【はじめに】
思春期の若者にとって、学校・家庭・SNSなど、毎日は“刺激と選択”の連続です。
その中で、心のエネルギーをすり減らし、静かに「しんどい」を抱える子どもたちが増えています。
本記事は、これまでの連載(全4本)をもとに、
思春期うつと鍼灸ケアの全体像を5つの視点で総まとめします。
若手鍼灸師・鍼灸学生の皆さんが、
「10代の心と体にやさしく触れる技術と態度」を学ぶ一助となりますように。
① 思春期うつの“現れ方”を理解する
大人のうつとは異なり、10代では以下のような形で現れることが多いです:
表れ方 | 内容 |
---|---|
行動 | 不登校、部屋にこもる、スマホ依存 |
感情 | イライラ、無気力、涙もろさ |
身体 | 頭痛、腹痛、過眠、不眠、吐き気 |
☞「怒っている」「やる気がない」と見える態度の裏に、「助けて」のサインが隠れていることも。
➡ 詳細記事:思春期うつの特徴と親の接し方
② デジタル時代の「SNSうつ」と向き合う
現代の思春期うつには、SNS疲れ・情報過多の要因が深く絡んでいます。
- 比較による自己否定
- 常時接続による自律神経の乱れ
- 睡眠の質の低下と過緊張
東洋医学では「肝気鬱結」「心脾両虚」「瘀血」といったタイプで捉えることが多く、
“情報に疲れた体と心”を整える施術が求められます。
➡ 詳細記事:SNS疲れとうつ|鍼灸で心を整えるヒント
③ 鍼灸師ができること・してはいけないこと
◆ できること
- 副交感神経を優位にし、身体感覚を取り戻す
- “話さなくても伝わる安心感”を提供する
- 冷え・疲れ・不眠・月経など体の不調を整える
◆ してはいけないこと
- 精神疾患の「診断」や断定
- 攻めた刺激・指導的な態度・無理なカウンセリング
☞ 若者は言葉よりも空気や感情に敏感です
➡ 詳細記事:10代に寄り添う鍼灸の考え方
④ 現場で役立つツボとケアアイデア
状態 | ツボ | ケア法 |
---|---|---|
イライラ・緊張 | 神門・太衝・内関 | 触れるように押す/てい鍼/温灸 |
無気力・疲労 | 足三里・気海・三陰交 | 温める/お灸/手あてとしての接触 |
過眠・不眠 | 百会・心兪・肝兪 | 軽い接触鍼+呼吸誘導 |
PMS・月経痛 | 三陰交・血海・関元 | 血を補う/冷えを防ぐ施術を中心に |
🌀 「刺すこと」より「整える意識」を大切に。
➡ 詳細記事:10代のための鍼灸ケア入門
⑤ 鍼灸学生・若手へのメッセージ|“技術の前に、態度を学ぶ”
10代への鍼灸は、技術や知識以上に「どんな気持ちで接するか」が問われます。
- 治そうとせず、まず“居てもいい場所”をつくる
- 無理に話を聞こうとせず、静かに呼吸を合わせる
- 1回の施術より、「また来てもいい」と思える関係づくり
これこそが、鍼灸師の本質であり、未来の“メンタルケア専門職”としての基礎になります。
【まとめ】思春期に“そっと触れる”鍼灸を
10代の心のケアは、決して派手ではありません。
ですが、静かに温め、そっと気を巡らせる鍼灸には、言葉を超えて届く力があります。
- 頭を触れたときの、あの“ふっと力が抜ける感覚”
- 温灸を受けたあと、「ちょっと軽くなったかも」という一言
- 「また来てもいいですか?」というまなざし
——これらはすべて、未来への回復のサインです。
鍼灸師として、目の前の若者の心と体を見つめ、
焦らず、判断せず、その存在まるごとを受けとめる。
そんな技術と態度を、あなたの中に静かに育てていってください。
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