鍼灸師のための解剖学入門②:頸椎・胸椎の触診ポイントと関連ツボ

はじめに:頸椎・胸椎はツボの“縦軸”

鍼灸師にとって背骨は、取穴の「縦のものさし」として欠かせない存在です。とりわけ頸椎から胸椎にかけては、督脈や膀胱経の多くの経穴が並び、臨床で頻繁に使われます。しかし、学生の段階では「どの突起がC7なのか?」「T1との区別がつかない」といった混乱がよく見られます。触診力が不十分なままではツボの位置がぶれ、刺鍼の安全性や効果も低下しかねません。逆に、骨学的ランドマークを正しく押さえていれば、確実な取穴と患者への説得力ある説明につながります。本記事では、頸椎・胸椎の特徴と触診の手順、代表的なツボとの関係を整理し、解剖学を実技に活かすための基盤を解説します。


頸椎の特徴と触診ポイント

  • C1(環椎)・C2(軸椎)
    • 外後頭隆起のすぐ下に位置。天柱(BL10)や風池(GB20)の基準。
  • C3〜C6
    • 小さい棘突起で触診が難しいが、胸鎖乳突筋の外側から圧すと見つけやすい。
  • C7(隆椎)
    • 頸を前屈させると最も突出する棘突起。大椎(GV14)の基準点。
  • C7とT1の区別
    • C7:頸を回旋させると動く
    • T1:頸を回旋しても動かない

👉 実技試験では「C7とT1を区別できるか」が定番問題です。


胸椎の特徴と触診ポイント

  • T1〜T3
    • 棘突起が水平に近い。大椎(GV14)・陶道(GV13)の基準。
  • T4〜T6
    • 棘突起がやや下方に傾く。身柱(GV12)、神道(GV11)などの目印。
  • T7〜T9
    • 棘突起が斜め下方に突出。至陽(GV9)、筋縮(BL52)の基準。
  • T10〜T12
    • 棘突起が再び水平に近づく。中枢臓腑との関連が強い。

頸椎・胸椎とツボの関係

  • 大椎(GV14):C7棘突起下の陥凹
  • 陶道(GV13):T1棘突起下
  • 身柱(GV12):T3棘突起下
  • 至陽(GV9):T7棘突起下
  • 神道(GV11):T5棘突起下
  • 風池(GB20)・天柱(BL10):後頭骨とC2の関係で決定

👉 それぞれのツボは骨の突起を“触って確認する”ことが正確性の鍵になります。


学び方のステップ

  1. ランドマーク確認:C7を見つけ、そこから上下に数える習慣をつける。
  2. ペンマーキング:背部に水性ペンでC7〜T7をマーキング → ツボをプロット。
  3. 反復練習:毎回「ここがC7、大椎、次がT1、陶道」と口に出す。
  4. 臨床応用:患者の症状(咳=肺、胃の不調=胃兪など)と胸椎レベルを結びつけて覚える。

臨床での活用例

  • 呼吸器疾患(咳・喘息)
    • 大椎(GV14)、陶道(GV13)付近を重点的に取穴。
  • 消化器不調(胃のもたれ)
    • T6〜T9レベル → 胃兪(BL21)、至陽(GV9)と関連。
  • 自律神経調整
    • 上胸椎(T1〜T4)への刺鍼で交感神経系のバランス調整。

まとめ

頸椎・胸椎は督脈・膀胱経を中心に数多くのツボの基準点になります。特にC7(大椎)を正しく見極め、そこから上下に追うことが精度向上の第一歩です。臨床では「骨=ツボ=症状」の三位一体で学び、触診と実技を結びつけて習熟していきましょう。

👉鍼灸学校で解剖学と生理学を学ぶ重要性:鍼灸師としての基礎を築く知識とは?
👉鍼灸師の先輩が実践!経穴を楽しく覚える8つの効果的な学習法
👉鍼灸師のための生理学総論─恒常性維持と鍼刺激の生理学的理解

関連:鍼灸の基礎知識:日本鍼灸の進化と現代医療における役割

開業鍼灸師のためのお役立ちメディア「カルテラス」へのリンク
鍼灸関連学会・セミナー・イベント
鍼灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師を目指す全国養成校 大学・専門学校一覧のバナーリンク

この記事を書いた人

アバター

日本鍼灸大学

日本鍼灸大学は「世間と鍼灸を学問する」をコンセプトに有志の鍼灸師とセイリン株式会社が立ち上げたWebとYouTubeチャンネルです。普段、世間話と鍼灸学のお話しを井戸端会議的に気軽に楽しめる内容に仕立て日本鍼灸の奥深さを鍼灸学生に向けて提供します。
※当サイトは学校教育法に則った大学施設ではありません。文部科学省の指導の元、名称を使用しています。

2023年より鍼灸柔整キャリアラボを試験的にスタート!鍼灸柔整キャリアラボは『詳細はこちら』ボタンからアクセス。