はじめに:知らずに「税抜価格」だけ載せていませんか?
「施術料:3,000円(税抜)」
「初回体験 2,980円+税」
このような表記、実は2021年4月以降、消費税法の総額表示義務に反する可能性があります。
鍼灸院は医療広告ガイドラインの対象でもあるため、価格表記の方法を誤ると複数の法令違反になる恐れがあります。
本記事では、鍼灸院が守るべき総額表示義務の基本ルールと、院掲示・HP・SNSごとの正しい価格表記例/NG例をまとめて解説します。
要点まとめ
- 総額表示義務=税込価格をわかりやすく表示する義務(消費税法第63条)
- 院掲示・HP・SNSなど「価格を表示する全媒体」が対象
- 税抜価格のみの表示や「+税」は原則NG
- 医療広告ガイドライン上も「料金の明確表示」が必須
- 正しい例文・NG例を院内で統一すべき
1. 総額表示義務とは?
総額表示義務は、消費者が支払う総額(税込)を表示することを義務付けた制度です。
2021年4月の消費税法改正で、全事業者(小規模事業者含む)が対象となりました。
✅ 対象となる「価格表示」の範囲
媒体 | 対象になるか | 例 |
---|---|---|
院内ポスター・メニュー表 | ○ | 施術料金表 |
院HP・SNS | ○ | キャンペーン料金の投稿 |
チラシ・看板 | ○ | 店頭の価格表示 |
領収書・請求書 | × | 法令上の価格表示義務の対象外(別規定あり) |
2. NG表記とOK表記の具体例
❌ NG例(税抜のみ・誤解の恐れあり)
- 「施術料 3,000円(税抜)」
- 「初回限定 2,980円+税」
- 「通常 5,000円→今だけ4,500円(税別)」
✅ OK例(総額表示)
- 「施術料 3,300円(税込)」
- 「初回限定 3,278円(税込)」
- 「通常 5,500円 → 今だけ 4,950円(税込)」
💡 割引表示も必ず税込価格で記載し、値引き前後の両方を明確にします。
3. 医療広告ガイドラインとの関係
鍼灸院は「あはき師等に関する医療広告ガイドライン」の適用対象です。
ガイドラインでは、料金表示について次のように求めています。
- 明確かつ誤認のない料金表示
- すべての料金(追加料金含む)を明示
- 割引・無料などの表示は条件を併記
例えば、
「初回無料」とだけ書くのはNG → 「初回カウンセリング無料(施術料は別途3,300円(税込))」と記載する必要があります。
4. 媒体別の表記ルールと注意点
媒体 | 注意点 |
---|---|
院掲示(料金表) | 全メニューを税込で表示。セット料金・時間単位料金も明確に |
HP | キャンペーン価格も税込表示。古いページの税抜表記を放置しない |
SNS(Instagram・LINE) | 画像・動画内の価格も税込表示にする |
チラシ・看板 | 印刷後の訂正が難しいため、必ず税込表記で作成 |
5. 院内統一のためのチェックリスト
チェック項目 | OK/NG | 備考 |
---|---|---|
すべての料金表示が税込か | □ OK □ NG | 一部税抜表記が残っていないか確認 |
割引やキャンペーンも税込表示しているか | □ OK □ NG | 値引き前後の価格を併記 |
HP・SNSの過去投稿の価格を修正したか | □ OK □ NG | 放置は誤認表示のリスク |
院内掲示・印刷物の表記を統一しているか | □ OK □ NG | スタッフ説明との齟齬防止 |
医療広告ガイドラインの料金表示要件を満たしているか | □ OK □ NG | 追加料金・条件を明示 |
よくある質問(FAQ)
Q:税抜価格も一緒に載せたい場合は?
A:可能ですが、税込価格を主に表示し、税抜価格は補足的に()内に記載します。
例:「施術料 3,300円(税込、税抜3,000円)」
Q:保険診療は総額表示義務の対象ですか?
A:保険診療は法定自己負担額が明確なため、表示義務の適用外。ただし自費併用分は対象です。
Q:SNSのストーリーズ投稿にも適用されますか?
A:はい。画像や動画に価格が表示される場合は対象となります。
まとめ:価格表示は「法律+広告ルール」の両面で確認を
総額表示義務は、単なる消費税のルールではなく、鍼灸院の広告・経営の信頼性にも直結します。
特にHP・SNS・院掲示など、患者が価格を知る機会は多岐にわたるため、表示の統一と法令準拠が重要です。
まずは以下から始めましょう:
- 院内のすべての媒体の価格表記を税込に統一
- キャンペーンや割引の価格も税込表示に修正
- 医療広告ガイドラインに沿った条件明示を徹底
「正確な価格表示=安心して来院できる院」というブランド価値を高める第一歩になります。
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