はじめに:中医学における「津液」とは?
「津液(しんえき)」とは、中医学における身体を潤すあらゆる体液の総称です。
現代医学でいう「水分」「体液」とほぼ一致しますが、中医学ではその働きを2つに分類して捉えています:
分類 | 読み | 特徴 | 主な働き |
---|---|---|---|
津(しん) | 軽くてさらさら | 汗・唾液・涙など | 肌や粘膜の潤い、代謝補助 |
液(えき) | 濃厚で粘性がある | 関節液・脊髄液・分泌液など | 臓腑や骨髄の潤い、潤滑保護 |
津液は、血と共に体内を潤し、気と共に流れる重要な存在。
その生成と運搬には「脾」「肺」「腎」などの臓腑の協調が不可欠です。
💧 津液の主な役割
働き | 内容 |
---|---|
体表・粘膜を潤す | 肌のツヤ、目・口・鼻の乾燥予防 |
関節の動きをなめらかにする | 滑液の生成、関節痛の緩和 |
臓腑や組織の保護 | 内臓や筋肉・骨を乾燥から守る |
老廃物の排出補助 | 発汗・尿の調整を通じて体を整える |
✅ 特徴:潤す・冷やす・守るが津液のキーワード。
🔥 津液が不足するとどうなる?(津液虚・陰虚)
津液が不足すると、次のような乾燥・熱のような症状が現れやすくなります。
- のどの渇き・乾いた咳
- 皮膚や唇の乾燥、ひび割れ
- 便秘(乾燥便)
- 関節の痛み・ごりごり感
- 不眠・ほてり(特に午後〜夜)
- 舌が赤く、苔が少ない・ない
➡️ これらは「陰虚(いんきょ)」と関連することが多く、“内側の乾燥”のサインです。
🍐 津液を養う薬膳食材と調理ポイント
津液は、「飲食物からの水分」+「脾胃・肺・腎の機能」で作られます。
潤す・冷やす・穏やかに養う食材を選びましょう。
食材 | 特徴 | 帰経(作用する臓腑) |
---|---|---|
白きくらげ | 高い保湿作用、美肌にも◎ | 肺・胃 |
梨 | 潤い・熱冷まし・咳止め | 肺・胃 |
百合根 | 不眠・ほてり・乾燥に対応 | 心・肺 |
豆腐 | 清熱・滋潤、体に優しい | 肺・大腸 |
はちみつ | 肺・腸の潤いと便通に | 肺・脾・大腸 |
✅ 調理のコツ:蒸す・煮る・スープなど、水分を逃がさない調理が適しています。
✅ NG例:揚げ物・辛味・刺激物(津液を消耗させます)
🧘♀️ 津液を守る生活習慣
✅ やるべきこと
- 十分な睡眠(夜10時〜2時は腎の回復時間)
- 適度な加湿・保湿(特に秋冬)
- 深呼吸や腹式呼吸で肺の機能を高める
- 長時間の会話や声の出しすぎを避ける(肺の潤いを消耗)
✅ 避けるべきこと
- 辛いもの・カフェイン・アルコールのとりすぎ
- 夜更かし、慢性的なストレス
- 過度な発汗や運動
💡 津液を補うおすすめツボ
ツボ | 所在地 | 主な効果 |
---|---|---|
陰陵泉(いんりょうせん) | 膝下の内側、脛骨の内側のくぼみ | 津液を巡らせ、むくみ・乾燥対策 |
肺兪(はいゆ) | 背中、肩甲骨の内側 | 肺の潤い・咳や喉の渇きに |
太谿(たいけい) | 内くるぶしとアキレス腱の間 | 腎を潤し、全身の津液補充に |
🌿 お灸や温熱刺激が効果的です。
✅ まとめ|津液は“体のうるおいと冷静さ”を保つ要
津液は、中医学において「血」と並ぶ生命維持のための大切な“液体”の柱です。
その役割は単なる水分補給にとどまらず、体を潤し、守り、静めることにあります。
✅ 津液を守るために意識したいこと:
- 潤いを補う食事(薬膳)と調理法
- 過剰な刺激や乾燥を避ける
- 体の声に耳を傾けて、早めの対処
秋冬に多い「乾燥対策」や「陰虚ケア」のベースとしても、津液の理解は大変役立ちます。
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