「春になると、なんだか気分が落ち込む」
「やる気が出ない」「眠れない」「体が重い」
——こうした不調を訴える方は、実はとても多いのです。
春は、気候の急激な変化、環境の変化、ホルモンや自律神経の乱れが重なる季節。
東洋医学でも、“気の巡り”が乱れやすい時期とされています。
この記事では、春のゆらぎによるうつ症状を東洋医学的に解説し、
鍼灸師ができるケア、そして患者さんに伝えたいセルフケアをまとめます。
春とうつ症状が増える理由|現代医学と東洋医学の視点
◆ 現代医学的な要因
- 寒暖差・気圧変動による自律神経の乱れ
- 新生活・人間関係・社会的プレッシャー
- 花粉症・アレルギーによる体調不良
- 日照時間・睡眠リズムの変化
◆ 東洋医学での捉え方「春は肝の季節」
- 春は「肝(かん)」の働きが活発になる
- 肝は「気血の巡り・情緒のコントロール」に関与
- 肝気が鬱結(うっけつ)すると、イライラ・落ち込み・不眠・消化器不調などが起こる
☞ 春は「肝気鬱結(かんきうっけつ)」による“巡りの滞り”がうつ症状を引き起こしやすい季節なのです。
鍼灸師ができる春のうつケア|臨床で使えるポイント
◆ ① 「肝気の巡り」を整える施術
ツボ名 | 作用 | 対応症状 |
---|---|---|
太衝(たいしょう) | 気の巡りを良くし、イライラ・抑うつを緩和 | 情緒不安定・不眠・怒りっぽさ |
行間(こうかん) | 肝経の熱・鬱結をさばく | 頭痛・目の疲れ・PMS |
内関(ないかん) | 心身の緊張をほぐし、自律神経を調整 | 動悸・不安感・胃の不快感 |
➡ 肝経を中心に「気を巡らせ、こもった熱を抜く」アプローチを。
◆ ② 胃腸(脾胃)の調整も忘れずに
- 春は「肝木が脾土を剋する(肝脾不和)」状態になりやすい
- ストレス→胃腸不調→気血生成力の低下→うつ症状悪化
ツボ名 | 作用 |
---|---|
足三里 | 脾胃を補い、全身の気血を巡らせる |
中脘 | 胃の働きを助け、気持ち悪さや食欲低下に |
三陰交 | 気血を補い、冷えや下腹部の不調にも対応 |
◆ ③ 施術の雰囲気・声かけも「春仕様」に
- 明るすぎない・静かすぎない空間作り
- 「緩やかに巡らせる」「今はゆっくりでいい」というメッセージ
- 刺激の強さも控えめに、呼吸に合わせる手技を意識
☞ 施術者自身が“肝を伸びやかに使う”イメージを持つことが大切です。
春のうつに効くセルフケア|患者さんへの伝え方
✅ 1. 「巡らせる」日常習慣
- 朝起きたらカーテンを開けて伸びをする
- 10分だけの散歩やストレッチ
- 深呼吸(4秒吸って6秒吐く)
➡「止まっているものを、そっと動かす」イメージで。
✅ 2. 食べ物で“肝”をやさしくケア
おすすめ食材 | 効果 |
---|---|
柑橘類(ゆず・みかん・グレープフルーツ) | 気の巡りを促す |
しそ・春菊・セロリ | 肝気をさばき、巡りを整える |
甘酒・発酵食品 | 脾胃を養い、気血生成を助ける |
💡「冷たい・生の取りすぎ」に注意し、温かく調理することが基本。
✅ 3. 「スマホデトックス」のすすめ
- SNSや情報過多は、肝気鬱結を悪化させる
- 夜は1時間だけでもスマホを手放す時間をつくる
- 五感を使ったリラックス(アロマ・音楽・入浴)を取り入れる
➡「春は自分を整える季節」と伝え、“攻める”より“調える”セルフケアを勧めましょう。
まとめ|“春のゆらぎ”に寄り添う鍼灸師の役割
春は、新しい季節への期待と同時に、
心と体が「うまく馴染めずに揺らぐ」時期でもあります。
- 肝気の巡りを整え、情緒を安定させる
- 脾胃の働きを助け、体の内側から気血を満たす
- 呼吸や空間を通じて“安心”を届ける
鍼灸師だからこそできる、“手当て”としての春ケアがあります。
目の前の患者さんが、「春が少し好きになれるように」、
そっと整えるお手伝いをしていきましょう。
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