はじめに:眠れない夜に「体質」を見直してみる
現代人の多くが抱える「不眠」。
寝つきが悪い、夜中に目が覚める、眠りが浅い——これらの症状を、中医学では「神(しん)の不安定」「陰陽バランスの乱れ」としてとらえます。
不眠の原因を「自律神経の乱れ」や「ストレス」で済ませるのではなく、体質・内臓の状態・感情との関係まで含めて診るのが中医学の特徴です。
1. 中医学における不眠の考え方
✅ 「神(しん)」とは?
中医学での「神」は、心身のバランスや意識活動の源とされます。
「神」が安定していれば眠りも深く、安らか。乱れていると眠れなくなります。
また、不眠は以下のような内的アンバランスが背景にあります:
- 気血の不足(体のエネルギーが足りない)
- 陰陽のバランスの崩れ(陰虚)
- 肝や心の不調(ストレス、感情の乱れ)
2. 不眠のタイプと体質別の原因
不眠にも体質によってさまざまなタイプがあり、アプローチ方法も異なります。
🌙 陰虚火旺(いんきょかおう)タイプ
特徴 |
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寝つきが悪い、夢を多く見る、寝汗をかく、口が渇く |
「陰」が不足し、「陽」の火が暴走している状態 |
🧾 対処法:陰を補う(六味地黄丸、知柏地黄丸)、潤いのある食材(豆腐、白きくらげ)
🔥 心脾両虚(しんぴりょうきょ)タイプ
特徴 |
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眠りが浅くてすぐ目が覚める、動悸、不安、疲れやすい、食欲がない |
「心」と「脾」が弱って気血が足りない状態 |
🧾 対処法:気血を補う(帰脾湯、加味帰脾湯)、山芋・ほうれん草・黒豆などを食事に
🌪 肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
特徴 |
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イライラして眠れない、胸や脇の張り、ストレスによる不眠 |
肝の気が滞って、情緒が不安定に |
🧾 対処法:肝の気を巡らせる(加味逍遙散、柴胡疎肝湯)、柑橘類・ミント・ジャスミン茶が◎
💧 痰熱内擾(たんねつないじょう)タイプ
特徴 |
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頭が重く、眠りにくい、イライラ、口が苦い、舌苔が厚い |
体内に「余分な湿と熱」がこもっているタイプ(暴飲暴食型) |
🧾 対処法:痰熱を取り除く(黄連解毒湯など)、脂っこい物・甘い物・アルコールを控える
3. 中医学による不眠へのアプローチ
🪡 鍼灸
不眠症に効果的なツボを刺激して、気血のバランスを整えます。
ツボ | 効果 |
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神門(しんもん) | 心を落ち着け、不安を和らげる |
三陰交(さんいんこう) | 血を補い、ホルモンバランスを整える |
百会(ひゃくえ) | 気の巡りを整え、頭の緊張を緩和 |
内関(ないかん) | 胸のつかえ・動悸を緩和 |
➡️ 施術後に眠くなる、寝つきが良くなる人が多く見られます。
🌿 漢方薬
不眠の「証」によって処方が異なります。
証タイプ | 処方例 |
---|---|
陰虚火旺 | 知柏地黄丸、酸棗仁湯 |
心脾両虚 | 帰脾湯、加味帰脾湯 |
肝鬱気滞 | 加味逍遙散、柴胡疎肝湯 |
痰熱内擾 | 黄連解毒湯、温胆湯 |
※ 専門家による証の判断が大切です。
🍽 食事・薬膳
不眠を改善するには、夜の食事もポイントです。
- 就寝3時間前には食事を終える
- 温かく消化のよいものを選ぶ(おかゆ、スープなど)
- 神を養う食材:なつめ、クコの実、はちみつ、黒豆、白きくらげ
➡️ 寝る前の甘い物、カフェイン、冷たい飲み物は避けましょう。
🧘 気功・呼吸法
- 寝る前のゆったりとした腹式呼吸は副交感神経を優位にし、入眠を促進
- 八段錦の一部(上半身をゆるめる動作)は不眠対策に有効
✅ まとめ:眠れないときは“体の声”に耳を傾けて
中医学では、不眠を単なる睡眠障害とは捉えません。
身体と心のバランスの乱れ、気血や陰陽の不調和のサインとして診ていきます。
「疲れているのに眠れない」「薬に頼りたくない」「原因がわからない」——そんなときこそ、中医学の知恵を頼ってください。
あなたの体質に合った自然な改善法で、心から休める夜を取り戻しましょう。
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