日本鍼灸大学 
はじめに：気功とは何か？
「気功（きこう）」とは、中医学の理論に基づいて、呼吸・動作・意識を調和させながら、体内の「気」を整える健康法です。
古代中国では、病気の予防・健康維持・心身のバランス調整を目的として広まり、現代でも中国の病院や医療機関でリハビリや代替医療として活用されています。
気功は、特別な道具が必要なく、場所や年齢を問わず誰でも始められるセルフケアとして注目されています。
1. 気功の3つの柱：調身・調息・調心
中医学における気功は、次の3要素を調和させることが基本です。
| 要素 | 説明 | 目的 |
|---|---|---|
| 調身（ちょうしん） | 姿勢・動作を整える | 気の流れを妨げない体づくり |
| 調息（ちょうそく） | 呼吸を整える | 内臓や神経系の調整 |
| 調心（ちょうしん） | 意識・心を整える | 精神安定・集中力向上 |
この3つをバランスよく行うことで、体と心の“気の巡り”を整え、健康の土台を築くことができます。
2. 気功の種類と特徴
気功にはいくつかの流派や種類がありますが、大きく2つに分類されます。
✅ 動功（どうこう）
- ゆったりとした動きを中心とする気功
- 呼吸とともに四肢や体幹を動かすことで、気の流れを促進
- 代表例：八段錦（はちだんきん）、五禽戯（ごきんぎ）
✅ 静功（せいこう）
- 瞑想や座禅に近い形の気功
- 呼吸法と意識集中により、内臓や神経の働きを調整
- 代表例：坐禅気功、立禅（りつぜん）
➡️ 初心者には「動功」から始めるのがおすすめです。身体を動かしながら自然と調心・調息もできるからです。
3. 気功の健康効果：なぜ体にいいのか？
気功の効果は、「気」の巡りを整えることで全身に影響を及ぼす点にあります。
✅ 期待できる主な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 自律神経の調整 | 呼吸・姿勢のリズムで交感神経と副交感神経のバランスが整う |
| 血流・代謝の改善 | ゆっくりした動作で血流が良くなり、冷えやコリの改善に |
| ストレス・不安の軽減 | 調心によってセロトニン分泌が促進され、気持ちが安定 |
| 免疫力の向上 | 気の流れが整うことで内臓機能が高まり、自然治癒力もUP |
| 睡眠の質の向上 | リラックス効果により不眠症状の改善が期待できる |
➡️ 特に、慢性疲労やストレス、軽度の不調に悩む方には非常に有効です。
4. 初心者におすすめの簡単な気功動作
▶ 八段錦（はちだんきん）：最も有名な入門気功
8つの簡単な動きで構成され、全身の気の流れを整えることを目的としています。
| 動作 | 効果 |
|---|---|
| 両手を天に突き上げる（第一式） | 胃腸の働きを活性化 |
| 弓を引くように腕を開く（第二式） | 肺の機能改善・肩こり緩和 |
| 手を左右に振る | 背中や腰の筋肉をほぐす |
1日5〜10分でも十分効果的。YouTubeや書籍でも紹介されています。
5. 気功を続けるためのコツと注意点
✅ 継続のコツ
- 「毎日5分だけ」と決めて習慣化
- 朝・寝る前・昼休みなど、日常に取り入れやすいタイミングで行う
- 無理に意識を集中しようとせず、“気持ちいい”を大切にする
⚠️ 注意点
- 高血圧・心臓疾患・妊娠中の方は医師に相談の上実施
- 痛みや不快感がある動きは中止
- 動作よりも「リラックス・呼吸・意識」に重きを置く
✅ まとめ：気功は“気を整える”中医学のセルフケア
気功は、薬も器具も必要ない、最も身近で安全な中医学の健康法です。
忙しい現代人にこそ必要な、「自分の内側に目を向け、静かに整える時間」。
鍼灸や漢方と組み合わせることで、より深く気血の流れを整えることもできます。
まずは、無理なく、1日5分から。呼吸と動きの力で、自分の体と心を整える習慣を始めてみましょう。
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