東洋医学技術教育振興財団の歴史と実績 ― 創設から現代まで、東洋医学教育を支えてきた歩み

はじめに

現代における東洋医学(鍼灸・漢方・手技療法など)の教育と普及には、制度的な裏付けと、教育の継続性を支える組織の存在が欠かせません。
その中でも、東洋医学技術教育振興財団は、日本の伝統医療の教育・研修体制を支える重要な柱の一つです。本記事では、財団の“いつ・誰が・なぜ”設立したか、これまでどのような歩みを経て現在に至るか、そしてどのような人々がこの財団を通じて成長してきたかを整理します。東洋医学を学ぶ学生や鍼灸師志望の方、また業界で活動する人にも役立つ内容です。


1. 財団の設立と背景

  • 財団は 1980年 に、東洋医学研究の第一線で活躍した芹澤勝助を中心に設立されました。
    (※芹澤氏は1983年に財団理事長を務めています)
  • 設立の背景には、東洋医学の教育を体系化し、後進の育成を支援する環境作りがあります。

芹澤氏は長年にわたり鍼灸・手技療法・東洋医学研究の発展に尽力した人物であり、1985年には紫綬褒章を受章するなど、その功績は広く知られています。

この意味で、財団は日本における“東洋医学教育の近代化・制度化”を目指した草分け的存在だったといえます。


2. 教育・研修の中心:東洋医学技術研修センター

財団には、設立当初から 東洋医学技術研修センター が併設されており、以下のような研修・教育が実施されています。

  • 東洋医学の基礎理論を学ぶ講義
  • 鍼灸および関連技術の実技研修
  • 臨床に必要な知識・技能を身につける体系的なカリキュラム

実際に、研修センター修了後に医療機関や大学で教育・臨床に携わる専門家も輩出されており、キャリア形成の基盤として機能してきました。

3.主な沿革と出来事の年表(代表例)

出来事
1980年東洋医学技術教育振興財団および同「東洋医学技術研修センター」を設立。
1983年芹澤勝助氏が理事長に就任。
1980年代〜1990年代財団研修センターによる研修・実技教育を通じ、多くの鍼灸師・東洋医学関係者が学ぶ。たとえば、のちに大学教員となった研究者の修了。
2000年代以降東洋医学・統合医療の関心の高まりの中で、東洋医学/鍼灸の社会的な存在意義が再認識される。統合医療の議論の中で、東洋医学の体系的教育の必要性も改めて見直される。
現在財団および研修センターの修了者が、大学、医療機関、研究機関、臨床現場などで活躍。東洋医学教育・臨床の一翼を担う。代表例の一人として、 山口智(埼玉医科大学 准教授)があげられる。

※この表は「公開情報に基づく主要なできごと」をもとにまとめたもので、すべてのイベントを網羅するものではありません。


4. 財団が果たしてきた役割

財団は、東洋医学の教育・技術伝承において以下のような役割を担ってきました。

■ 体系的な学びの場の提供

伝統医療を段階的に学べる環境を整えることで、学生や実務者が確かな知識と技能を身につけられる場所を提供。

■ 東洋医学の専門性を高める人材育成

研修を経た人材が大学・医療機関・研究分野で活躍し、東洋医学の発展に貢献。

■ 東洋医学の社会的価値の向上

医療の選択肢として東洋医学が注目される中、その専門性を支える教育基盤として、長く重要な役割を果たしてきました。


5. 東洋医学を学ぶ方にとってのメリット

財団に関連する教育・研修には、次のような魅力があります。

  • 基礎から応用まで体系的に学べる安心感
  • 実技と理論がバランスよく身につく教育環境
  • 歴史ある研修センターで学んだという信頼性
  • 修了後のキャリア形成にも役立つ学習内容

東洋医学を志す学生にとっては、長年にわたり教育の土台として機能してきた財団の存在は大きな安心材料と言えるでしょう。

なぜ今、財団の存在が重要か — 東洋医学の未来と教育基盤

近年、医療界・社会において「統合医療」「代替医療」「予防医療」「東洋医学の再評価」が注目されています。慢性疾患の治療、生活の質の向上、高齢化などの課題がある中で、東洋医学が持つ“身体全体をみる”“自然や生活習慣をふまえた治療”というアプローチは、改めて価値を持っています。

そのような時代だからこそ、体系的な教育・研修を行ってきた財団のような基盤があることは、「東洋医学を志す人」「鍼灸師」「医療者」「研究者」にとって大きな強みです。そして、それは東洋医学の未来と可能性を支える土台になるでしょう。


6. まとめ

東洋医学技術教育振興財団は、1980年の設立から今日まで、東洋医学の教育を支える重要な組織として発展してきました。

  • 創設者:芹澤勝助氏
  • 基礎から実践までを学べる研修センター
  • 修了者が教育・臨床で活躍
  • 東洋医学教育の発展に貢献し続けている

東洋医学の学習を志すすべての人にとって、信頼できる学びの基盤として今後も重要な存在であることは間違いありません。

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