梅雨の体調不良を防ぐ中医学の知恵|湿邪によるだるさ・むくみ・胃腸不調への対処法とおすすめ食材

はじめに|梅雨の不調は「湿邪」が引き起こす

梅雨になると、「なんとなく体が重い」「頭がぼんやりする」「食欲が落ちる」といった不調を訴える人が増えてきます。中医学では、この季節の体調不良の主な原因を「湿邪(しつじゃ)」と捉えます。

湿邪は重く粘っこく、体内に停滞しやすいため、気や血の巡りを阻害し、脾胃の働きを弱めるのが特徴です。本記事では、湿邪の基本的な性質と、梅雨を快適に乗り切るための薬膳・生活習慣・養生のポイントをわかりやすく解説します。


湿邪とは?—中医学での「梅雨時の外的要因」

「湿邪」は、六淫(りくいん)と呼ばれる外邪の一つで、環境の湿気が体内に影響を与えることで生じます。特に梅雨時期は、湿度が高くなることで、体内の余分な水分が排出されにくくなり、不調が出やすくなります。

主な影響

  • 脾胃の機能低下(=食欲不振・下痢・胃もたれ)
  • 気血の停滞(=だるさ・重さ・集中力低下)
  • 水分代謝の乱れ(=むくみ・関節痛・湿疹)

梅雨に起こりやすい症状とタイプ別傾向

主な症状中医学的な原因
体が重だるい湿邪による気の滞り(気滞)
食欲不振・下痢脾胃の機能低下(脾虚+湿)
むくみ・足のだるさ水分の停滞(湿滞)
関節の重さや痛み湿邪が経絡に停滞
頭が重い・集中力が続かない湿邪が上に昇る

湿邪を排出するための薬膳食材と食事の工夫

▶️ 脾を補い、湿を除く「健脾利湿」の食材がおすすめ

食材効果活用例
はと麦利水・美肌・むくみ改善お粥・スープに
冬瓜利尿・清熱・浮腫対策スープ・煮物
山薬(山芋)補気健脾・消化力向上すりおろし・炒め物
緑豆解毒・清熱・湿排出緑豆粥・スープ
大豆・黒豆利湿・補腎・補気煮物・味噌汁に
陳皮気の巡りを促すお茶・料理の香りづけに
生姜・シナモン胃を温め、湿を飛ばす味噌汁・温茶に加える

✅ 簡単レシピ:はと麦と冬瓜のスープ

材料: はと麦30g、冬瓜100g、生姜少々、だしまたは鶏ガラベース
作り方: 材料をすべて鍋に入れ、15〜20分煮るだけ。味付けは薄味でOK。

→ むくみ・重だるさが気になるときにおすすめ。冷やしすぎず温かく食べるのがポイント。


避けたい食習慣と生活習慣(湿邪を悪化させる要因)

NG項目なぜ避けるべきか
冷たい飲み物・アイス脾胃の陽気を損ない、湿を停滞させる
生野菜・果物の食べすぎ胃腸を冷やし、水分代謝が悪化
揚げ物・脂っこいもの湿を生む原因になる
夜更かし・過労気を消耗し、湿を排出できなくなる
湿気の多い室内環境外湿が内湿に変化しやすい

梅雨の養生ポイント|湿邪を溜めない暮らしの工夫

✅ 白湯+生姜で「脾の陽気」を守る

朝一杯の白湯に、少量のすりおろし生姜を加えると、胃腸が温まり代謝もアップします。

✅ ゆるやかな運動で気を巡らせる

梅雨時は陽気が不足しがち。散歩やストレッチ、気功などで汗を軽くかき、湿を発散しましょう。

✅ 入浴で温め、排湿を促す

シャワーで済まさず、ぬるめのお風呂(38〜40℃)に10〜15分浸かることで、巡りを改善し、湿を追い出します。

✅ 梅雨におすすめの薬膳茶

「陳皮+はと麦+生姜茶」:胃腸の働きを整えながら、湿を取り除くブレンドです。


まとめ|湿邪から身を守るには「脾を養い、湿を動かす」ことがカギ

梅雨は、体に湿が溜まりやすく、不調を引き起こしやすい季節です。中医学では、「健脾利湿(けんぴりしつ)」という考え方を中心に、食事・生活・セルフケアを通じて、体内のバランスを整えていくことが大切です。

薬膳や日常のちょっとした習慣で湿を溜め込まない工夫を取り入れ、梅雨のだるさや不調を未然に防ぎましょう。


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