はじめに:経絡とは「気の流れる道」
中医学では、気(エネルギー)や血が体内を流れるルートのことを「経絡(けいらく)」と呼びます。
この経絡がスムーズに流れている状態が健康であり、滞りや不足があると不調や病気の原因になるとされています。
経絡は全身を網の目のように巡り、各臓腑や四肢、感覚器とつながっています。本記事では、経絡の構造・種類・ツボとの関係、そして実際の治療法への応用をわかりやすく解説します。
1. 経絡の役割とは?
経絡には以下のような重要な機能があります。
役割 | 内容 |
---|---|
気血の運搬 | 気・血・津液を体中に届ける |
臓腑の連絡 | 五臓六腑を相互に結び、調整する |
身体の防衛 | 外邪(風・寒・湿など)の侵入を防ぐ |
診断・治療の手がかり | 経絡上の反応点(ツボ)から病状を把握し、治療に活かす |
➡️ 経絡は、**身体の中と外、上と下、左右をつなぐ「気の通り道」**とも言えます。
2. 経絡の種類と構成:12経脈と奇経八脈
🔷 正経十二経脈(せいけいじゅうにけいみゃく)
12本の基本経絡で、それぞれに対応する臓腑があります。
6本は手に(手の経)、6本は足に(足の経)分かれます。
系統 | 経絡名 | 対応臓腑 |
---|---|---|
手の太陰経 | 手太陰肺経 | 肺 |
手の陽明経 | 手陽明大腸経 | 大腸 |
足の陽明経 | 足陽明胃経 | 胃 |
足の太陰経 | 足太陰脾経 | 脾 |
手の少陰経 | 手少陰心経 | 心 |
手の太陽経 | 手太陽小腸経 | 小腸 |
足の太陽経 | 足太陽膀胱経 | 膀胱 |
足の少陰経 | 足少陰腎経 | 腎 |
手の厥陰経 | 手厥陰心包経 | 心包 |
手の少陽経 | 手少陽三焦経 | 三焦 |
足の少陽経 | 足少陽胆経 | 胆 |
足の厥陰経 | 足厥陰肝経 | 肝 |
➡️ これらは、ツボ(経穴)がもっとも多く使われる経絡です。
🔷 奇経八脈(きけいはちみゃく)
補助的な役割を持つ8本の経絡で、エネルギーの調整や、左右のバランスを整える働きがあります。
- 督脈(とくみゃく):背中を通り「陽の海」
- 任脈(にんみゃく):正中線を通る「陰の海」
- 衝脈、帯脈、陰陽蹻脈、陰陽維脈 など
3. 経穴(ツボ)と経絡の関係
経穴(けいけつ)は、経絡上に存在する反応点・調整点です。
中医学では、ツボに刺激を加えることで経絡を通じて気血の流れを整えるとされています。
ツボ名 | 経絡 | 主な効果 |
---|---|---|
合谷(ごうこく) | 手陽明大腸経 | 頭痛・便秘・万能ツボ |
足三里(あしさんり) | 足陽明胃経 | 胃腸の調整・疲労回復 |
太衝(たいしょう) | 足厥陰肝経 | 自律神経の安定・イライラ改善 |
太渓(たいけい) | 足少陰腎経 | 冷え・むくみ・腎機能改善 |
➡️ ツボの位置は解剖学的部位よりも「気の反応が出る場所」と考えるのが中医学の視点です。
4. 経絡を活かした治療法
🪡 鍼灸
鍼や灸を用いて経穴を刺激し、経絡の気の流れを整えます。
- 肩こり:肩井(けんせい)・肩中兪(けんちゅうゆ)など
- 胃もたれ:中脘(ちゅうかん)・足三里(あしさんり)など
- 不眠:神門(しんもん)・内関(ないかん)など
🤲 推拿(すいな)・按摩
経絡とツボに沿った手技療法。指圧や摩擦で経絡の滞りを解消し、リラックス効果を高めます。
🧘 気功・体操
呼吸や動作を通じて経絡を刺激。滞った気を流し、自律神経や免疫のバランスを整える効果が期待されます。
5. 経絡の状態を観察する方法
中医学では、経絡の状態を「切診(脈診・腹診)」や「望診(顔色・舌の色)」を通じて観察します。
また、ツボを押して「痛い」「冷たい」「気持ちいい」と感じる場所が、経絡の乱れのサインであることも。
➡️ 身体のサインに気づくことが、セルフケアや未病予防の第一歩となります。
✅ まとめ:経絡を知ることは“気の流れ”を知ること
経絡は、中医学における気と血の流れるルートであり、健康の基本です。
現代人の多くは、ストレス・不規則な生活・運動不足などにより、この流れが滞りやすくなっています。
鍼灸・推拿・気功・薬膳など、経絡を意識したケアを取り入れることで、
内側から健康を取り戻すきっかけになるでしょう。
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