛みの有無
  • 生理前後の症状(イライラ・乳房の張りなど)
  • 妊娠・出産歴、更年期症状の有無

✅ ④ 生活環境と体質傾向

  • 食生活(冷たい物を好む、脂っこい物が多い など)
  • 活動量や運動習慣の有無
  • ストレス・感情の起伏の頻度
  • 睡眠時間・生活リズム
  • 季節変化への体調の反応(梅雨に不調/冬に冷えるなど)

3. 問診を通じて導かれる証の例

問診で得た情報を総合し、以下のような証(しょう)を判断します。

問診内容の例導かれる証
疲れやすく、声が小さく、食後眠い気虚証
寝汗、ほてり、口が乾く陰虚証
生理痛が強く、血塊が混じる瘀血証
むくみやすく、頭が重い、舌が白い痰湿証
便秘、イライラ、不眠実熱証・肝火上炎

このように、症状だけでなく、体質や感情・生活習慣を総合的に判断することが、中医学の問診の特長です。


4. 問診の進め方とポイント

✅ 聴く力と共感が大切

  • 患者が話しやすい雰囲気づくり(非ジャッジ・受容)
  • 表情や話し方、ためらいのニュアンスも観察
  • 答えにくい質問も、目的を伝えて丁寧に聞く

✅ 過去の経過や病歴も確認

  • 以前の病気、治療歴、薬の服用状況
  • 体質の変化や生活の転機(転職、出産など)

5. セルフチェックにも応用可能!

中医学の問診項目は、セルフチェックや養生のヒントにも活用できます。

✦ たとえば…

  • ✔ 「最近、汗をかきやすくて疲れやすい」→ 気虚の傾向?
  • ✔ 「夜になるとほてって眠れない」→ 陰虚の傾向?
  • ✔ 「むくみやすく、食後に胃が重い」→ 痰湿体質?

これらの感覚をもとに、自分に合った漢方や養生法を選ぶ第一歩にできます。


✅ まとめ:問診は「体の声」と「生活の背景」を知るための対話

中医学における問診は、単なる症状の聞き取りではなく、その人の生活、体質、感情の背景までを探る大切なプロセスです。

  • ✔ 証を導き、治療方針を正確に立てるために不可欠
  • ✔ 気血・津液、五臓、陰陽などの状態を明らかにする
  • ✔ セルフケアや養生のアドバイスにも直結

鍼灸院や漢方薬局で問診を受ける際には、できるだけ正直に・詳細に答えることが、よりよい診断と治療への近道です。


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