1. 難経とは何か?
『難経』は黄帝内経を補完し、気・血・脈・五臓・経絡の仕組みを整理した古典です。学生にとっては、治療の組み立て方を身につけるための“思考の教科書”。
臨床実習では、この理解があるかどうかで経穴選択の根拠や説明力が大きく変わります。難経は、理論と実技をつなぐ架け橋とも言える重要な存在です。
2. 難経の世界観 ― 気・脈・五行
2-1. 五行理論
五行は身体のバランスの推移を読む地図のようなもの。臓腑の働きを相生・相剋で理解することで、病の背景が立体的になります。
2-2. 脈診の視点
脈は気血の状態を端的に表す情報。難経の脈象分類は、学生が脈を“読める情報”として理解する助けになります。
2-3. 虚実の理解
虚実は治療方針の根幹。難経は、臓腑と経絡の関係から虚実を捉え、表面的な強弱だけに左右されない判断力を養います。
3. 六十九難 ― 補瀉の基本
3-1. 補瀉の本質
補瀉とは強弱ではなく、気の盛衰と方向性を調整する操作。深度・方向・呼吸など複合的な要素で成立します。
3-2. よくある誤解
「強刺激=瀉・弱刺激=補」では不十分。六十九難は本質的な補瀉の基準を示し、誤解を防ぎます。
4. 七十五難 ― 経絡の虚実・表裏の判断
4-1. 七十五難の要点
七十五難では、経絡の表裏関係、虚実の判断基準、どこから治療すべきかなど、治療の核心が語られます。
4-2. 臨床での使い方
症状と脈が一致しない場合の“優先順位づけ”の視点が七十五難の大きな価値です。迷いやすい実習場面で大きな支えになります。
4-3. 学生が学ぶポイント
表裏ペアの暗記、脈・症状・舌の総合評価、虚実の整理がカギとなります。
5. 難経を臨床につなげる方法
難経の理解が深まるほど、経穴選択の根拠が明確になり、治療方針を自分の言葉で説明できるようになります。気の方向性を踏まえた補瀉の判断もより精密になります。
6. 学習ロードマップ
6-1. 優先して読む章
六十九難・七十五難・脈診関連の難は最優先。
6-2. 効果的な学び方
「1日1難読む」「実技ノートに難経記述を貼る」など、日常に少しずつ組み込むと定着が早まります。
7. 難経が育てる“治療家の軸”
難経を読むことは、技術だけでなく治療家としての姿勢や判断の深さを養う学びでもあります。身体を多角的に観察し、より広い視野で治療に向き合う態度が自然と育ちます。
8. まとめ
六十九難と七十五難は、難経の中でもとくに臨床へ直結する章であり、治療判断の核心部分を担っています。これらを理解することで、経絡の流れや虚実・表裏の関係が整理され、治療方針を論理的に組み立てる力が身につきます。実技に追われがちな学生生活の中でも、難経を読むことで“なぜこの経穴なのか”“なぜこの補瀉なのか”という根拠が言語化できるようになります。特に七十五難は、症状と脈が矛盾して見える場面での判断基準を示してくれるため、臨床実習での迷いに強い味方となるでしょう。難経は一気に理解する必要はなく、少しずつ触れ続けることで確実に治療の眼が育っていきます。
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